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以後語り①



 場所は駅前近くのアイスクリーム専門店の裏にある、探偵事務所『底の虫』。

 そのソファに腰掛けて……レイアは悩んでいた。成長期によくある、別に深く考え込まなくても良いのに、なぜか悩んでしまうアレだ。


「僕がもっと強い魔法使いだったら……リアがあそこまで傷を負う事も無かったのかな」


「何回すんだよ、その話。済んだ事だし気にしなくていいじゃねーか。本人も気にしてないどころか、若干面白がってたし」


 レイアの悩み事にそう返すのは、ウザったそうな顔をしたダルクである。


 そんなダルクの言葉に、レイアは「でも、友達だからやっぱり色々と考えてしまうんです」と返事をして黙り込む。


 このやりとりが、事件が起きた後の休み期間中の、レイアとダルクが会話を始める為のルーティンになっていた。


 ……さて、話を戻して。レイアが探偵事務所に居る理由は2つある。それは、レイアが2つの依頼をダルクに頼んだからである。


 1つ目は、あの事件の後に流れた映像やSNSの投稿によって《召喚魔法》が表舞台に出ている為「広めるならば今がチャンスでは?」と考えたレイアが、求人に記載されてないショー等の《召喚魔法》が活躍できそうなアルバイトが無いか、探して欲しい──そんな内容であった。


 そして2つ目、正直ダルクも気になったので無償で受けた依頼。それは、あの場で1番の謎とされた『狐面の女は何者?』という疑問である。


 ダルクは1つ目の依頼に関して、真面目に探しはしたがレイア自身が見つけられないなら無いだろうそんな依頼、と途中で諦めた。ので、謝ってから撤収した事を伝えた。これに関しては自分も探していたレイアも「そう都合良くはいかないか……」と諦め、ダルクの提示した安い依頼料を支払った。


 次に2つ目の依頼……というより、調査になるのだが、ダルクは正直に口を開いた。


「たぶん、リアっちに聞けば分かるんだろうけど……」


 ダルクは事件の後に「そういやあの人、結局誰だったんだろー?」と考え、なんとなく起きた後のリアに尋ねていた。するとリアはにっこりと笑顔を浮かべ、人差し指を口元に当てると「内緒です」と言ったのだ。

 これは、確実に知っているうえに、何やら面白そうな事情が絡んでそうだな? とダルクは興味が湧いた。


 しかし、病み上がりに問い詰めるのもなんだかなーと思ったダルクはそれ以上の追求をしなかったのだ。

 今にして思えば、リアの秘密を武器にして聞き出せばよかった……という黒い考えが浮かぶ。


 だが、同時に「人としてどうなの?」「扱いを変えて欲しいなら駄目だ」等の葛藤により結局、電話で聞き出す事はなかったのである。


 そんな悶々とした休み始めに来たのが、レイアのこの依頼だった。


 まぁ、やる事もないし暇だから丁度いいと、あの日に狐面の女と接触した人物に総当たりしてみたのだが……皆、あやふやな記憶でハッキリとした『特徴』が掴めなかった。


 つまり、言いたい事はただ一つ……「分からない」。その一言に尽きた。


「あっ、それと最後に言いたい事が」


「え?」


「手っ取り早く《召喚魔法》を広めたいなら、リアっちみたいに『有名になる』を目指せば良くね? そうすりゃ、自然と使いたいって思う人間も増えるだろし。あとは、後輩が『こうなりたい!!』って思える先輩を目指してみるとか」


「ふむ……確かに良い案かもしれない」


「んで……気持ちは晴れたか?」


「……うん」


……


……


 ダルクの気遣いに、レイアは少し感謝をしてから、まぁ気長に考えようと思った。


 と、ここで。

 いい話で終わりそうになった時、ダルクは雰囲気をぶち壊して口を開いた。


「ぶっちゃけ、レイアってキャラが立ってねぇよな。スペックは高いのに、地味っつーか」


「貴様ァ!! 僕が1番気にしている事をッ!!」


…………………


 そんなこんなで、ダルクからメールを経由して『おたくの親友さん有名人になりたいらしいですよ』と伝えられたリアは、苦笑いを浮かべつつも考える。


 はて、今回のテロ事件以上に、自分を有名にする方法などあるのだろうかと。


 色々とマッチポンプ的な案が浮かびはするものの、結局はレイアのような地道な努力が大切だなぁと思った。


 ──そんな時、リアの思考に閃きが走る。


 実は……未来から来た己の記憶を見た時に、リアは女と男の境界線でひとつ吹っ切れたものがあった。


 それは、男女の感情の壁のひとつであり、今までなにかとジャージを着ていたリアが『今普通に女物の服を着ている』事……。つまり『服』に対する認識がかなり柔軟になっていた。


 勿論、下着も然りだ。

 更には、かつて母の作った痴女が着るような薄いベビードールなどの寝間着も、今なら着れるであろう程に。

 感覚としては女装を楽しむに近いが、自分の体型が理想に近く、この休みに顔も含めて色々と再確認したリアは、ルナの助言により『魅せる』方法を学んでいた。


(どうせ女の子になったんだし、いいだろう)と、そんな感覚である。


 ので、ふと思った。


 自分は魔法も好きだが、他に大好きなモノがある。それは、アニメやゲームといった娯楽だ。

 これらの作品達の中では、魅力的なキャラが多く存在する。


 そして、グレイダーツ校のある街には、毎年大規模な2次創作イベントがあり、多くの人々が所謂キャラになりきるイベントがあるではないか。


 要するに。


「コスプレとか、してみようかな? うん、あのキャラとかどうだろう……胸の大きさ的にも……」


 出来そうなキャラを思い浮かべ、ニヤニヤと笑みを浮かべながら、母に服作りを頼んでみようと考える。

 これらから分かるだろう……リアの思考にあったセーフティーがひとつ外れてしまっていた。


 が、しかし。SNS等の手段で有名になりたいなとは思わないあたり、やはり性根は簡単には変わらないようだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] そうだ リア×ギルグリア=薔薇で造った百合の造花 だ(゜ω゜)! [一言] リアさんがまた一歩女の子に近づいて良き……
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