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閑話


 事の顛末を。


 まず、今回起きた事件に関する詳細をシエル含めてジルと話し合った。ジルはにわかには信じ難いといった顔をしていたが、事件の詳細をレポートに纏めてくれた。そのレポートをその日のうちにグレイダーツへと手渡し……チカの母、抜け殻となったエルは専門の病院へと搬送され、それに伴い『神話』に関する全てを回収した。すると、グレイダーツの動きを読んでいたレーナが話を通して、ミスカトニック大学の教授が接触。詳細に説明を受けたグレイダーツは一先ず大学の言い分を信用すると共に、流石に手に余ると大学の手を借り専門の研究機関を立てた。そうしたら面白い事に探偵を生業としている者達や一般人からも多数の情報が寄せられて、グレイダーツはデイルを巻き込み神話の世界へと足を踏み入れる事となった。


 さて、シエルの話に移ろう。エルは廃人となりアールグレスは行方不明となった事で、失踪事件の犯人を断定は出来ても裁判はできず、シエル含めて誘拐された者達はクロムも関係する特殊な医療機関で検査、治療を受ける事となった。中には精神的に不安定な者やショゴスを抑えられない者もいて、特殊な医療機関からミスカトニック大学の手を借りた専門機関に変わるまでそう時間はかからなかった。だが、時間が解決してくれたようで、皆自我を取り戻し、ショゴスを内包している為に監視対象となりはするが、日常生活へと復帰していった。この辺は魂の研究を最先端で行なっているクロムの腕が成した技だ。


 そんな病院へと向かう前に、シエルは2回目のマリアとの再会を果す。マリアは前回と同じ言葉を口にして抱き合い、涙を流してくれた。シエルはそれが嬉しくて、2回目ではあるが共に涙を流し再会を喜んだ。


 シエルを見つけた事でマリアから再び礼をもらい、この奇妙な『死者蘇生』は幕を閉じる事となる。後に、シエルとマリアはグレイダーツ校を目指す事となり、リア達は休日に講師をするなど交流を続けている。


 これにて、シエルとマリアとは友達となったのであった。


 さて、話は変わりレーナについてだが、彼女とも連絡先を交換。神話生物や神話的事象に巻き込まれた時は是非に頼ってほしい、それから自分に似た人を見つけた場合は連絡が欲しいと頼まれたので快く了承。レーナとは奇妙なループを共に過ごしたこと、リア達と同じく特別出でた魔法の使い手という事で友達になる事ができ、リアは心の底から喜んだ。シエル、マリア、レーナと1日に3人も友達が増えたリアは、キラキラとした目をしていた。


 そんなリアはさておき、情報網……特に話に聞く神話関連にヴァルディアも絡んでいた可能性があると知ったジルは黙っている訳にはいかず、レーナとは業務提携のような関係となった。まぁ、探偵との繋がりのようなものだ。


 また話を転がして。


 天使に関する事だが、流石のグレイダーツもどのように手を出せば良いのか分からず、取り敢えずキルエルに関してはリアに任せるとの事だ。まぁ、こうなる事は分かっていた節があるので、リアはお小遣いをねだってみるなど、ちょっと守銭奴な事をした。もうすぐ新型ゲーム機の発売日なので、少しでもお金が欲しかった。そんなリアにグレイダーツはしゃーねーなとポンと封筒を渡した。


 キルエル繋がりの話になるが、実はあのループを体験した者が数多くいたようで、リア達一党は一部の魔導機動隊員から礼を言われた。しかし、他者に言っても世迷言としか取られない為に黙っておくしかなく、助けられた魔導機動隊員は悔しそうにしてくれたが、それだけでも有難いと天使のような笑みを浮かべて感謝を受け取っておいた。こうして、一部でリア達のファンが増えたのであった。


 ファンは増えたが、世間的には謎の魔物が出現して消えた事になっているので、リア達の活躍が報じられる事はなく。残念だが有名になる機会とはならなかった。


 そんな当のキルエルは、リア達の暮らす部屋に転がり込んでいる。戦った事でこちらも不思議な関係となり対等に話をするようになった。なので、寝っ転がってゲームをしているところを蹴飛ばしたり、掃除機で頭をしばいたり等、そんざいに扱っていた。


 しかし、当然家族からは非難の目が向いた。クロエからは「また女の子連れ込んでる……しかも天使? リア姉は節操がないね」と頬を膨らませて怒られ、ルナからは「またですかお姉様、良い加減にしないと襲いますよ?」とこちらもお怒りだ。最近、女の子になって1年という事で心に余裕はできているが、クロエと共にリアを襲う事を画作しているルナを見て、家族の関係が崩れるからとの言葉を抑止力にどうにか留めている。が、キルエルが「なにを止める必要がある、ヤりたいならヤればいいではないか」と余計な事を言ったので、頭のヘイローをへし折った。泣きながらヘイローを抱きしめるキルエルは、見た目の歳相応に見えたが、実年齢は300歳くらいとの事で、わりかし新参者の天使なようだ。なので天使に関する情報もあまり搾り取れなかったうえ、ネトゲにハマり朝から深夜までゲーム三昧な為、本当に邪魔である。電気代がものすごいので、ヘイローを粉々にしてやった。精神力で回復するらしいが……ネトゲ大好きゲームも大好きなキルエルは、たぶんもう天使の世界に戻れないんじゃないかなと思う。そして、殺し合ったせいか奇妙な友情が……いや、一度レイアを殺されたから恨み怨みも確かにあるが、ほんの少し芽生えたのもあり、リアは電気代に怒りはするものの、共にゲームをするくらいの仲にはなった。


 そんなこんなで、後始末も終わり、こうして再び日常を謳歌している。謳歌しているが、そこに『修行』という日課が付け加えられた。


………………


 正直に言えば、レイアが殺された時、自分は心の底から無力感に苛まれた。故に、今回の一件が解決して思う事はひとつだけ。修行しなくてはならない、である。


 生徒会権限を使い、修練場を借りると、リアは結界の構築に入る。この時、意識するのは《境界線の──》と名がつく効果を付与出来る様にする事だ。名付けるなら《境界線の結界(コンフィーネ・エリア)》。そもそもの話、《結界魔法》は境界線を引き、壁を作る魔法だ。理論的には、傷ひとつつかないのが理想的なのだ。


「結界を構築……」


 《境界線の狩武装》を作る時の特殊な魔力の構築を真似した結界を一枚張る。薄い黄金色をした結界が出来上がった。同時に結構な魔力を持っていかれるも、次いで《境界線の狩武装》を装着する。この《境界線の狩武装》も改善されており、前は閉めてコートのような形状に変化させておいた。これで防御面は顔以外完璧だ。顔も覆いたいが、フードをつけるだけで精一杯なので、いつか仮面などを作れればいいなと考えている。


 さて、そんな《境界線の狩武装》を装備してやる事はひとつ。


「《皐月華戦・改》!!」


 結界に向けて放つ破壊の一撃は、とてつもない衝撃波を伴った。周囲のコンクリートが捲れ、雲が晴れるほどの一撃に結界は……ヒビが入っていた。


「ダメか……こんなんじゃ、ギルグリアの一撃には耐えられない」


 だが、少なくとも今自分が放てる最大級の一撃は耐えてみせた。これは良い進歩だと思う。このまま、特訓を続けていけば《境界線の結界》は完成できるかもしれない。もし魔力が足りなくなっても、ドラゴンの血の力を借りて空中や地脈からエネルギーを吸収、魔力に変換すれば巨大な結界も張れるだろう。だが、前回のキルエルとの一件で街を覆った程の結界はまだまだ無理だと実感する。そこで、デイルを召喚。彼にも話をしてみたところ、デイルはリアの新たな魔法に「マジか、わしを超えたな……」としみじみ思い、共に訓練することとなった。デイルも神話関連の話を聞いて思うところがあったようで、自分もまだまだだと考えた様子だ。だが、歳が歳なので無理しない様にと弟子らしく言っておいた。しかし、たった2日でリアの《皐月華戦・改》を耐えてみせる結界を生み出したのは、流石《結界魔法》のスペシャリストと言える。


 そんな特訓を続ける事2週間。デイルは完璧に《境界線の結界》を構築してみせた。必要な魔力量は《結界魔法》と同等だが、防御力は桁違いだ。しかし、自分はまだまだ改善点が満載。


 悔しい、そう考えて特訓を続けていると、修練場にクロエとルナが顔を出した。


「リア姉、頑張ってるね。私も、《結界魔法》を使えるようになりたい。デイルさん、教えて」


「私もです。デイル様、《念力魔法》を鍛えてくれませんか?」


「ふむ、2人とも強くなりたいという事じゃな?」


「はい、お姉様を守れる様な魔法使いに」


 リアは2人のやる気に首を傾げて「2人の事は俺が守るよ?」と言うものの。クロエが胸に手を当てて返した。


「守られるだけじゃ悔しいのリア姉。私も力になりたいし、力をつける意味も理解しているつもり」


「お姉様、非力を感じる事がどれ程に痛感かお分かりになる筈です。私達も同様の気持ちなのですよ」


「そっか、なら一緒に頑張るか」


 そんな訳で4人で訓練していると、流石に有名になり始めて。訓練を見ていた生徒達も感化されてか、修練場を使う生徒が増えていった。エストは良い傾向だと思い、またフル・リフレイン校や他の連合国の魔法使いとの決闘大会を計画しても良いかもなと思いつつも、自分も特訓に参加するのであった。


 そして、ルナは簡易的な結界魔法や念力魔法の強化を。クロエは結界魔法を習得してみせる。ルナは努力する事に才能はあるが晩成型かもしれない。一方のクロエは優秀すぎる頭脳で結界魔法の基本術式を覚えてしまった。完全記憶能力はないが、充分すぎる程に強い。


……………


 ある日の晩の事。クロエはキルエルを鬱陶しく感じていた。キルエルはリアやギルグリアの実力を認めてしまっているせいか、天使であり若干上から目線ながらもよく甘えた様な態度をとる。ゲームをする時は対戦に誘い、風呂は髪を洗うのが面倒だからとリアと共に入る。おまけに寝る場所が無いと、クロエにとって癒しであったベッドにまで潜り込んでくる始末。


 それはルナも同じく、突如現れた同居人に思う所があった。しかも、自分達にも馴れ馴れしい所が何気にイラっとする。


 だが、なにか対策を打とうとすると、リアがまぁまぁと仲裁に入ったり、時を止めたりしてのらりくらりと回避していく。フラストレーションが溜まっていくばかりである。


 なので、ルナとクロエはリアで発散する事にした。もう家族の関係とか無視して、兎に角リアに甘えたい一心で旅行を計画。キルエルを置いて隣国のウーラシール連合国の宿を予約しておいた。リアには1週間前に伝えて学校を休み、キルエルを置き去りにして3人はバカンスに出かける。


「事前に言ってくれれば俺もバイト増やしたのに」


「いえ、今回はデイル様より資金提供をしていただいたので大丈夫ですよお姉様」


「そう、少し『お話し』したらデイルさんも分かってくれた。だから、リア姉は一緒に何も考えず癒されればいい」


「師匠に何をしたんだ……でも、2人が計画してくれて嬉しくも感じるよ。師匠には後でお礼を言わないとな」


 という訳で、久方ぶりに平和な時間を過ごせそうだと、ウキウキするリアであった。

バカンス編はノープラン、ノープロットなので、失踪するかもしれません(´・ω・`)

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― 新着の感想 ―
[一言] そんな簡単にヘイローをバッキバキに…… 旅行先に飛んで追いかけてきそうだな……
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