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ショーロ  作者: 辰野ぱふ
2/4

2.

ショーロが、目パチ病になった、と言ってきた。

ショーロの場合、言っていることの意味がわかるまでが一苦労だ。

「それなに?」と、聞くと、まず、自分の持っているバッグを目の高さに上げて

「せんしゅー。買った」と言う。

 あたしが「それ」っと言ったものが、バッグだと思ったらしい。

「ちがうちがう、目パチ病て何?」と改めて聞くと

「目、パチパチすると音がする」と言う。

「してみて」と言うと、10回くらい目をパチパチパチパチやり始めた。

でも、音なんて聞こえない。

「音なんか、してないよ」

というと、「ね。変でしょ」という。

「何が?」

「音してないでしょ」

ここまでの会話で、あたしは腰がくだけそうになった。

「じゃあ、病気ってどういうこと?」

と聞くと、

「え? われ病気?」

と聞き返す。

「だって、目パチ病って言って、『ビョウ』ってのは病気ってことじゃあないの?」

と確認すると。

「ああ、そのことか」と言って、ずるりと落ちそうな迷彩色パンツをずり上げながら

「パチパチが人には聞こえてないみたいだけど、われには聞こえるなり」

 とのたまわった。あたしは会話をする気がなくなり、とげとげが頭から出てしまった。

「あ、わりいわりい。パチパチというより、バチバチかな?」と、確かめるようにまた目をパチパチした。そして、あたしに「聞こえた?」と確認した。

「聞こえないよ!」

 あたしのとげとげで、少し声が荒くなる。

「やべ、やっぱ、われ聞こえてる」

 ショーロはいつも楽しそうに見える。『やべ』って思っていないことは確かだ。

「どうする気?」

「どうしようもしねえよ。だってこれ、説明するのふかのー」

 と、へへへと笑った。あたしは、その顔を見て、もう、どうしてそんなことで楽しめるのか理解できなくて、だんだんまた腹が立ってきた。

「われのこの頭の中の音を録音できたらいいんだけどな」

 とショーロがしょうもないことを言う。返事する気がしない。

「それ、できるようになったら、われ、ノーベル賞だぞ」

 そう言い捨てると、ショーロは飛行機みたいに、手を広げて、「ぶーん」と言いながら行ってしまった。

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