7話 リンのステータス
十七歳、黒髪ロング、スカイブルーの瞳、白みがかった肌に黒ワンピース、藍色の尻尾、そして顔のパーツの配置は綺麗に整っていて、身長は高すぎず低すぎずで、出るところは出ていて、引っ込むとこは引っ込んでいるな……うん
完璧だ! リンは俺の嫁にしよう。グヘヘ
裏切られ拘束されていた魔王の娘リンを助けた俺は共に森を抜けるために移動していた。
「さっきから疑問に思っていたけどこのまま真っすぐ行くと森を抜けれるのか?」
森を抜ける選択をした時からリンの指示に従って行動しているがリンは何も言わずに歩いて行くので分からないことだらけだ。
そして疑問を投げかけられたリンは何言ってんのとでも言いたげな顔でうなずく。
「この先には転移魔法陣が設置してある、そこに行けばこの森を突破できるわ」
「オッケー」
流石帰り道が分かると言っただけの事はある。
この場所には詳しいんだな。
「リンは今俺達が向かっているとこから来たのか?」
「私は真逆も方から来たわ」
え?
「じゃあなんでこっち来てるのさ」
「今向かっている方は人間の住処に一番近い場所に繋がってるの」
あーなるほど、じゃあ逆の方向は魔族の住処に近いのか。
もうリンちゃん様様だなー
一応どれくらいの距離があるのか知っておきたいから聞いてみるが
「このペースで後三日くらいの距離よ」
「遠お!」
リンはまた呆れた顔をして首を傾けてみせるがその傾き加減と表情が見事にマッチしていて事あるごとにその仕草を求めたくなる。
「近い方だと思うけど……」
この世界で徒歩三日の距離は近い方のようだ。
現代を生きていた俺達人間にこの距離はとてつもなく遠く感じてしまう……
「車、欲しいな……」
「ん?」
「何でもない、独り言さ……」
うっかり欲望が出てしまうが許してほしいね。
もしもこの世界に乗り物があるのなら絶対に手に入れようと誓った。
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「やっと半分か……」
薄暗い森の道なき道を歩き、長い道のりと困難の果てにやっとリン曰く半分の地点にたどり着いて今は休憩中だ。
ここまでではヒドイものだった、水は何とかなったが、リンは魔力の宿った物を中心に食べる種族だとかで、魔物狩りをしながら移動することになったり。
今考えてみれば解決方法はいくらでもあったりする。
「今頃だけどさ……リンの食料は俺の腕とかでもよかったりする?」
俺の腕はなくなってもすぐに生やすことができるし切れた腕には魔力も宿っていることを思い出しての提案。
だがリンは無表情を崩さずに答える。
「それはダメ」
またまたぁ、わがまままお嬢さんなことで……
「どうしてよ、魔力の宿った俺の腕はいくらでも御馳走できるのに」
リンが何を考えているのか分からいないが無表情だったリンは表情を暗くて答えた。
「ダメなの……タクヤを傷つけたくない……」
言い終わると同時に上目使いで目をキラキラさせて訴えてくる。
あーこれ本格的に惚れちまいそうだわ。
「そう言われると……参ったなぁ」
そんなリンの可愛らしさと優しさに嬉しさを覚えた俺はこれからの魔物狩りにより一層力を入れていきたいと強制的に心を入れ替えさせられてしまう。
「そういえば、リンが捕まっていたあの魔物、なんなんだ? 今までに見たことがないやつだったけど」
そしてふと思ったことを口にして気づく。
あ、まずったか? 思い出したくないよな……
あー、俺はなんて気の利かない男なんだろうか、と一人反省するがリンは俺の予想を裏切るドヤ顔。
「あれはウッドドーラの変異種よ特徴は獲物を捕らえて長時間かけて魔力を吸収し続けることと、魔法に耐性があることくらいかな」
意外と平気そうだ、くやしいがリンのドヤ顔ゲットだぜ。
「詳しいんだな」
「よく遊びに来てたからね」
そう言うリンは何かソワソワしている。その行動と顔はリンが何かを聞きたいといった顔と判断してみる。
「なんだよ、聞きたいことがあったら聞けって」
急に話を振られたリンはちょっとびっくりしたようだ。
「なんでわかったの!?」
「そりゃ、聞きたそうな顔をしてるからかな」
そう説く俺を見てリンは笑顔にかわる。だが女心が分からん俺には笑顔の理由など理解不能。
そんなことは置いといて笑顔のリンの質問に答える。
「じゃあ聞くよ?」
「おう、答えられる範囲でなら答える」
「私を助けてくれた時のあの魔法なに? 一度もああいうの見たことが無いからすごかった」
ああ、『ドレイン』のことね。
「あれは触れた対象の魔力やら養分やら水分などを吸収する魔法だよ」
それとなく説明混じりに答えたが、リンは不思議なものを見る目をしている。
「個人の魔力の最大値を超える魔力を取り入れたら体が崩壊してしまうのに何故吸収を行えるの?」
できるだけわかりやすく説明したいが難しいな。
「それは、俺の固有魔法のおかげかな、吸収したものを空中に逃がしたりして体が崩壊しないように制御してるのだよ」
「固有魔法って?」
それを知らないのか。
だったら。
「その前に、ステータスプレートって知ってる?」
「何それ? おいしいの?」
どんだけ食い意地はってんのよ。
「食べ物じゃねーよ、ステータスプレートはステータスつまり個人の強さを目に見える形で表してくれる便利道具だよ」
そう言い終わるとリンの目が輝く。
「私のステータス見てみたい、だめ?」
しかも上目使いだと? 別に上目使いじゃなくても見せてやるけどさ。
照れを隠せずにあたふたとしてしまう俺を見て楽しむリン。
それを見てからかわれたと思ったが嫌な気持ちには不思議とならない。
不思議なものだ。そう思いながらリンの申出に了解して準備を始める。
ステータスプレートの使用方法はプレートの表面に見たい対象の人の血を一滴垂らすことだ。
魔族でもできるのか不安だったがリンから血をもらいプレートに垂らすと意外にも成功した。
「よし、見てみろ」
そう言いながら俺も覗く。
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リン 17歳 レベル52
デーモン種
筋力 4840
抗力 4920
体力 4900
瞬発 4870
魔力 14600
スキル:魔法耐性Ⅳ・自動回復Ⅱ・魔力調整・応用魔法・多重魔法・第三の目・早業・魔力解放
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ま、魔力14600……
顎が外れるかと思う程の驚愕。
しばらくの間、言葉を発することもできずにいたが、なんとか言葉をひねり出す。
「その……なんていうか……バグキャラみたいだな……」
「それが私の誇り」
胸を張ったリンの二つの丘は別の何かを強調しているようにも見えるが今は気にしない。気にしたら負けだと思える。
そんなリンの要求はまだ終わらない。
「タクヤのステータスも見たいな」
俺は可愛いリンの願いを叶えることにした。
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タクヤ 16歳 レベル60
固有魔法:植物
筋力 1320
抗力 1260
体力 1380
瞬発 1420
魔力 1670
スキル:集中Ⅳ・魔力感知・魔力操作・多重魔法・特殊植物化・養分制御・魔力吸収・投擲・早業・高速移動・精密動作・生命感知・鑑定Ⅱ・感知範囲強化Ⅰ・イメージ強化Ⅰ・炎耐性
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「スキルではタクヤも私と同じバグキャラだね」
俺のステータスを見て少し困った表情のリンだったがほほ笑んでくれた。
「ああ、努力の産物だ」
今まで頑張ってきて良かったと心から思う。
ここでスキルの数も少なかったら微妙なフォローをされて更に心を痛めるところだった。危ない危ない。
そんなリンとの会話で心が安らぐ、一人で生活していた頃が懐かしい。意思疎通のできるかできないかだけでこうも違ってくるなんて思ってもいなかった。
「さて休憩はこれくらいにして先に進もうか?」
疲れもだいぶとれた俺はリンに問いかけたが、そこにはムスッとした表情のリン。
「まだ固有魔法のこと教えてもらってないんだけどー」
あ、俺としたことが忘れてた。
「あーそうだったな。固有魔法ってのは人間に使える魔法の種類だよ、稀に複数使える人もいるらしいけど、基本一人に一種類しか使えないらしい」
まあ、こんなもんかな。
「じゃあタクヤの固有魔法は植物かな?」
「御名答!」
リンも納得してくれたようでなによりだ。
俺とリンは休憩を止めまた転移魔法陣を目指し歩き出した。
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転移魔法陣のある場所はまだまだ遠い、道中で遭遇する魔物は俺達の連携がよく取れるようになってきていることもあって簡単に対処できる。まあほとんどワンキルなんですけどね。
そして今も魔物と遭遇していた。
「なんか転移魔法陣に近づけば近づくほど魔物の数が増えてるような気がするんだが」
俺の経験上、三時間で五回目の遭遇は少ないようでなかなか多いほうだ。
「気のせいだよ」
その気のせいって言葉は便利だよな。
「感覚的に今までで一番強いやつの気配だ……」
「わかった、集中して一気にいきましょう」
さて、今回はどんなやつかな?
俺はサーチを使いこれから遭遇する魔物の詳しいデータを探り絶句した。