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習慣と裏無し②

偶然というものには2種類ある。自分が得をする偶然か、そうでないかだ。道端で100円玉を拾ったり、夕食に自分の好物が出たりするのは、当然得をする偶然だが、今僕の身に降りかかる偶然は圧倒的に後者であった。

「偶然だね。ふふふ」

僕の隣に座る彼女が笑う。一体どうしてこうなったのか。

「今日の帰りのホームルームで席替えやるからなぁ」

朝のホームルーム。担任の先生の一言によりクラス中がざわついた。当然と言えば当然である。自分の今後数カ月を左右するいわば一大イベントなのだ。まぁ、僕には関係ないのだが。

「ご機嫌麗しゅう、〇〇くん」

「ちょっと待ってって、玲菜」

そう言って僕に近寄ってきたのは口森 玲菜とその友達、千葉 春香だった。

春香は、いつも笑っている玲菜と違い仏頂面で僕の前に来ることが多い。高校2年に上がり玲菜を通じて知り合い、人として僕の目に映るようになった彼女だが、一緒にいるとたまに睨んできたり、コミュニケーションという名の暴力が飛んでくる。よって、目を合わせない程度に連んでいる。

「おはよう。どうしたのその挨拶、とは聞かないであげる」

「お、貴族の挨拶をスルーとはなんと無礼な」

「そうだぞ、無礼者」

別にスルーしてないのに酷い言いがかりである。

「時に、〇〇くんはどこの席をご所望かな?」

「席替えの話?それなら僕には関係ないね」

「関係なくはないだろ、無礼者」

春香の中では、まだ僕は無礼者らしかった。確かにこの場において僕は無礼者かもしれない。席替えがある日には、次の席について思いを巡らせるというのが普通なのだ。しかし僕は違う。席替え自体はくじ引きで決めるのだが、1番前の席に限り、希望すればその座席になることができるのだ。ちなみに僕が希望したのは6列あるうちの窓側から3番目。体質の関係上、1番他人が目に入らないこの位置がベストなのである。くじ引きをやる前から自分の座席が分かってる僕にとって、この席替えは文字通り関係ない。

「ほほう、関係ない……ですか」

僕を訝しむような顔をしている春香とは違い、玲菜は何やら分かったような顔をしている。どうも彼女の腹の内を読む事はできない。

「それじゃあまた、放課後にね。ふふふ」

「え?何?あっ、ちょっと、待ってよ玲菜」

2人は嵐のように立ち去って行った。僕の視界には、別の場所に移り、また立ち話をする2人が映っていた。知ったことでは無いが。もう授業が始まるという倦怠感と、玲菜が残していった言葉は僕に不安の種を埋め込む。嫌な予感しかしなかった……。

そして帰りのホームルーム。玲菜は僕のとなりにいる。彼女が植えていった不安の種は見事に発芽し、その根は僕の脳内を締め付ける。こんな偶然本当にあるのか……。

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