エピローグ①リアの顛末
一人称です。
これは俺のひとり語りになるのだが……まぁ、聞いて欲しい。
まず俺は人間を辞めました。はい。
いや待って。ページを閉じないで!!
何を言っているのか分からないと思うが、俺自身も説明し難い状況なんだ。あの後、ヴァルディアをぶっ飛ばした後だ。全身から力が抜けていく感覚をよく覚えているのだが、要するに『生命力の枯渇』……まぁ、《魂の渇望》の加減を微妙にミスってたうえ、満身創痍で気絶したらしい。
そして次に目が覚めたのが、病院らしき場所のベッドの上であった。素で「知らない天井だ」と言ったのは記憶に新しい。
と、まぁそこまでなら『普通に助かったなら良かったじゃん』で終わりなんだが──どうにも、そうはならなかったようで。
ヴァルディアを倒した後の生命力……要するに魂と肉体の疲労が、虫の息レベルだったらしい。それはもう、余談を許さない感じで。
そこへ、ヴァルディアが消えた事で幽閉されていたギルグリアが解放され、魔物も全て消え去り、復帰したグレイダーツ校長が気絶したデイルと怪我人を助けてまわっていたクロムさんを引き連れて駆けつけてくれたのだとか。
クロムさんが来たのなら余裕で助かるなと誰もが思ったであろう。けれど《魂の渇望》という魔法は非常に厄介な副作用を持っていたようで。
摩耗した魂や生命力は、時間をかけてゆっくりと癒していくしかなく、クロムさんでは傷口の治療しか出来なかったらしい。更に血も多く流れおり、今すぐに生命力と血が必要だったようで。そこで、ギルグリアに白羽の矢がたった。
まぁ、結論を言うと──ギルグリアから輸血を受けたのだ。
……ドラゴンの血を体内に取り込み肉体と魂を補強する。
要するにグレイダーツ校長やクロムさんと同じ人間を辞める。それしか手段が無かったのだとか。因みにドラゴンの血は全ての生物に対し、彼ら自身の手である程度改変が可能であり、提供されれば輸血は可能なのだとか。
つまり……ちょっと特殊な助かり方をした訳で。
病室の鏡の前に立ち、また自身の顔を見る。そこには、目の瞳孔がギルグリアと同じような縦長へと変化し、少し長めの犬歯が生えた自分が写る。
「ふむ……ふむ……」
その辺のプロフェッショナルな2人に『すまない』と真っ先に謝られた以上、本当にその手しかなかったのだろう事は分かる。あと小心者の自分が助けてもらっておいて、彼女達に文句など言える筈がない。
それにだ、俺自身はギルグリアには感謝していた。彼は助ける為に、かなり嫌だったであろう血の譲渡をしてくれたのだから。あと「本当にすまない、リア!!」とこれまた以前とは考えられない程に真摯な態度で謝ってきたのだ。彼が本当に、善意で行動してくれたのだと心で理解できた俺は、流石に責める事などできなかった。
これが、俺自身の顛末である。
さて、振り返ればこの1年の間……賢者の魔法で黒髪少女にされたのに、プラスしてドラゴン要素を追加されたわけだが。
「格好いいじゃん」
神経が図太くなったと、つくづく思う。
……………………
他に語らなくてはならないのは、ルナについてである。
狐面の女の記憶を見たせいか、あの日以降俺は、ルナに対して愛おしい感情がそれはもう止まらなかった。彼女が病室のベッドに潜り込んできては、逆に抱いて頭を撫でたり、添い寝をしたり。余裕が無くなって赤面する彼女はとても可愛かった。
まぁ、目が覚めて2日。俺でも少しウザく感じる程のスキンシップをした訳だが……嫌がられなかったのは救いだと思った。
そして、これからはもっと愛でていこうと思う。狐面の女の分まで。
そんな語りを最後に──筆を置かせてもらう。
もう少しだけ続きますが、一応完結になります。
ダイス振って話進めたらファンブルが出たので、主人公には人間を辞めてもらいました。この話を書き始めた時から決めていた顛末なので……まぁ、うん。
あとは最後に、読了感謝。




