以後語り8
バレンタインに思いついたので初投稿です
バレンタインデーである。
女の子が友達や思い人にチョコレートを配るこのイベントは、グレイダーツ校でも盛んに行われていた。
そんな記念すべき1日の話。今日は日曜日で学校は休みだが、リアは朝からチョコブラウニーを作っていた。明日、遊戯部のメンバーや生徒会のメンバーに配る為である。そんな訳で数時間が経ち、チョコブラウニーを人数分作り終えたのだが。その中からひとつだけ、ピンクのチョコペンで小さいハートマークを描く。誰にあげるのかは、言わなくても分かるだろう。
そんな訳で、包装も終えてソファで時間を潰す。ルナは今、リアへのプレゼントを買いに外に出ているからだ。もう少ししたら帰ってくるだろう。
待つ間、暇だったので携帯端末を触る。端末にはレイアからのメッセージが入っていた。彼女は確か、他の部活動の助っ人をしに行くと聞いていたので、何だろうとメッセージを開いた。すると、最初に写真がアップされており……タッチすると無数の大小様々な箱をテーブルに広げた写真が映し出された。メッセージには『沢山貰ったんだけど、複雑!!』と書き込まれている。
まぁ、気持ちは分からなくもなかった。レイアは可愛い系の女の子だが、運動神経は抜群で成績もトップクラスに良い。だから、女子人気も高いのだ。そして大小様々な箱だが、バレンタインデーのチョコレートだという事は考えるまでもなく分かることで。
『人気者だね』
と、微笑ましく思いながらメッセージを送ると、直ぐに既読がつき返事が返ってくる。
『僕だけじゃなくて、リアの分もあるよ!! 渡してくださいって、何人かの女の子から預かったんだ』
「へ? 俺に?」
女の子からチョコレートを貰える日が来るとは……。レイア以外、特に仲のいい学友はいない筈だが、不思議なものだ。
そうして、自分の人気というのにはイマイチ、ピンと来ていないリアは驚きつつも。
『それじゃあ、その子達の分もチョコレートを用意しないと……』
と返したら『僕の分もあるよね? 楽しみにしているよ!!』と期待のメッセージが。当然『勿論』と返して、それから袖を捲りあげると、ソファから腰を上げる。
「もうワンホール作るか」
チョコレートブラウニーの材料は多めに買っておいた。ので、もうひと頑張り!! と気合を入れて調理を始めるリアであった。こういう律儀な所も人気の理由だと知らずに。
……………………
そうこうしている間にお昼頃。
玄関の扉がガチャリと開く音がして、少し間を持ちルナが勢いよくリビングに入ってくる。
「お待たせしました!!」
他所行き用のちょっとお洒落をした彼女は、両手で紙袋を持ちながら口元に弧を描く。リアは「お帰り、目当ての物は買えた?」と聞いた。すると、ルナは少し恥ずかし気に口元を紙袋で隠すと「えへへ、良い物を買ってきました』と一言置き。
「お姉様とチョコレート作りをしたい気持ちを我慢して……私は今日コレを買ってきました。ハッピーバレンタインです!!」
手に持った紙袋をリアに渡す。リアもくる事が分かるっていたので「じゃあお返しのチョコレートを、はい」と片手でチョコブラウニーの入った包みを渡し、両手で紙袋を受け取った。
ルナはまるで宝物でも貰ったように目を輝かせると「いただきます!!」と包装を剥がす。そして出てきた小さなハート付きのチョコブラウニーを口に咥え齧る。
「うーん、おいひぃ」
頬に手を当て喜ぶ。そんな彼女の様子にリアはホッとしつつ、また喜んでくれたようでなりよりと微笑ましい視線を送った。こういう笑顔が見れるからこそ、作り甲斐があるというものだ。
それはそうと……ルナが態々買ってきたプレゼントはなんだろうかと思ったリアは「開けるぞ?」と言って紙袋の封を切ると、手を突っ込む。
「わぁ、また凄いの買ってきたなぁ……」
出てきたのは……ナイトウェアだ。別の言い方だとベビードールとも言えるそれは、主に黒色を基調としており、胸を隠す部分には花柄のレースが多くあしらわれている。背中とバスト部分はオープンになっており、着ていないのにも関わらずエロい事が分かる一品であった。
あとついでに、紅色の首輪と長めの鎖も出てきた。彼女は一体何を考えてコレを買ってきたのだろうか。
「いや、バレンタインデーに下着を贈る文化があるのは分かるが……え? これ着るのか?」
顔を赤くしながら問うと、ルナはとても良い笑顔でサムズアップしてから「絶対似合います!!」と言った。着てもらう気は満々のようだ。
「そういう問題じゃないんだけどなぁ……。でも、ありがとう」
リアは家族に対して流石に行き過ぎなのではと思いながらも……割と乗り気ではあった。
女の子になってから一年、数々の体験をした上で考え方が変わった。特に今は、自分がコレを着た姿を想像して少しだけ興奮した。きっと、とても妖艶に、そしてエロチックになるだろうと思う。
そう……性的な興奮が出来る様になってきているのだ。
それにこういった服を着る事に対する抵抗も薄れている。前にも言ったと思うが、コスプレ感覚というものだ。だから、妹の趣味に付き合うのは心情的にも問題ない。倫理的にも、まぁ色々とあるが、同意の上なら問題ないだろう。
そんな訳で、リアは丁寧にナイトウェアを畳むと「また、夜に……ね?」と言う。どこか小悪魔チックな言動に、ルナは少しだけクラッときた。リア的には、こういう所作もまた、楽しく感じている。
………………
首輪が齎す効果というのは、予想以上に的面である。
例えば、リアにつければどうだ。普段から強気な態度の美少女に首輪をつけ、その鎖を自身が握る時に感じる、この女は自分のものという『征服感』と満たされる『支配欲』は並のものではないだろう。
それにプラスして、首輪をつけた少女が少しエッチなナイトウェアを着ている場面を想像してほしい。
こぼれそうな程に大きな胸を支える布地、丸見えのパンツに、隠すものも無く晒されたすべすべの太ももにスラリと伸びた生足、透けた布から見える美しいラインを描く腰回り。
オープンにされた背中に鎖骨付近……そして胸はどこか艶かしく、そこはかとないエロさを醸し出している。そこに少し潤んだ瞳とベッドの上での従順な仕草が加わると、どこかイケナイ雰囲気にアブナイ感じが凄まじい。
そんな状態のリアは、流石に元男の精神が強く出ているのか、頬を真っ赤にしながらも……ルナに鎖を握られていた。
ルナはリアの隣に寝転がり、鎖を見せつけるようにしながら優越感に浸る。内股を指で撫でると、分かりやすくリアの肩がブルッと震えた。
自分が今、お姉様を屈服させている。その事実にルナの背徳感が煽られ、吐息が荒くなる。
一方、付き合ってはみたが流石にリアは内心で苦笑していた。
(怒った方がいいのかなぁ。戒めないと、更にエスカレートしそうだし……)
そう思いはするものの、どことなく幸せオーラを放つルナを見ていたらそんな気持ちも収まってしまう。
(まぁ……バレンタインだし今日くらいはいいか)
リアはチョコレートよりも甘い考えで、ルナに付き合う事にする。ルナはヘタレなので一線を超える事はなさそうだが……今日は寝るのが少し遅くなりそうだ。
話のネタが欲しい




