リヴァイアサン1
なんだかんだで海で散々はしゃいだリア達一行は、早めに切り上げてシャワーを浴びショッピングモールに来ていた。大型のショッピングモールは観光施設等が完備されており、人で賑わっていた。
リア達はお昼ご飯を食べる為と、母ノルンへのお土産や遊戯部への差し入れなどを買う為に訪れていた。
何を食べようか、そんな会話をしながらちょうど通路のフロント下を通り抜けようとした時だった。
ふと、上を見上げる。
本当に何気なく見上げたその場所で、黒い服にフードを被った何者かが怪しく動いた。そして上フロントの柵に背を預け携帯端末を弄っていた女性に近づいて……足を引っ掛け体勢を崩し、投げ落とした。リアは驚くと同時に魔力を放つ。
「《結界魔法》」
結界を構築し、落ちてきた人を包み込むと落下の衝撃を殺す。落ちてきた人は驚きと恐怖で固まり、キョロキョロと辺りを見回していた。彼女は『事件性のある何か』とは無関係な一般人のようだ。リアはもしかしたらテロの手先の可能性を考慮し、ルナとクロエに落ちてきた人の対応を任せる。
「ちょっと行ってくる」
短くやり取りを終えると、《身体強化》で脚力を上げて2階まで飛ぶ。女性を落とした男は、助かった事に舌打ちをして走り去ろうとするが、思いっきりずっこけた。リアが爪先に小さな結界を作っていたからだ。それから手足に結界を貼り付けて拘束すると、フードをめくり顔を覗き込んだ。
歳若い男だ。高校生くらいと言われれば納得できそうな風貌をしており、まだ未成年なのが見て分かる。
そんな青年の顔には、異常な物がへばりついていた。いや、へばりついていたという表現には語弊があるかもしれない。彼の顔には、どこか蛇と魚の中間にあるような『鱗』が頬を覆うように生え揃っていたのだ。更に、瞳は蛇のような縦長の瞳孔をしている。
人間以外の『ナニカ』が混ざっている。ここ数日の神話的事象のおかげか、即座に判断する事ができた。
一方で、青年は苦悶の表情を浮かべてリアを睨む。
「放せ……!! さもないと、お前にリヴァイアサンの呪いを。って、その眼は……俺達と同じ……?」
リアの縦長の瞳孔に驚いたのか、青年はポカンとした顔をする。どうやら、いい感じに勘違いしてくれたようだと思ったリアは、情報を引き出す事にした。まずは拘束を解き、軽く謝ると唇を湿らせる。
「あぁ、すまん仲間だ。それで、なんで突然女性を突き落としたんだ?」
「変な事を聞くな? まぁいい、俺なりに『リヴァイアサン』への信仰心を捧げる為だ。それに、お前も知っているだろ? 騒ぎを起こして、逃げ惑う客を仕掛けた爆弾で『生贄』にする計画を。俺が騒ぎを起こす役目だったんだよ」
青年はヌフフと悪どい笑みを浮かべる。
リアは爆破の話を聞いて内心でマジ? つまりコイツがテロリストの仲間って訳か、と戦慄しながらも思考を加速させて回す。生贄……生贄かと思い口の中で空気を転がした。こういう場面において、生贄と言われれば何かしらの復活を示唆する可能性が高い、というかそれしか思い当たらない。それに、彼の口から出た『リヴァイアサン』という単語。推察するに、このリヴァイアサンが目的なのだと分かる。リアは言葉を選んで、更に男から情報を引き出す。
「あぁ、リヴァイアサンの復活の為の生贄だったか?」
「リヴァイアサン様だぞ。まぁ、新参者なら仕方ないか」
「そう、リヴァイアサン様。して、復活させてどうするんだ?」
「どうするって、決まっているだろ? 海の神リヴァイアサン様の眷属になり力を得る事が、我々『深海教会』の夢だって、夢が叶えば望みが一つ叶うって話もした筈だぜ? 入信の際に説明受けたよな?」
青年の説明から、なるほどバックに『深海教会』とやらがいるのかと記憶する。この情報は、後で調べるのに役立ちそうだ。しかし、そうして質問してしまった事を怪訝に思ったのか、青年の顔には汗が伝った。
「お前……本当に我々の仲間か?」
「違うけど」
「えっ……?」
再び結界で拘束すると、男は暴れ抜け出そうともがく。
「お前、邪魔をする魔道機動隊か!?」
「違うけど」
「じゃあなんなんだよお前!!」
若干キレ気味の青年に短く「観光客だよ」と返すと、通報するかと携帯端末を取り出した。それを見て、青年は焦ったように言葉を紡ぐ。
「まぁ、待て。今ここに魔道機動隊を呼べば、仲間がショッピングモールを爆破する。それに、俺が待ち合わせエリアに来なければ仲間が判断し爆破してお終いだ」
「お前、結構簡単に見捨てられんだな……」
「下っ端だからな!!」
「……下っ端も大変だな。なぁ、爆弾の場所を教えてくれれば、お前を助けてやるが」
「無理だな、顔を見れば分かるだろう。俺はリヴァイアサンに忠誠を誓っている。『祝福』を受けている。裏切りは死だ」
「結構シビアだな、おい」
その鱗や目が祝福という奴なのだろうか。リアからすれば『呪い』のように思えてしまうが……信仰や宗教組織のこういった呪術等は複数に渡るので、これもその一種と思うしかない。
達観したような顔つきで言う青年の言葉に、しかし内心で一理あると思ったリアはルナへと電話を繋げる。
『はい、お姉様?』
「ルナ、テロだ。ショッピングモール内に爆弾が仕掛けられている」
『まじですか。魔道機動隊に通報は?』
「バレたら即座に爆破らしくてな。だが、俺は通報すべきだと思っているんだが」
魔道機動隊はチャチな組織ではない。言えば変装した隊員を派遣して、爆弾の捜索や市民の自然な誘導による避難を行ってくれるだろう。しかし、そう思う反面、相手の組織力や能力が分からない。この青年を拘束している事実は既にバレている事を考えると、電話している今も危険かもしれない。
『少々お待ちを』
ルナは眉間を揉むと考える。ルナもどのみち、魔道機動隊に通報はした方がいいと判断はしている。
2人して「うーん」と悩んでいると、リアは前方から魔力の反応を感じた。拘束している現場は物珍しそうに見て通り過ぎていく人がかず多くいたが、明確に意思を持ってこちらに向かってくるのは……青年の仲間だろうか。
「《結界の薄外套》」
臨戦体制で準備を整えると、気配が一瞬消えた。しまった、《縮地》のような移動手段を相手は持っていたのかと魔力を巡らせたその時。
霞に乗ってふわりと降り立つように、複雑な模様の描かれた仮面をつけた人物が肉薄していた。
画面の向こう側、目と目が合う。突如現れた人物の眼は、瞳孔が縦に長く虹彩が氷のような模様を描いていた。リアは拳を構えて鳩尾に一撃入れようと拳を振り抜いた。だが、空を切り瞬間、視界が黒く染まる。
「なん……ごぼっ」
瞬きをした瞬間、水の中にいた。
口から空気が漏れる。もがきながら頭上に手を伸ばす……しかし、すぐに気がついた。呼吸はでき苦しくはない。冷たくも無く、水の中にいるように感じるだけだ。リアは経験から、幻覚や白昼夢のようなものを見せられていると判断した。魔力の反応からも《門》を使った感じはしなかった。
しかし、抜け出す術が分からず、水中に身を任せる。上を見上げると、陽の光は届いていない。相当に深い筈なのに、仄暗くはあるものの視界は良好だ。
ここは海なのだろうか。鼻を抜ける潮の匂いを感じながら、海底に目を凝らす。身体は徐々に沈んでいき、やがて海底の全容が見えた。リアは感じる魔力から驚いた。そこにあるのは『結界』だ。
大量の青白く光る鎖がとぐろを巻き、魚のように無数の札が周囲を舞う。その中央、半透明の膜のようなモノの中で、鎖に縛られた巨大な存在が見えた。大きな柱が何本も杭のように突き刺さり『ソレ』を押さえつけている。厳かで、しかし力強い魔力の奔流を感じた。影の形から、巨大な蛇のようで、しかしドラゴンの甲殻のような殻と鱗を纏っているのが分かる。同時に背鰭や膜のような部位も見受けられ、魚の一種のようにも見えなくもない。
しかし、大きさが凄まじい。前方に見える手足だけで10メートル以上はあり、少しでも近づけば簡単に押しつぶされそうだ。全長は……長すぎて見えない。暗闇の中に下半身を沈ませていた。
影はのそりと唯一、杭の無い目玉を動かした。あまりの大きさに、自分がちっぽけに感じるレベルだと唖然としているリアとは対照的に、影の主人は物珍しそうな視線を向けてくる。しかし、その中に確実な敵意と殺気が感じ取れた。金剛石のような鋭利さを感じさせる牙を動かして、何か話すように口を開くが杭が邪魔をする。
リアと影の視線がぶつかる。リアの中に、純粋な恐怖が溢れた。キルエルと戦った時にも少しだけ感じた感覚。未知なる『強者』へ対する怖気。それを感じたリアは……口元を歪ませる。何か分からんが刺身にしてやるぞ魚ァと。
と、その時。「……様」「……姉」と聞きなれた声が聞こえた。リアは未知なる敵対者、おそらく今回巻き込まれるであろう強敵との戦いを想定しながら……声と共に意識が浮上していく。
水中にいた感覚から空気が戻ってくる。引き上げられた意識からカヒュと口から空気が漏れ、高鳴る心臓が煩い。
恐らく、あれがリヴァイアサン。
……しかし見せた意図が分からんなぁと思うリアだった。アレに勝てるかどうかは分からないが、『その程度の恐怖』で屈するほど柔な魔法使いではないと自負している。
目を開くと、ルナとクロエが心配そうにリアを覗き込んでいた。
「大丈夫ですか?」
「リア姉、立ち尽くしてた。なにかされたの?」
前方を見ると、鱗の生えた青年も突如現れた人物も居なくなっていた。リアはひとつ息を吐くとルナとクロエの頭を撫でる。
「心配かけたなぁ、ルナもクロエもありがとう。ルナ、通報はしたか?」
「はい、して……申し訳ありません。私達が戻った時にはもう誰も」
「リア姉が拘束してた人、消えるようにどっか行った。捕まえられなかった……」
「いい、無事なら……」
無事ならと思ったが、ここでこれは不味いのではと意識を切り替えた。自身の中に眠る魔力を叩き起こし練ると、すぐに発動できるようにしつつ、2人に「いいか? 火急の事態に大事なのは、冷静さだ。ルナ、クロエ、死者は出さずにいくぞ」と告げる。ルナは聡明さから、クロエは話の流れと天才的な頭脳から直ぐに言いたい事を察すると頷いた。
瞬間、火薬の爆ぜる爆音が轟き地面が揺れた。魔力が流れていき、特殊な爆弾だということが即座に分かる。突然の出来事に状況に立ち尽くす人がいる中、リアは《縮地》で駆ける。砂埃を掻き分けて。続けて鳴り響く連鎖する爆音の中を縮地で飛び回る。
ショッピングモールを支える柱が崩れていく。だが、リアは即座に《結界魔法》で固定する。柱を支え天井に結界を張り、通り過ぎる間際に全ての人へ結界の膜を付与して行った。
始点が端なのもあり、駆け抜けるだけで目に見える範囲全ての人を助ける事ができる。しかし目に見えない部分は……ダルクに教わったある術を試した。腕に魔力を纏わせて地面を拳で叩く。反響する魔力は波を作り、壁や物体に当たると帰ってくる。それにより脳内マップを作り上げていき、人の形をした波を捉えるとそこに大型の結界を張っておいた。
そうしながら走り抜ける事1分弱。全ての爆発を潜り抜けて、いや爆発する前に柱を固定し観光客や店員を結界で保護したお陰でかなりの人数を助けられたと思う。初めて遭遇したテロ事件だったが、1人の魔法使いとして出来る事が出来たはず。ただ、気になるのはやはり、助けきれなかった人がいるかもしれない事や、逃げた2人組のこと。他にもいる可能性のあるテロリストに、ショッピングモールの外などがある。中は無事だが、外がどうなっているか分からない。
ここは、索敵に移った方がいいだろう。そう思い行動に移ろうとした時。
「死ねえ!!」
ナイフを持った黒いフードの人物が、立ち上る煙の中から奇襲を仕掛けてきた。
「奇襲を仕掛けるなら声出しちゃ駄目だろ」
極めて冷静にリアは襲ってきた人物の腕を掴むと結界でナイフを叩き落とし、背負い投げをして地面に叩きつけた。蛙の潰れたような声を出して倒れる。結界で拘束しフードを捲ると、あの時の青年と同じく、今度は鱗の生えた少女が苦悶の表情を浮かべていた。目には涙を浮かべてリアを睨んでいる。
「邪魔をするなぁ!! お母さんに会えるのに!!」
言葉には、言い難いナイフのような鋭さが込められていた。
「お母さんに、会う為にこんな事をしたのか?」
この少女は孤児なのかと、憐憫に思うと同時に自身の頬を叩いた。いくらテロリストといえど……流石に失礼だ。憐憫に思う資格などない。
少女はリアの問いに、こう返す。
「リヴァイアサンがお母さんの元に連れて行ってくれる!! その為の計画を!! 邪魔するな!!」
「自分の欲の為に沢山の人を殺すつもりか?」
「お前に私達の何が分かる!? 恵まれた、お前のような人間に!!」
「……」
ごめん、確かに分からないなとリアは片手で目を覆い息を吐いた。自分は恵まれた人間だと思う。父はどこかに行って行方不明だが、優しい母に可愛い妹が2人もいる。
何も知らない彼女の慟哭に、果たして幸せを噛み締めている自分が何と答えられようか。
覚悟とは、自らが進むべき道を決める事。この少女には、覚悟があった。手を血に染めようとも、会いたい人に会う、その覚悟が。
だが、自称善良な一般市民であるリアはこの少女を、そしてさっきの青年が言っていた『深海教会』を許す訳にはいかない。爆弾が爆発してからの対処は可能だったが、爆発に巻き込まれ倒れている人を見た。彼等にも結界の保護をかけてきたが、魔道機動隊の救急隊が駆けつけるまで生きているかは運次第になるだろう。
リアはギルグリアから教わった打撃術を使い少女の背に特殊な衝撃と魔力を流し込むと眠らせる。
「ごめんな、君の覚悟は分かったが、お母さんには会えないよ。血に濡れた手で、大切な人を抱きしめるのは……違うと思う」
それにしても、恐らくこの少女は嘘で誑かされたのではないかと思う。あの白昼夢で見たリヴァイアサンとやらに、死者と会う能力など無いと考えたリアは、流石に可哀想に思うのだった。
それから、ルナは外回りで逃げようとした深海教会らしき人物を捕らえて、クロエは怪我人を治療して回るなど其々が出来る最大限の事を成した。リアも治癒魔法は使えるので、血を流す人や火傷を負った人を中心に治療してまわるのだった。
…………………
魔道機動隊の迅速な対応により、ショッピングモールから全ての人が保護されて外に誘導、運び出される。リアは魔道機動隊の指示に従いながら結界を解除していき、ショッピングモールは崩壊はしなくとも廃墟のような出立ちとなってしまった。しかし、崩れなかったおかげで周囲への影響は少なく、2次被害は免れた。
逮捕された少女や、テロに加担した深海教会の信者らしき者達は、魔道機動隊に連れて行かれた。
その際に魔導機動隊の1人に話しかけられる。
「あんさん達3人が今回の功労者かいなぁ?」
「あなたは……んん!?」
「な、コスプレ?」
「もふもふだー」
長い金髪が印象的な、まだ歳若い……いや、実年齢は不明な少女のような魔導機動隊員だった。目は二重でパッチリとしており、可愛らしい顔立ちの和風美人。隊服の上から花柄の羽織を着ているのもあって異様さが際立つが、それよりも。耳だ……頭に2本の狐耳が生えている。もふもふである。それからアクセントに銀色の百合を模った髪留めが印象的だ。
「コスプレじゃありまへんよー。ふふっ、お嬢さんらに自己紹介しときましょか。あっしは英雄と呼ばれている世代の生き残りの1人……『ミヤノ・アトランタ』っていいますぅ」
リアの脳内に衝撃が駆け巡った。ミヤノと呼ばれる英雄は、写真などは無く幻とされる英雄の1人であり、主に医療行為、それから亡くなった方々への慰霊や降霊などを行い、傷ついた大勢の人の心を救った人物だ。
そして、生死は不明だが、お狐様を信仰する神社の神主をしていたらしく、そのお狐様の力を行使できる魔法使いとして伝わっている。噂では人魔大戦後、魔道機動隊の組織作成に携わったことが文献に残っている。
だから、今なおピクリと動く狐耳は本物だと分かる。というよりも、耳にまで魔力の流れがあるので確実に肉体の一部。ということは……本物!! 肉体が若いのは、おそらく自分と同じように、というよりまたこの人も人の輪廻を外れた存在なのだろう。まぁ、そんなことよりも。
「俺、リア・リスティリアって言います!! ファンです!!」
「おぬっ!?」
リアは脳みそからっぽでミヤノに抱きついた。抱きつかれたミヤノは避ける事なくリアを受け止めると困ったような顔をする。リアはそんなミヤノのたわわな胸に顔を埋めると深呼吸をし、それから耳を触る。
「あ、ちょっと待つのじゃ童よ。これ、耳は敏感なの、ひやっ、んっ……」
女の子じゃなければ犯罪である。だが、リアの英雄好きはこういう行為を平気でさせるくらいのレベルである。そんな中で、ルナとクロエは当然嫉妬した。頬を膨らませてリアを引っ張る。
「お姉様!! お気持ちは察しますが離れてください!! 抱きつくにはピッタリの可愛い妹がいるでしょう!!」
「そうだよリア姉!! そんな年齢不詳のおばさんよりも私達を抱きしめてよ!!」
「お、おばさんじゃと!? 童ぁ!! 覚悟は出来ておるなぁ!!」
ミヤノがリアを振り払う。
その時、ルナからぶわりと青白い魔力が迸る。魔力はミヤノを突き飛ばし、空にぶっ飛ばした。《念力魔法》の純粋な突き飛ばしである。
「おわっ、ルナ!? 大丈夫ですかミヤノさん!?」
怒り顔のルナとクロエはリアの両腕を取ると抱きしめながらミヤノを見る。彼女は空中で綺麗な回転を見せると、ふわりと重力を感じさせない動きでゆっくりと着地した。
「ふむ、歳をとると怒りっぽくなっていかんな。おばさんなど言われ慣れておらんからついカッと。しかし、中々に魔力の扱いが……ふむ? そういえばリスティリアと言ったか?」
トンっと足を鳴らすと、ミヤノは風すら発生させずにリアとルナに肉薄した。そして、まるで孫を見るかのような微笑みを浮かべると、両腕をあげて……2人の頭を撫でた。
「わぷっ」
「はえ?」
「なるほど、クラウの子孫か。名も知らぬ長髪の童よ、中々に腰に効く一撃だったぞ」
ルナは突然の優しい対応に、流石に戸惑いながら「その、えっと……ぶっ飛ばしてごめんなさい。私はルナっていいます」と自己紹介をした。ミヤノは「うむ、いい名じゃ」と笑う。先程のルナの行いを、若い少女の可愛い嫉妬かと思っていた。大人の余裕というやつだ。
事情を知らないクロエがその光景を不思議そうに見ていると、ミヤノはしゃがみ込みクロエの頭も撫でた。
「おばさんじゃなくてお姉さんだ、ホムンクルスの童」
「私がホムンクルスって知ってるの? あ、私はクロエ。リアがつけてくれた大切な名前」
「あっしは魔導機動隊の特殊な部署におるからの。大体の事は知っておる。クロエか、お主もいい名じゃ。して、功労者の3人よ」
ミヤノは腕を組み、少しだけ考え込む。
「成程の、そしてお主がリア。名は知っておるよ、中々の魔法使いとな」
「英雄に知っていただけるとは、光栄です」
「畏まらなくてもよい。して、ならばお主らには事情を話した方がよさそうかの」
ミヤノは忙しそうに動き回る魔導機動隊員に「すまぬが、少し席を外す」と伝えると、リア達の元に戻って「近くのカフェで話でもせんか?」と誘う。3人は顔を見合わせると、誘いに乗った。
小洒落たカフェで、4人はテーブル席に腰掛けるとミヤノは適当にデザート類を注文し話を始める。
「実はのぅ……この連合国、近くの海底には古代の化け物がいての。魔道機動隊の考古学部門の研究から、リヴァイアサンと呼ばれる其奴は、この連合国を滅ぼし得る力を持っておる」
「リヴァイアサン……『深海教会』って奴が言ってました」
「そうじゃ、その深海教会は古くから伝わるリヴァイアサンを力の神とし崇め、力を求める為に魔道機動隊のお世話になる奴もおるにはおるが……信者も多い普通の宗教だっのだがなぁ。最近、一部の過激派がテロを起こしておってな」
長い話になりそうだと思った3人は、おそらく今回、話を聞かされるのは既に顔を突っ込んだからかと察しながら彼女の口が開くのを待った。
正直、小説を書くより読む方が好きです
まぁ、リヴァイアサン編はノープロットで構想を頭の中で練ってるだけなんで、いざとなれば消せばいいかと考えています。ごめんなさい_(:3」 ∠)_




