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42話 別れ

 ある晴れた日。人間と魔族の二人組が旅立とうとしていた。いや、正確に言うならば旅の続きをするため滞在した村を出ようとしていた。


「荷物は……特に無いか」

「寂しいこと言わないで」

「異次元に収納しているわけだし、仕方ないんだよ」


 二人は多くの羽の生えた精霊達に見守られながら軽口をたたきあっている。

 昨日村を出ることをプウさんに伝えたところ多くの精霊達が見送りに来てくれたのだ。


「タクヤさんリンさん、村を救ってくれてありがとうございました」

「大したことはしていないさ」

「タクヤの言う通り」

「いえいえ、二人が来てくださったことはこの村にとっての幸運でした」

「そんなに言ったら調子にのっちまうぞ」


 相変わらず軽い俺にプウは笑いをこぼしている。

 そんな中俺とリンは別かれを告げた。


「それじゃあもう行くわ」

「行ってきます」

「もう行かれるのですね」


 だいぶ別れるのを惜しんでいるようだ。


「そう悲しそうな顔すんなって」

「そう言われましても……」

「いや、なんかあったら戻ってくるからさ」

「そ、そうなんですか?」

「ほら、俺達たまに失敗するからさ。その、匿ってもらいに……どう?」


 びっくりするくらいずうずうしい一言。


 プウも呆れたか?


 と思ったが問題無いらしい。


「その時は是非私たちを頼ってください。というよりも失敗しなくても偶には顔を見せに来てください」

「ありがたいな。まあ余裕があったら戻ってくるわ」

「本当ですか?」


 怪しげな表情で問うてくるプウに「余裕があればな」と釘をさしておく。

 そんな俺にプウは観念したのか笑顔で「わかりました」の一言。


「じゃあそろそろ行くわ」

「ん。行こう」

「もう行くのですか?」


 いやいや、このままじゃきりがないだろ。


「ループさせんなよ。それとも俺達を心配してんの?」

「心配はしていませんよ。心配する要素が見当たりません」


 ならいいじゃん。


「ただ……いえ、何もありません。いってらっしゃい」

「お、そうか……行ってきます」


 歯切れの悪いプウだったがまあいいや。


 俺とリンはプウ達精霊種に見送られ精霊の村を出た。

 滞在していた期間は短かったが何故か別れが惜しい気持ちにさせられる。


「なんか不思議だな……」

「ん? 何が?」

「なんか、こうしていると、魔族と人間が戦争をしているなんて思えなくてさ」

「精霊種が例外なだけ」


 うわ。この子ったらそんなこと言っちゃうのか。


 何とも言えない表情にさせられた俺に対してリンは真顔を保ち前だけを見ている。


「あの、リンさん?」

「なに?」

「ひょっとして今ご機嫌斜め?」

「そんなんじゃない」


 あ、これ機嫌が悪いときのセリフだ。


「なんか機嫌を損ねるようなことあった?」

「別にそんなんじゃないよ」

「そ、そうか」


 まったく女の子は分かりずらいな……。


 そんな状態の俺にはリンが「クウのバカ……」と独り言を言うのが聞こえたが触れないことにした。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「方向はこっちで間違って無いよな?」

「ん、こっちで合ってる……はず」


 この深淵の森から抜けるために俺とリンは転移魔法陣のある場所を目指して歩いている。

 今回目指すのは森に来た場所とは逆の方だ。

 俺とリンは人間の住処に近いとされていたブラドからこの森に入って今から行くのは魔族の住処に近いとされている場所だ。

 生憎、所持している地図に森に通じる場所がどこにあるのかが示されていないため、どこに転移するのか分からない。


「まったく……不便な地図だよな」

「ほんと」


 俺とリンは使いずらい地図のせいで大樹で他の木々に邪魔されない高さまで登り太陽と影の位置を確認しながらの移動をする羽目になっていた。


「おっと、魔物か……」


 未だに深部を抜け出せていないため、魔力サーチの反応が悪い中唐突に魔物が現れる。がその魔物の足元から大樹を生やし瞬く間に貫き殺す。


「雑魚すぎだ」


 これまで何回か魔物に遭遇しているが気分転換にもならない余裕さに驚くばかりだ。


 リミッター解除する前からこんなもんだったか……

 それでも魔法の出が早くなっているのも事実。


「今までの相手がドラゴンだったから仕方ないわ」

「そうかもな」


 取り敢えず歩き続ける。


「てか、リンは何処につながっているのか知ってるんじゃないのか?」


 よく魔王と遊びに来ていたと出会ったときに聞いたことを思い出した。


「魔王城からは離れた場所とだけ教えてあげる」


 やっぱり知っていたか。


「俺を楽しませたいのか」

「勿論。何処に着くか分からない……わくわくしない?」

「しないことも無いかな」

「素直じゃないの」

「これが素だ」


 やれやれといった様子のリンは何だかんだで楽しそうだ。


「ねえ、一つ思ったんだけど、いい?」

「なんだよ」

「なんでタクヤは圧倒的なステータスを手に入れたのに魔王城に乗り込もうとしないの?」


 嗚呼それか。

 その手も考え無かった訳じゃないんだが……


「魔王とその後ろにあるものを俺達は知らなさ過ぎているから動こうにも動けないんだ」


 この世界には魔王がいて、まだ誰も知らない神がいる。誰も知らないが故に神については謎だらけだ。

 俺はそんな正体も分からない存在を相手にしようとしている。


「それに俺が魔王を殺して、すぐに魔族と人間の戦争をやめさせるには俺を慕ってくれるある程度の力を持った複数の魔族の存在と話を分かってもらえそうな人間の存在が必要不可欠だと思っている」

「だからあちこちの町をまわっているのね」

「そーゆーこと」


 リンは理解をしてくれたみたいだ。


「だったら救世主は殺さないようにしないとね」

「どういうことだ?」

「だってタクヤに一番近い関係を持った人間はタクヤといっしょに召喚された救世主でしょ?」


 だから理解してもらえるという訳ね……悪くない考えだな。

 だけど、そう上手くいくとは思えない。


「それには一つ問題がある」


 俺のセリフに首をかしげるリン。


「俺はすでに一人の救世主を殺していることだ」

「う、それは……何とかなるわよ」

「それに俺はもう救世主共は信じない」


 俺の意見にリンはもごもごとなってしまい、挙句の果てには「もう、タクヤの意地悪」と言う次第だ。

 そんなリンに俺は「そんなんじゃねーし」と返して歩き続ける。

 先を急ごうとする俺にリンは俺の隣まで早足で追いつき並んで歩く。


「早く、変えたいな」


 呟く俺にリンは囁く。


「焦ってはだめ。私はタクヤと一緒に生きていれればそれでいい」

「それもそうだな」


 やっぱり、この世界はリンとじっくりと確実に攻略するべきだな。


 俺は早足になっていた足をいつもの速度くらいまで落す。

 移動の途中途中に出てくる魔物をリンは一掃し毎回同じ言葉を呟く。


「タクヤは私が守るわ……」


 その言葉を聞くたびに何故か不安を感じる俺だった。







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