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文化祭と魔王④


 校長室に飛来した槍は、室内に入ると同時に貫通力を失った。しかし、同時に赤黒い魔力の暴風となり室内を一瞬で蹂躙する。


 まるで無数の爆弾が一斉に起爆したかのように、抉り削るような破砕音と轟音が響き渡る。正直、天井が崩れたり床が崩壊したりしなかったのは奇跡だなと思いつつ、事前に異常な魔力を察知していたグレイダーツは《召喚》していた大盾で防御しながら思った。


 それから、油断はしていなかったとはいえ真正面から攻めてくるとは思いもしなかったグレイダーツの脳裏に、次の手をどうするか、レイア達は無事かと無数の思考と心配が過り、ほんの少し無防備に隙を晒してしまう。


 それを目敏く……いや、この隙を狙っていたヴァルディアは、魔力を隠してグレイダーツの背後から人差し指を背中に突き刺した。胸の真ん中、赤い石が嵌め込まれたところを指すように。


「てめぇ……」


 振り返って見上げると、懐かしく、そして最も悍ましい同級生の笑顔があった。自分が気がつけなかった事に驚き、目を見開いて攻撃魔法を放とうとしたが。


「ゴホッ……え」


 口からは言葉となる空気では無く、熱をもった鮮血が溢れ出る。血は口元から首を流れ、胸元の赤い石にまで垂れ流れる。

 胸に熱を感じる。ドクンと心臓が大きく跳ね、全身から魔力が抜けていくのを感じた。


(……ありえ、ねぇ。この赤い石は『命の源』と同義なんだぞ。それが今、なんで『止まってんだ』)


 自分の寿命を伸ばし老化を止めていた、そして強大な魔力の源となっていた赤い石が、その機能を停止するのを感じながら、グレイダーツはその場から崩れ落ちた。


 ヴァルディアは、倒れた彼女を慈しむような目で見つめた後……180°反転すると、本来の目的を実行する為に目的の部屋に目を向ける。


 しかし、その時。右手に銀色に輝く籠手を纏い、天井の瓦礫を足場に跳躍する直前のリアと、隣から《縮地》を使い、自身と共に《西洋甲冑》2体を従えたレイア、そして真っ向から足と腕から鱗と、両手に強靭な爪を生やし半分人間化の魔法を解いたギルグリアが飛ぶように走る光景を目にした。


……………………


 場所は変わって。


 空で派手な花火が轟いた頃、2人の天才はちょうど同じ場所にいた。鳴り止まぬ地響きや人々の悲鳴と応戦の声が遠い第三訓練所にいても聞こえて来る。


 魔道機動隊に属している人達は、緊急事態のメッセージを受けとったのか、自分達に「安全地帯への避難を」と促した後、高速で何処かへ行ってしまった。


 それを見送ってから、さてどうしたものかとライラは考えていると、ティオは背負っていたデカいマイバッグを降ろすと口を開いた。


「……我は人命救助に向かうが、ライラはどうする?」


 バッグから怪しげな液体の入った瓶を魔物に投げつけながらライラに問いかける。薬品が命中した魔物は「ガシュ……」と焼けるような音と共に頭がドロリと崩れ落ちた。


 それから他の薬品類を取り出し確認を始めるティオを横目に、腕を組んで考え込んでいたライラは「ま、やる事はひとつしかねぇわな」と言って、隣に鎮座するシストラムを見上げる。


 空には羽や翼を持つタイプの魔物が複数飛来しているが、魔法使いの大勢は地上の魔物に意識を割かれて居るのか空への攻撃は疎かだ。


 しかし、先の花火のおかげで魔物が溢れ出る結界の裂け目が崩れて修復し閉じていくのが見える。これならば……自分でもいけるかもしれない。


 そんな考えの友人を心配し、ティオはライラに聞いてみる。


「大丈夫なのか? そこにあるMark1には初期型の近接武装しか積んで居らんし、なにより既に所有権は魔道機動隊に譲ったのだろう?」


「この騒ぎだぜ? テロかもしれない事態だ。それで文句を言う連中が居るなら、組織の腐敗として矢面に上げてやるさ。武装は両手足のブレードでも充分に暴れられるさ。一応『澱み』との戦いの後、リアクターからのエネルギーを纏えるブレードに変換してあるしな」


 それを聞いて、ティオは薬品を仕舞い終えた鞄を背負うと不適な笑みを浮かべ歩き出す。


「では、我は救護しながら活躍を見ているとしよう」


「期待に添えるように頑張ってくるわ」


 駆け出す友人を見送ってから、ライラはシストラムのコックピットを開いて飛び乗った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 校長出オチしてるやん!
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