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41話 人は己の弱点を知ることで成長する

「負けたな……」


 窓際に座り久しぶりの敗北の味を味わっていると後ろからひそひそと声が聞こえる。


「クウってあんなに強くなってたのね」

「驚いたわ」

「タクヤさんが手を抜いていたのでは?」


 俺とクウの決闘が話題になっているみたいだ。


「はぁ。何だったんだろうな……」


 優しく吹く風にあおられ空を見上げる。

 昔は負けることがしょっちゅうあったからこんな感情は久しぶりだ。

 いつから忘れていたのだろうか。


「もう敵いそうにないな」


 何度目か分からない溜息が出てくる。

 決闘が終わって直ぐにクウはどこかに行ってしまい俺の体に何が起きたのかを聞くことが出来ずかなり焦っていたが、時間が経つと勝手に異常は無くなり安心した。

 二十分間もの間、体の不自由を味わい疲れ果てていることもあって何かをする気にもなれない。


「タクヤ……」


 いつの間にか横に移動してきていたリンに声をかけられる。


「どうした?」

「体の調子はどう?」


 かなり気まずそうだ。


「問題無く機能している」

「そう……」


 会話が止まる。

 それでもリンは隣で俺と同じように空を見上げ動かない。

 どれくらいの時間をこうしてリンと過ごしただろうか俺は聞いてみた。


「なあ、なんで負けたと思う?」


 俺から切り出すことが意外そうな反応を見せるものの何も返してくれない。


 久しぶりだったな。数か月前ならこんな気持ちにはならなかっただろうさ。


 実際の数か月前は最弱で張っていた名だ。最弱ゆえに勝負に負けることはざらにある。

 負けることが普通だった俺はいつの間にか負けなくなっていた。その時から俺は負けるのを嫌うようになったのは。


「タクヤが負けたのは……慢心していたからかも」  


 自分と向き合う俺にリンの声が入ってくる。

 

「慢心か……」


 予想もしなかった言葉に驚きいつの間にか復唱していた。


「リンは俺とクウの決闘を見ていてどう思った?」


 と、聞いてみるとリンは直ぐに答えを返す。


「タクヤは油断しすぎ」


 ……俺が油断していた?


 そんなはずは無いと思っているなかリンは言い続ける。


「昔のタクヤなら後ろからの攻撃をかわした後にわざわざ自分の足でクウの足を払ったりしない」


 昔の俺は大樹で足を払っていただろう。そこが今と昔の一番大きな違い。とリンは言い切る。


 確かに状況が一気に悪くなった原因はその場面が一番強い。


 だが、


「それと俺が慢心しているのに関係あるのか?」


 はっきりしないことに苛立ち少し強めに問いかけた。


「タクヤは慢心していたからそんな行動をとったの。相手の動きが見えるようになって、どんな状況でも攻撃をかわせることが出来るという余裕がタクヤをだめにしたの」

「そーゆうもんなのか」

「タクヤは昔と違って弱くない……けど危機感とか無くなったタクヤは超弱い」


 リンも言ってくれるようになったな。

 いや、出会ったときからか……


「まったく……リンにはかなわないな……」


 突然の物言いにリンは首をかしげるが気にしない。


「よく俺のことを見てくれている」

「次世代魔王タクヤの妻になる女ですから」


 前にも同じこと聞いたような気がするが、まあいいや。


「気持ち次第で変わってくるんだな」

「そういうことよ。警戒したタクヤは強いわ。それにそのタクヤの傍にずっと私がいるから無敵よ」


 そんなリンのセリフを聞いて笑いがこみあげてくる。


「ふふ、あははは」

「なによ」

「いや。確かにその通りだと思ってさ」


 本当にリンが俺に及ぼす影響は大きいな。

 今回もリンに助けられた。


「俺はこれまでリンに貰ったものに相当する何かを返すことはできるのか分からんな」


 不思議と出てくる言葉。

 そんな俺の言葉を聞いたリンは首を振り一言。


「今もちゃんと貰っているから心配しなくていい」


 その言葉にはいろいろな意味が含まれていそうで複雑だ。

 "あまり気にしなくても良い"と、とっておこう。


「そろそろ元気でた?」


 スッキリとした気持ちになった俺ににリンは再び質問し確認する。


「ああ、元気になれた」

「ならよかった」


 リンありがとうな。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 クウとの決闘を終えて数日が過ぎた。

 この数日間に俺は精霊のいろいろな戦闘スタイルを観察している。


「やはりクウのムエタイがこの中じゃあ一番か……」


 ずっと見ているがクウが負けるところは一度も目にしていない。プウさんだって敵わないといった様子だった。


「まったく。クウはいったい何をしたらこうも強くなれたんだ?」


 さっぱり分からないといった俺にいつの間にか近くに迫っていたプウが話かけてくる。


「そろそろ、長の交代時かもしれませんね」

「な、なんてこと口走ってるんですか!」

「そ、そう驚かないでください」


 突然現れいきなり長の交代とか。驚かない人はいないだろ。


 そこまでの感想を抱いたときはじめてプウの顔を見て俺はさらに驚かされた。


「なんで笑ってんだよ」

「嬉しいからです」

「いやいや。冗談だろ?」

「娘の成長を見ることはとても嬉しいことなんです」


 そういうもんなのか?


「まあ、プウさんがそれでいいのなら俺は何も言いませんけど」

「そうしてください」


 何も言わないと言ったがやはり気になる所はある。


「で、なんで俺に?」

「暇そうだったからです」

「そうか」


 こんなに真剣な俺が暇そうに見えたのか。


「冗談ですけどね」


 ツッコもうとしたとたんにプウが言葉をはさむから上手くいかない。


「じゃあどうして?」

「それはタクヤさんが強いからです」

「ははは、俺はクウに負けましたよ」

「それはタクヤさんが油断していたからでしょう」

「そう見えた?」

「ただの予測です」


 誰の目からでも分かるわけではないらしいな。リンが特別なだけか。


「まあ、確かに油断に似たようなものがあったしな」

「やはりそうでしたか」


 何だか負け惜しみを言ってるみたいになったな。


「それでもタクヤさんは誰よりも強いということを忘れないようにしてください」

「あーそれね、それは考えないことにしたんだ」


 そう言うとプウは不思議そうな表情に変わる。そんなプウに簡単に訳を話すとすぐに納得してくれた。


「なるほど、事情は分かりました。負けないための作戦みたいなものですね」

「そうだ」

「でも、心の片隅にでもいいので覚えていてください」


 プウの目を見るとひきつけられる。これは聞き逃してはいけないものだと本能は察しているみたいだ。


「あなたは強い。もしあなたが、なんらかの影響で意志とは関係無い行動をして自分でその行動を抑えることが出来なくなってしまったとき、一番に危険が及ぶのはいつもあなたの傍にいるリンさんだということです。強いあなたを止めることが出来るのは、あなたよりも強い誰かです。私はあなたよりも強い者はいないと思っています、ですのでどうかこのことは覚えておいてください」


 プウは一気にすべてを話し息切れをしている。そんな様子をのプウを黙って見つめる。


 プウの言っていることは正しい。その通りだと思う。

 俺がリンを傷つけるようなことがあってはならない。


 そう感じた俺は今聞いた言葉を忘れることは無いだろう。







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