6話 その選択は俺の運命を左右する
俺は植物使いの三木タクヤ、魔族との戦闘で仲間の一人を失った俺は別の仲間の故意的な攻撃により森をさまよう羽目に。
「あいつらに復讐してやる」
と誓い俺は強くなるための行動を起こしたが、俺に今までで最大の選択が迫られていた。
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湿気が多く蒸し暑い森の中で生活を始めて早くも三週間がすぎた。
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タクヤ 16歳 レベル60
固有魔法:植物
筋力 1320
抗力 1260
体力 1380
瞬発 1420
魔力 1670
スキル:集中Ⅳ・魔力感知・魔力操作・多重魔法・特殊植物化・養分制御・魔力吸収・投擲・早業・高速移動・精密動作・生命感知・鑑定Ⅱ・感知範囲強化Ⅰ・イメージ強化Ⅰ・炎耐性
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俺はこの森で最強になっているようだ。
「そろそろ森から抜けることを考えようかな」
俺は固有魔法の関係上水さえあれば生きていける、この性質は森で暮すには十分すぎるものだ。
――――背後に生命体を感知、魔物で種類はキマイラ、数は六体
考え事をしている間にキマイラが迫っていたようだ、だがこのパターンはいつものこと、普段通りの対処をする。
「くらえ『大樹』」
そう言いながら俺は片足で地面を軽く踏むと感知している全てのキマイラの真下から先端の尖った木が勢いよく生えキマイラが反応するよりも早くキマイラの腹部を貫き貫通し胴体を浮かせ固定するがまだ絶命には至ってない。
「からの『拡散』!」
キマイラを貫いている大樹を体の内側からさらに新に複数の木を枝分かれさせるように飛び出させ枝は防御力の無い体の内側から皮膚を突き破り体外へ飛び出し、キマイラは体から枝を生やしているような光景となりキマイラ達が絶命したのを魔力感知でキマイラの魔力の反応が無いことを確認し戦闘は終了。
三週間で俺に詠唱は必要なくなった。
イメージ強化のおかげで術名だけで魔法を使えて早業と多重魔法で敵を一気に殺すことができ、感知系スキルのおかげで死角はなくなり、攻撃できない範囲はない。
本当は術名もなしで使えるんだけどな。
術名を言った方がイメージ強化補正が掛かるみたいで、より精密な動きができるんだよね。
やはりこの世界を生き抜くためにはより使いやすいスキルを複数所持している者が有利になる。これはこの森で日々トレーニングしていて何度も思い知らされた結果たどり着いた答えだ。
邪魔が入ったがこれから俺は森を抜け出さなければならない。
「いざ森を抜け出そうと思ってもどこに向かえばいいのやら」
深い溜息が出てしまう。
とりあえず俺は川の下流を目指して歩き始めた。
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長い時間、感知スキルを使い続けながら歩きつづけ、その結果俺はある場所にたどり着いてしまった。
なんじゃありゃ。
そこには魔樹に体を埋め込まれ自由を奪われた少女が見え、その少女の顔は苦しそうな表情をしており、かなり危ない状況であることがひしひしと伝わってくる。
こんな状況じゃなかったら襲ってお持ち帰りしていそうだ。
この場においてふざけたことを思ってどうするか考えていると少女は俺に気づいたようだ。
「お、お願い……た、助け……て……」
少女の悲痛で消え入りそうな声が俺の中に木霊する。
そんな声で助けを求められてしまったら助けずにはいられない。
復讐を誓ったくせに俺は甘いやつだなと自分を笑いながらも様子を見る。
パッと見わからないが俺は魔力感知を使うと色々と状況が見えた。
魔力を魔樹に吸収されているようだな。
少女の魔力は少しずつだ減り、その代わりに魔樹の魔力が増している。
そこまで分かれば後は簡単だ。
「助けてやる、ちょっと待ってろ」
自分にできる精一杯の笑顔を少女に向けて少女の警戒をとき、結構危ない状態の少女を助けるために魔樹に歩み寄り軽く触れ魔法を行使した。
『ドレイン』
集中して魔法を発動させると触れている手を経由して魔樹から一気に魔力を吸い上げ俺の養分に返る。すると今まで活発に魔力を吸収していた魔樹は少女を地面に落としただの枯れ木となった。
そんな地面にへたり込んだ少女は黒いワンピースを身にまとっており俺はそんな少女に手をさし伸ばして声をかける。
「大丈夫か?」
地面にへたったままだった少女だが顔を上げて礼を言う。
「あ、ありがと……ございます」
その言葉で思ったより大丈夫そうだなと思った俺は少女を立たせて怪我をしていないか様子を見てふと思ったことを口にする。
「その……綺麗なしっぽだね……どこから来たんだい? なんという種族だい?」
人間だと思い救ったが人間とは明らかに違う部分があり困惑していると少女は俯いてしまい、少しだが震えているみたいだったので俺は大樹で切り株を二つ作りそこに腰をおろして答えてくれるのを待つ。
何分経ったか分からない時間ぼーっとしていると未だに立ち尽くす少女のか細い声が聞こえ耳を向ける。
「……私はリン……17歳……種族はデーモン種……ここにいた理由はお父様と一緒に遊
びに来てた……あなたは?」
で、デーモンだと!?
まったく聞き慣れない種族に驚き切り株から飛び降りるが笑顔は崩さない。
そして俺はリンと名乗る少女の質問に答える。
「俺はタクヤ、人間だ……訳があってこの森をさまよっている」
それから俺は疑問に思ったことを質問をした。
「君の父さんはいつ戻ってくるんだい?」
「ここには戻ってこないよ」
また何分も待つことなるかと思っていたが、俺の予想は大きくハズレ即答される。そのことでこれはいけると判断した俺は立て続けに疑問を投げかけた。
「何故あのような状況になった?」
「お父様に捨てられた、裏切られたの」
「裏切られた?」
「お父様が魔法を行使した途端に眠ってしまってたの……そしたらこうなってた」
「ここがどこだかわかるかい?」
「ここは深淵の森」
「帰り方はわかるかい?」
「わかる」
意外と元気に即答された。
「最後に君の父さんは一体どんなことをしてるんだい?」
「お父様は周りからは魔王様と呼ばれている、普段は人間を滅ぼすための計画を練っている」
な……に!?
魔王の娘が俺の目の前に!?
あまりにもの超展開に混乱する俺だったがなんとか二つの選択肢があると思いついた。
ここで始末してしまった方がいいのか? それともこのまま情報を聞き出すべきか。
この状況についてどちらの選択肢が最善かを検討していると俯きがちだったリンが顔を上げ訴えるような表情と雰囲気で語りだした。
「お父様は私をここに放置して行った。
あのままだと確実に私は死んでいた……助けてくれてありがとう……私がここに放置された理由……それは……私は生まれながらにして魔力値が高すぎた、そして一番の理由は必要以上の殺戮を好まないこと……そうお父様が誰かと話しているのを聞いてしまったから……それが原因だと思う」
だから私は助けてくれたタクヤに危害は加えない。
リンはそう言い切り俺を見つめる。
その少女の表情には不安よりも覚悟を決めたものに見え俺は返答に困まりあやふやな相づちを打って考えこむ。
「そうか……」
きっとリンはいずれ魔族を裏切る、それを懸念した魔王は行動を起こしたのだろう。
というかリンは裏切られたのではなく捨てられたの間違いだろ。
突っ込みたくなったが、我慢だ。
そして俺は悩む。もしこれが魔族の罠だったら……逆にリンの語ることが事実だったら……
罠だったら、俺はできるだけ遠くに逃げなくては。
事実だったら、俺はリンを守りたい……同情しているわけではない……ただ、同じ裏切られた者どうし何かを分かち合えそうだと思うからだ。
どうする俺……
俺にとってこれからを左右する大きな問題。この解答次第で俺は死ぬこともあれば生きることもある。
存在する選択肢は二つ……殺すか、生かすかだ
そんな思考を張り巡らせている中リンはおだやかな声で囁くように聞いてきた。
「私はお父様が嫌い……裏切者は死ねばいいと思っている、あなたは?」
再度リンの顔を見直すとリンの目は復讐心に燃えているようで、その目とその台詞を聞いた俺に迷うことなど無い。
「俺も裏切者は大嫌いだ」
そして俺は彼女と共に森を抜けることを選択した。
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闇召喚士ダンブルとの戦いから三週間、カナの死は戦死となりタクヤは己の弱さを嘆き逃亡したあげく死亡したとなっっている。
そして今日も俺、如月ユウはノブアキに砦の誰もいない屋上に呼び出された。
「カナが死んだ……タクヤが無能だったせいで……カナが死んだんだ! 俺達は悪くない! そうだろ?」
ノブアキの声が響く。
かれこれ何度目か分からないその言葉に対していつも通りに返す。
「ああ、俺達は悪くないよ……悪いのはタクヤだ……」
最近このやり取りばかりをしているような気がする。
俺達の中でタクヤの死は無力を償うためだいうことが暗黙の了解となっていた。
あの戦いの後からノブアキの様子がおかしくなっているようだ。何か後ろめたさを感じているように思える。
あの時俺は最低だった、ついカッとなってタクヤに魔法を放ってしまった、威力は抑えていたがタクヤはかなりの吹き飛んだ、それも見えなくなるくらいに。
許されることではない、がそれでもタクヤには謝罪をしたい。
そうでもしないと俺はずっと苦しみ続けることになりそうだから。
俺の推測ではタクヤがあのように吹き飛ばされたのはノブアキとコハルの魔法も原因の一つだと思われるが、それだけで狂うほどの後ろめたさを感じるだろうか? もっと別の原因があるのではないだろうか……
例えば、あの時されたカナの死んだ理由が嘘だったとか……
まさかな。
「なあ、ノブアキあんた、カナが殺されるときタクヤは何をしてたんだ?」
ダンブルを俺の炎の魔法で殺したときに砦側で蒼く輝いていた何かが紅く変わるのを見てノブアキは一人走りだした、あの時何故一人で行動したのかそして、遠くからしか見てないが少しタクヤと会話しているようにも見えた。
タクヤはカナを見殺しになんかしないという俺の中の希望的観測。
俺の推測が当たっていれば俺はどうしたらいいんだ? タクヤに会いに行くか? どこにいるかもわからないのにか?
一人で思考し続けてると怒鳴るような声を上げるノブアキ。
「前にも説明しただろ! 俺を疑っているのか!?」
そんなノブアキの荒い声が、俺に無実を訴えているようで違和感を覚える。
「いや、そんなんじゃねーよ」
取り敢えずな言葉でこの場を繕う。
やはりこいつ何か隠している……
そう思ったときノブアキは俺に背を向け歩き出し俺はそれを目で追う。
「もう帰る! 呼び出して悪かったな!」
「じゃーな」
たったこれだけのために呼び出される俺の身にもなれよ……
そう思わずにはいられないがノブアキの秘密を知るためなら安い物かと思えるから口にはしない。
ノブアキの姿が見えなくなると一人黄昏ながら呟く。
「後はコハル次第だな」
真実を知るために俺はノブアキとコハルを疑い警戒することにした。