攻略対象が典型的な貴族な場合のヒロインとその友人 ~リリアン視点~ 前編
私はその男達を何度も見たことがある。テレビという箱の中で。スチルという絵で。ゲーマーであった私の友人である雛もその中の男について熱く語っていた。…補習中に。
「だーかーらー、みぃちゃん!このアルフォンス・サウスバード・ジルベスタン様はね、俺様な所がいいんだよ!!この周りの視線も気にせず公開で婚約破棄って言うところもたまんない!!やっぱり二次元最高!!」
「意味わかんない。プロフィールみたけど、現実にいたらモラハラ男じゃないのそれ?」
「みぃちゃんは分かってないな~。これはゲームだからいいんだよ!ゲームだから萌えられるんだよ!!」
「はいはい。それよりも課題しましょーねー。部活出来なくなるよー。」
「うわーん。やりたくないよー!みぃちゃんのバカー!!!見逃してよー!」
「だぁめ♡」
懐かしいあの記憶。私がわたくしになる前の思い出。
やっと高校生になれて、部活は雛と同じく剣道部にした。雛は上段。私は中段。いつも雛はふざけていて、私もそれに巻き添えを喰らっていたけど、部活動だけは真面目だった。
「終わったー。」
「あ、雛。お疲れさまー。」
「二人ともお疲れさま。」
「「お疲れ様でした。先輩。」」
実先輩と、私と雛の3人の小さな部活だったけど、仲はよく、いつか大きくするぞ!という夢も持っていた。
「今日もきつかったねー。なっかなか強くなんないよー。」
「雛は強いじゃん。」
「上段だもん。みんなやりにくいだけだよー。」
「そうかもねー。」
「ちょっ、そこは否定してよ!」
「あははのは!」
「もう!みぃちゃんのばか!」
あれは確か交差点だった。雛と別れ、ひとり帰る途中赤信号に引っかかってしまい、スマホをいじっていた。
「みぃちゃーゃーん!」
雛の声がしてふと目を上げる。恐ろしくでかいナニカが私の前にいた。
「危ない!!!」
きききー!!という音がしてすさまじい衝撃が私を襲った。ただ憶えているのはみぃちゃん、みぃちゃんと泣きわめく私の親友の声が緩やかに消えていった事と、とても眠かった事だけだ。
そして私はわたくしになった。リリアン・サウスバード・ジルベスタン。リルアストの第一王女にして第2王位継承権を持つ。上に兄が1人いて、そいつはアルフォンス・サウスバード・ジルベスタン。これは後で説明する。転生には色んなタイプがあるらしい。途中で思い出すタイプと、最初から持っているタイプ。そして、成り代わるタイプ。わたくしの場合は2つめだった。
あの時、わたくしはとてもあたたかくぬるい何かに包まれ、安心していた。眠っているのに起きている。そんな不思議な感じだった。
いきなりパァンという音が響いたと思うと何かに押される感じかした。わたくしまだ出たくなく、暴れたけど、抗いきれず、出された。息が止まり苦しくて苦しくて堪らなかったけれど、ドンドンと背中を叩かれ、何かを吐いた。
「王妃様!?可愛らしい女の子でございます!!王妃様!王妃様ぁ!!」
これがわたくしが最初に聞いたことがそれだった。
わたくしを生んだ後、王妃である母は亡くなった。元々体が弱く、無理を押しての出産だったらしい。曰く、わたくしの容貌は母に瓜二つらしい。金髪緑目の超美幼女を鏡で見た時、思わず
「この人だあれ?」
と言ってしまったので、侍女にしっかり訂正された。
無いわーないわーとか思いつつ、人は慣れていくものである。鏡見て見とれなくなったのがいい証拠である。しかし、慣れないものもある。
《炎
我の前方向1メートルに火を灯せ。時に温かく時に激しく人を照らす火よ。炎の精霊であるサラマンダーよ。我の希望を叶えたまえ。》
[火属性呪文
この世界に置いて最もよくある呪文。サラマンダーは下位精霊であり、魔力の消費量も少ない。]
魔法ですかーー!?魔法なんですかーーー!?ちょっと私である部分が騒いだ。厨二?ハハッ、ソンナコトナイヨ。私はくっ…右目が…疼く…なんて言っていないからセーフだ。…多分。
王族であるわたくしは、5歳から勉強を始めた。必死で頑張ったが、特に力を入れたのは魔法だ。王族は、どこぞのマンガのようにチートな魔力を持っている。だからヒャッハーなんてしていない。ついうっかり調子に乗って森を半壊なんてしていない。ふっふっふ。証拠がなければ大丈夫なのだ!(呼んだ精霊に土下座した。マジ切れしてた。メチャ怖かった。しばらくほとんどの魔力を吸い取られた。めちゃくちゃだるかったが、黙っててくれるのならば安いもんだと思った。)あと、多くの場合、魔力は生まれた時に決まる。わたくしは王族にしては平均ぐらいに生まれたらしい。兄であるアルフォンス兄様は、軽くその倍と聞いた時、なんだそのチートと思った。え?お前もそうだって?フヒヒサーセン。
ここでざっと紹介
[魔力
ほとんどの貴族が持っている。筆頭は王族。属性はなく、精霊が使うことを良しとしたら使える。例えるなら物々交換。高い品物(魔力)を出すほど高級なもの(精霊)が使える。但し高位精霊に行くほど受け取り拒否、又は拒否がされやすい。伸ばすことが出来ない。]
[魔法耐性
魔力があっても無くてもだいたい持っているが、魔力があるほど高い。呪文を受けつづけることでのみ伸ばすことが出来る。]
…ファンタジーだから、使えば使うほど魔力が高くなると信じていた私が馬鹿だったと後悔した。どーすんだよ。ハッチャケ過ぎて、10の時についうっかり大精霊呼ぼうとして拒否されて魔力切れでぶっ倒れちゃったじゃん。しかも大目玉食らったよ。継母に、
「あなたは何をしたのか分かっているのですか!ええ、1人で死ぬ分にはわたくしは一向に構いませんとも。大精霊を呼ぼうとするのがどれほど危険なのか、それをわからない愚か者にかける情などございません!良いですか、そなたのしたことは、この国の国民のみならず、他の国にも多大なる迷惑をかけるかもしれないのですよ!今回は精霊様のお慈悲で何もありませんでしたが、1歩間違えれば全ては終わっていたのですよ!恥を知りなさい!!」
平手打ちされて、呆然とした。森を半壊しても、これは何かのおとぎ話だと思って、謝れば許してくれると思っていた。実際に許してくれたから。だけど、それは本当にわたくしが恵まれていただけだった。もし、あの時許してくれなかったら?寛大だという精霊だが、怒るとすさまじい被害をもたらす。遠い昔にも、精霊を怒らせた結果滅んだ国があった。それと同じ結果になりかけた。ほかならぬ私のせいで。呆然としている私に、継母は、
「上に立つ者は力を持つものです。その力について責任を持つことが大切なのです。」
「…ごめ、ん、なさい、ごめん、なさいぃ、うっ、ふ、ぇう、ぐ。」
「あなたはまだ小さくこれからまだまだ嫌な事もあるでしょう。それで安易に力を使っては、いずれ1人になります。あなたはひとりになりたいのですか?」
「いや、だ、ひとりぼっちはやだ、よう。」
「ならば、もう二度とこんな事はしませんね?」
「うん、グズっ。もぅ、しないよぅ。」
うむ。懐かしきかな、小さい頃の思ひ出よ。母様マジでありがとう。お陰で何とかまともになったよ。
1歳上のアルフォンス兄様は、神童だなんだとか言われているが、性格がアレな分隠すのに必死だった。母様が教育してるのにのらりくらりとかわす兄様は尊敬したくない方向に優秀だった。外面はいい(眉目秀麗、頭脳明晰の黙っていれば正統派王子)ので、何とかなるかなと思ったが、目がいい大貴族は、サッサと乗り換えていた。ニコル・レイアード様という優秀な方に、王命で。(つり目で勝気そうだけと、物凄くいい人。兄様のたずなを握る人に任命された。兄様に少し憧れていたらしいが、実物を見て吹っ飛んだ。いきなり、貴様を愛することは無いと言いやがった。初顔合わせで、た。レイアード公爵様の笑顔か凄く、怖かったです。)
…兄様と初めて出会ったのは7歳の時のお稽古の時。まさかのメイド扱いされた時は怒りそうになった。その時、説教されるコイツをみて、コイツはもうダメだと思った。だって母様の説教を聞き流してるんだよ?私には無理だわーと思った。なんで、なかなか会えないのか疑問に思っていたことが解消された。あれは合わしたらダメなやつだわ。父様に尻拭いを頼まれた時もあー。って思った。家庭教師などの評判はいいが、目端の効く貴族は兄様の本質を見抜いている。そのうえで王家に忠誠を誓ってくれている。ぶっちゃけ王が無能でも部下さえ優秀ならば大丈夫なのでOK。
兄様の尻拭いに奔走してはや8年になりました。王族は気軽に謝っては行けないとはあるが、あのバカはそれを盾にとってどんな酷いことしても謝りゃしねえ。おっと、ごめんあそばせ?つい本音が…
兄様が尻拭いさせた件は多岐に及んでいる。婦女に対しての暴言はまだまだ可愛いもの。下のものに暴力振るう、こっそり追い込む。婦女に暴行しようとした時は流石に止めた。隠密部隊が止めてくれなかったら、危うくその方を傷物にするところだった。なお、その方はバッチリ怒っており、王家に対して多額の援助を取っていった。女って逞しいと思いました(兄様がその方を襲ったのは、援助を欲しいと言っていたので、自分に逆らえないと踏んだから。)。王家に被害をもたらしながらも何とかやってきたが、学園に入れば少しはまともになると期待した。理事長や学園長にも頼み込んで入れてもらった。成績は上にいるらしいが、トップではないらしい。取り巻きも出来、少しは、少しはまともになると思った。なのに…
「あのバカはいったい何をしていらっしゃるの…」
「…調べれば、アリアという平民に対しての暴言のみならず、取り巻きと力を合わせて徐々に孤立させているようです。また、覚えを良くしたい生徒からのイヤミも酷いとか…」
「次期王たるものとその取り巻きのその仲の良さをここで見せないで欲しかったわ…」
「…手を出しますか?」
「うん。でも、あなたは手を出さないで。わたくしがアリアという生徒に接触しますから。」
「…暗殺しても…」
「辞めてちょうだい。」
アリア、という書類について読む。庶民の出で魔力が有り得ないほど多く、入試でも優秀な成績を収め…という所で目を止める。
「ねえ、ちょっといいかしら?」
「はっ。何でしょうか。」
「まさか、この娘がいじめられた理由って…これ?」
「恐らくは。」
あいつは絶対王の器じゃねえ。というか、自分より点数がいいからって因縁つけるってどうなんだよ。
こうなれば…
「土下座するしかないわね。」
「…また、ですか。」
「そうするしかないでしょう。まあ、ありがとうねシルヴィ。」
「はっ。」
土下座はここでは異文化として受け入れられていた。何でも遠い東の国の最上級の謝罪らしい。あれのために土下座すること数十回。なりふり構ってられなかったが、小さい美幼女や美少女がすると迫力が違うらしく、驚いた目をされてお許しを頂いた。(また、小さい子にこんな事をさせるという事でまたあれの評判が下がった。)
途中編入をOKにさせた。理事長と学園長は半笑いで受け入れてくれた。やらかしていることがここにも響いている。あいつ、本当に大丈夫かなー?
「うぇっ、グズ、ひっく。」
「あの、大丈夫ですか?」
「っ?」
「あ、大丈夫です。何もしませんので。」
「…………本当に?」
「本当です。あ、一緒に捜しましょうか?」
「お、お願いします。黒い袋に入った文房具を探しているんです。」
…驚いたー。
アリアさん、という人は思っていたよりは元気そうだった。いや、今までか酷すぎたのか。うーん。見当たらな…あ、あった!
「ありましたよ!」
「あっ、ありがとうございます!」
「あの、何があったんですか?」
「…キチガイに目を付けられんです。」
「キチガイ?」
「私になんかよく分からない事言ってくる人で、めちゃくちゃ怖いんです…あ、あなたも気をつけた方がいいですよ。金髪緑目の、容姿はいい、人、で…」
「…ごめんなさい。その人はわたくしの兄様です。」
「ひっ。」
…あー。やっぱり怖いよね。キチガイ呼ばわりしている人の妹だもんねー。よし、こうなったら!
「あのっ!?何やってるんですか!?」
「あなたが私の愚兄によって苦しめられているというのに、私は何も出来ないのです…!ならば、土下座するしかないでしょう!」
「いや、その結論ちょっと待て!」
「ええい、話しなさい!!」
「ああもう!
『緊縛
我の前にいるものを縛れ。動かず、喋らずただそこにいるものとなれ』!」
ピタ、と動かなくなったわたくしを見て驚いた。どころではない。驚愕した。
緊縛呪文は魔法耐性が自分よりも弱いものにしか効かない。そして、魔法耐性は魔力に比例する。かける相手が凡百の貴族なら分かる。だが、この場合の相手は王族であるわたくしだ。長ったらしい呪文を唱えるのでもなく、こんな短い詠唱でしかも王族の平均ぐらいとはいえ、平民からしたら何倍、いや、ひょっとしたら何百倍も持っているこのわたくしに対して、こうも、あっさり…?
「…落ち着きました?」
いけない、この事について考えるのは後にしよう。
「…ええ。」
「えっと、仕切り直しましょう。私はアリアと言います。あなたはリルアスト王国第一王女、リリアン・サウスバード・ジルベスタン様であっていますか?」
「はい。」
「それで、私に謝ってきた理由が、アレですか?」
「はい。アレに苦しめられているというのに、私は何も出来ない私が悔しくて…私に出来る精一杯の事をしようと…」
「あ、結構です。」
「え?」
「あなたの自己満足は要りません。」
は?と思った。じこまんぞく?どこが?言い返そうとしたが、アリアさんの表情を見てハッとした。
「っ?それは、どういう?」
「えと、それはあなたがして満足するだけでしょう?そんなものは要らないんです。」
「!?私は満足なんて!」
「してます。その事に対して、あなたはそれで終わりにするでしょう?私は謝った、だからもう許されたって。「ッ違「違くないんです。」
お願い、まって、はなしを聞いて。
「ふざけんな!私がこんなに苦しんで、辛いのに、てめえは謝って、はいそれで終わり?はっ。貴族様って言うのは随分簡単なんだな!ざけんな!」
「申し訳ありません!」
「だから!なんで!なんで、て、めえが、っく、あやまるん、だよ。私は、もう、嫌で、もう、」
「…はい。」
「どうして、あいつなんかが、っヒック、うあ、ああああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
泣きじゃくりながらアリアさんは、縋ってきた。辛かっただろう、苦しかっただろう。理不尽な思いも沢山しただろう。それなのに、それなのに今までずっと我慢してきたのだ。抱きしめながら、ギリ、とくちびるを噛み締める。わたくしは確かに間違いを犯した。アリアさんの言う通り、謝れば全て許されると思っていた。だけど違う。謝っても、許されることが無いことだってある。…王族として失格だ、わたくしは。
「…楽になりましたか?」
「ばび。」
「ああ、無理しないでください。」
ズビズビと鼻を啜る音が聞こえるので、もう1枚ハンカチを渡す。あ、鼻かんだ。…差し上げようか。…そろそろ本格的に大丈夫かな?
「もう一度言います。申し訳ありませんでした。」
「…」
「あなたの言う通り、自己満足なのかも知れません。ですが、それでも言わせてください。」
しっかりと頭を下げる。甘ったれていたわたくしの弱さが招いた事だから。
「…わかりました。」
「はい。あと、不躾ながらひとつ、頼みがあるのですが。」
「…このこと誰にも言わないのなら。」
よし。
「…私の友人になっては頂けませんか?」
「…は?」
「さっきの言葉はとても心に響きました。あなたの様な方が友人として、私に厳しいことを言って欲しいと思っているのです。」
ポカンとした顔はとても面白い顔だった。後で、Mですか…?と聞いてきたので、全力で否定させていただいた。わたくしはMではない!!あと、何故緊縛呪文を使ったのか聞くと、真っ先に頭に浮かんだから、らしい。…それを王族に使った理由は本当にそれだけみたいだ。
ルームシェアしてください。といったら、予想以上に快諾された。途中編入の初日だったので、足りない荷物を一旦持ってから行くので、明日からお願いします。というと、花が咲いたような笑顔でいいよと言われた。…可愛い…!!やっぱり兄様許すまじという1年が膨れ上がった。
王宮の夜は遅い。王となれば最も遅い。だが、こっそり面会の時間を作って頂いた。
「…お父様。お話がございます。」
「リリアンか。なんだ。」
「兄様の事をご存知でしょうか。」
「…またあやつがなにかしたのか。」
「…イジメをしているという事をご存知ですか?」
「…はぁー。あやつは…始末はそなたに任せる。」
兄様の被害を1番受けているのは父様だと思う。教育をこれだけ頑張っても、何故あの兄様が出来たのかが分からない。
「いえ、そこではございません。」
「ではなんだ。時間を取らせるな。」
とは言いながら、父様はこちらを向いている。持ってきた話が有益である事を確信しているのだろう。
「緊縛呪文をご存知ですか?」
「ああ、魔法耐性が強きものには効かない呪文と聞いているが…それが?」
「…それをわたくしにかけた者が居ります。」
「…何っ!?効いたのか!?」
父様の反応を見て、やはりと確信する。アリアの魔力は王族に匹敵している…と。
「はい。一瞬にして動けなくなり、とこうと試みても解けませんでした。」
「なんと…その者はどこの者だ?さっそく…いや、まて。そこであやつを持ち出すという事は…」
「はい。兄様が害をもたらしている者こそ、わたくしに緊縛呪文をかけたものでございます。」
「…あやつは…とうとう…」
疲れたように頭に手を当てる父様。それはそうだろう。尻拭いをし続けている年数はわたくしよりも上だ。わたくしと同じく、学園に入れば少しはマシになると思った途端のこれはきつい。しかも、よりによって有能な人材に対してしているという所が更にきついのだろう。
「しかも、模試でも兄様を上回っているのです。」
「…あやつは、過ちを犯しすぎた。」
「それには同感致しますわ、あなた。」
っ!?え、どっから出たの母様!?気配しなかったよね!?え?ホホホ、とか笑ってるけど、これあかん奴だ。マジ切れしとる。目が笑ってない。え、怖い。まって、怖い。うわうわうわうわ、ヤバイ、マジでヤバイ。
「どうしたのです?リリアン?」
「何でもございません。」
「お前も、そう思うのか…」
うわ父様強ぇぇぇぇ。あの母様に対して普通って。無理だ、わたくしには絶対に無理だ。流石王様。ガクガクブルブルしていると、父様に話しかけられた。
「リリアン、頼みごとがある。」
「…はい。何でしょうか。」
「あやつを止めろとはもう言わぬ。だが、その被害にあっている物を助けてくれないか。」
「承知致しました。」
言われなくても、守るつもりだ。
荷物をまとめる。といっても、そこまでの荷物は無い。ネックレス1つのみの超簡単な荷物だ。だが、このネックレスには収納魔法がかかっている。また、自動的に圧縮魔法もかかるので、超便利なのだ。
「シルヴィ、いる?」
「はっ。何でしょうか。」
「…わたくしを、守って頂けませんか?わたくしは知恵も、力も無い、甘ったれた子供です。ですが、兄様にこれ以上のさばらせる理由にはいけないのです。ですが、アリアを守ろうとするわたくしに兄様はどんな害をもたらすか分からないのです。…調子がいいことを言っているという自覚はあります。ですが、お願いします。わたくしを助けてください。」
これが、わたくしの覚悟だ。兄様の手口は知っている。優秀な分達が悪く、恐ろしいことも。だけど、もう嫌だ。後手に回ってばかりで、何一つ守れやしない。嫌だ。私はわたくしは、守りたい。だから、お願い、シルヴィ。
「…はっ。このシルヴィ。我が命に変えてもあなた様をお守りする事を誓います。」
「頼みます。」
さあ、明日からまた、頑張ろう。