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40話 この格闘種族は

 眩しい光に照らされて目を覚ました。


「あら、お目覚めですか?」


 隣から聞こえる声を聞き流し、ぼやける目をこすりながら、だらだらと起き上がる。

 眩んだ目をゆっくりと開け辺りを見渡すと空には太陽が昇っていた。


「朝か……」

「おはようございます」

「いや、昼か……」

「ええ、昼ですよ」

「ん? 昼?」

「ええ」

「どんだけ寝てたんだよ!」


 かなりの時間の経過具合に驚き一瞬で脳がクリアになる。


「昨日の夕方から一日経った今日の昼までぐっすりと眠られていましたよ」


 プウの言うことを聞き流しながらも俺に抱き着いた状態で未だに眠っているリンを起こす。


「おいリンよ起きてくれ」


数回ほど同じことを繰り返すとやっとリンは目を開け体を起こす。


「ん……タクヤ……」


 ダルそうな声を出しながら眠そうな目で辺りを一瞥している。


「もう昼?」

「そうだよ」

「よく寝た……」


 あくびをし目に涙を浮かべたリンの頭を撫でているとプウが提案した。


「目覚めたばかりですが、道場に来てみてはいかがでしょうか?」


 早速な発言に俺とリンは一度目を合わせて異存が無いことを確認し合い頷く。


「じゃあ行こうかな」

「わかりました」


 そうして俺達は道場へ向かった。

 道場へ向かう際に偶にすれ違う精霊達から声をかけられたりするから、本当に出会った他の種族を抹殺するのか疑わしく思えてくる。

 俺が余計な影響を与えてないか不安だ。

 そんなことを考えているとあっという間に道場に着いた。


 外にいても道場の中からは気合いの篭った声や床に踏み込む音が溢れ聞こえてくる。

 そんな雰囲気の道場にプウを先頭にして道場の戸を開け中に入ろうとしたところでプウが道場全体に聞こえる声で言い放った。


「タクヤさんを連れてきましたよ」


 すると直ぐに稽古が止まり道場全体は一瞬静まりかえるがまた騒がしくなる。


「タ、タクヤさん私と決闘してください」

「なによ、私が先よ」

「リンは私と決闘したいよね?」


 皆が皆、俺やリンと決闘をしたがっていた。


 なんなんだろうなこの種族は。精霊ってファンタジーじゃもっとふわふわした可愛い感じのキャラだよな。

 なのに……


「あの、タクヤさん?」

「あ、おう。なんだ?」


 と、いつの間にか接近して来ていた精霊に袖を摘ままれていた。


「クウと決闘してあげてください」

「ん?」


 俺と? リンとじゃなくてか


「あの子ずっと技を研究してたみたいなんですよ」


 俺の技ね、大した技は持ってないんだが。リンの技じゃないことは意外だったな。


「どうでしょうか?」

「分かった……と言いたいところだが、そういうのは自分で言いに来るのが常識だと思うぞ」


 冷めた物言いになってしまったが、間違ったことは言っていないはずだ。

 その証拠に言いに来た精霊もどうしていいのか分からないといった雰囲気を出している。


「タクヤ……」


 そんなことを感じていると、後ろから声がかかった。


「——な!」


 突然後ろから呼ばれて慌てて振り返る。

 普段からサーチ系のスキルを使っていることもあり後ろに誰かがいることは丸分かりなのだが、今のは察知できていなかった。

 そのせいで派手な反応を示してしまう。

 

 魔力サーチはいつも通りに作動していたはずだ……なのに何故


 その異常な状況を分析しようとしたが声の主に目を引かれて思考は強制終了した。


「久しぶりね」

「……く、クウ……なのか?」


 声の主はクウだったが前に見たときと雰囲気がまるで違っていて疑わしく思う。


「そうよ」


 やんちゃな感じが一切感じとれない。そしてクウの目には今までとは違う何かが宿っているように見て取れた。


「久しぶりだな。あれからどうしてたんだ?」

「早速だけどタクヤ、私と決闘してよ」


 どうやら答える気は無いらしい。

 そんな様子のクウにリンが横から言葉をはさむ。


「タクヤが出るまでもないわ。私が相手をしてあげる。ちょっと見ないうちにだいぶ強くなったみたいね」

「今回はタクヤと決闘したいの」


 あっさり断られたリンは不貞腐れて


「なによ、ちょっと強くなったくらいで」


 リンの小者臭満載なセリフをさらっと聞かなかったことにしいると


「もう知らない」


 最後にそう言い残して道場の隅に移動して膝を抱えて座り込んでしまった。

 そんなリンには目もくれずにクウは再び俺に提案する。


「ねえ、どうするの?」

「あ、ああ。分かった。相手をしようか」

「そうこなくっちゃね」


 そうして道場全面を使った俺とクウの決闘が始まった。




「両者は前へ」


 プウの声に促され俺とクウは一定の距離に立ち決闘開始の合図を待つ。

 その間にも俺はどうやれば勝利を掴めるのか思考を張り巡らせる。

 

 やはりムエタイの構えか……


 初めてリンと決闘したときと同様のムエタイの構えを作っているクウ。

 そんな彼女に対して俺は少しだけ踵を上げ膝を曲げるそして瞬間の動きに対応出るように構える。


 お互いが探り合うなか開始の合図が響き渡った。


「始め!」


 プウの張りの入った声が場の張りつめた雰囲気に溶けていく。

 お互いにお互いを探り合う二人。


 二人はじわじわと間合いを詰めていき後二歩前に出れば攻撃できると思われる間合いに入ったときクウの姿が揺らいだ。


「消え——後ろか!」


 クウは一瞬で俺の後ろに回り込み絞った拳が背中を目指し高速で動く。がリミッターを解除してしまった俺からすると避けることは容易い。

 俺は直ぐに身を翻し攻撃のモーション中のクウの側面に回り込み姿勢を低くしてクウの足を払おうとするが、クウはそれを読んでいたのか自ら足を宙に投げ出しその勢いでクウは回し蹴りを繰り出す。


『魔力通し』


 ——フェイント


 とっさの動きに上体を反らして蹴りの範囲の外に逃げるが蹴りの軌道が変化し腰を狙った攻撃へ変わる。

 その蹴りに対してなすすべをなくした俺にクウの短く詠唱しながら放った蹴りが俺のに直撃した。


「ぐッ」


 重めの息を漏らすなか直撃したクウの足が俺の下半身だけを吹き飛ばす。

 下半身を失い落下運動をする俺に体を再生する時間を与えないとばかりにクウは連撃を繰り出した。

 蹴り足の逆足の踵で俺の肩を撃つ。

 何とかそれを受け止めホールドするがクウは唱えた。


『魔力阻害』


 ホールド状態のまま体を再生しようと企んでいたが普段は一秒とかからない再生が上手くいかない。

 想像もしなかった現象に躊躇った俺は地面にたたきつけられる。とっさに大樹を使い距離を取ろうとするがやはり魔法を行使できない。


『魔力波』


 もたつく俺を見逃すはずもなく、クウは頭から飛び込むような姿勢で魔力の篭った拳を繰り出し俺の胸の前で両腕で作ったガードを突き破り俺を道場の壁まで吹き飛ばし「それまで」とプウの合図で決闘は終了した。


 リンが駈け寄ってくるなか、腕も千切れて使えない俺は体の再生を試みるが未だに再生できずに地面にうつ伏せに倒れたまま動けない。


「完敗だったな……」


 意図せず声に出た言葉は静まった道場に消えていく。

 プウは決闘の開始位置まで戻り床に正座をして俺が開始位置まで戻るのを待っているようだ。


 体を再生できないから待ってもらってもな……


 虚しい状態の俺の元まで来てくれたリンは俺の状態を見て再生ができないことを察したのか俺を抱きかかえて開始位置まで運んでくれた。


「勝者クウ」


 プウの一言ですべてが終了した。




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