39話 出迎えられて
プウの家で休むことになり早速移動したところ俺達は待機していたルウに出迎えられた。
「あ、お帰りなさいです」
「ただいま」
相変わらずなゆったりとした雰囲気のルウは俺とリンがここに来ることを知っていたのか、もう昼過ぎなのにテーブルに二人分の料理がおかれていた。
「その、お母さんから二人が帰ってくるから何か食べるものを用意しておいてと言われて……その、良かったら食べてくださいです」
プウさんの計らいだったようだ。
勿論断る理由もないのでいただく
「ありがとう、丁度腹が減ってたんだ」
「いただきます」
俺とリンはルウの笑顔に見守られながらゆっくりと料理に手を付けた。
「そろそろ稽古の時間なので行きますね。タクヤさんとリンさんはゆっくりしていてくださいです」
料理を平らげ、床に寝転んでリンとじゃれ合っているとクウが唐突に切り出す。
「おう、いってらっしゃい」
「あともうすぐお母さんが帰ってくると思います」
「はーい」
クウは笑顔で手を振り出ていく。
「行っちゃったね」
「そうだな」
「私たちも後で稽古を見に行かない?」
「今日は何もしたくないし。ずっと寝ていたい」
引きこもりまがいなセリフで返してみるとリンはにんまりとした顔を作り覆いかぶさってきた。
「ちょっ」
「だらけてしまった人に喝を入れないとね」
そう言いながら服の中に手を入れてくる。
「言ってることとやってることがマッチしてないだろ」
「これも、大事な修行なのね」
「も、もうすぐプウさん帰ってくるってクウが言ってたろう」
そんなことどうでもいいといった様子のリンにはもう何を言っても無駄な気がした時。
「あら、お邪魔だったかしら」
漫画とかでありがちなセリフに助けられた。
「プウさん!」
「プウ……さん……」
プウは俺とリンの別々の反応に笑みをこぼしている。
「若さを持て余してしまっちゃって」
「あ、いやぁ」
「私とタクヤの愛の楽園」
「精霊種には無縁の行為ですので口出しはしませんけど。場所は考えた方が良いのではと」
ごもっともなことに「そうですよねー」としか返せない。
元はと言えばリンが始めちゃったことなのだが。
「洞窟でタクヤにしてもらったことが癖になっちゃったから仕方ない」
もう勘弁してくれ。
「人間と魔族がそんな関係になるなんてねぇ」
「こういうのって珍しいのか?」
質問しながらリンを元の位置に戻す。
「ええ、私は長く生きているのですが聞いたことありませんよ」
そりゃあ森に篭ってたら聞く機会も無いだろう
「今失礼なこと思いませんでしたか?」
「いえ。そんなことは」
心でも読めるのかと疑問を持ちたくなるくらいの洞察に「あははは」と笑っているとプウは口を開く。
「精霊種にも偵察を任されて森の外に出ている者もいるのですよ」
「ほう」
「旅をするなら魔族の町のどこかで見かける機会もあると思いますよ。まあ魔族ですら精霊だと気づかないような魔法をかけてあるので、あなた達でも見抜くことができないと思いますが」
「それじゃあ見かけたらラッキーだな」
「探してやるわ」
「ふふふ」
プウは試す様な表情になっていたが直ぐにもとに戻る。
「えー本題に入ろうかと思いますが」
初めから途中で稽古を切り上げて戻ってきた様子だったプウは俺とリンの前に座り真剣な眼差しを向けた。
「ドラゴンのことについてです」
「ああ、そのことか」
確かに村の代表のプウには成行きを詳しく話しておく必要がある。
「それで、どういったことをされてきたのですか?」
その質問に対して俺とリンは村を出てからのことを一から丁寧に話した。
「以上で俺とリンがやってきたことの全てだ」
最後にそう締めくくり結果の報告を済ませプウの反応を待つ。
「そういったことがあったのですね」
ずっと無言で俺とリンの話を聞いていたプウの第一声はそれだった。
「お疲れ様でした」
疲れるほどのことはしていない。要はドラゴンを見つけては殺しを繰り返してたまたま見つけた洞窟がドラゴンの住処の様な場所で、そこに潜むエレメント・ドラゴンと竜族の長を殺して洞窟を埋めてきただけだ。
「タクヤさんリンさん。あなた達のおかげでおそらくドラゴンはこの村に近づかなくなるでしょう」
「それは何故だ?」
「種のトップがいなくなったのです。ならば次のトップを誰にするかを決めるまではの話ですが」
そうか
としか言えないのが残念で仕方ない。
「そう気になさらないでください」
しょんぼりとした雰囲気になっていた俺達にプウの声がかかる。
無意識のうちに落としていた顔をふと上げるあとプウは胸を張っていた。
「あなた達が旅に出ている時に私達が何もしていなかった訳がないじゃないですか」
やっぱりか……だと思ってた。
「私達なりにリンさんの技術を研究していたんです」
「そうなのか? それでどうだった?」
プウはその質問に口元をにやけさせた。
「それがですね、たまたま村に近づいたドラゴンを数人であっさり迎撃できるほどでしたよ」
嘘だろ? 今まで十人以上でかからないといけない相手をあっさりと迎撃するだと?
何かの間違いだろうと聞きなおしてみるが返ってくる応えは一緒だった。
「研究お疲れ様です」
「いえいえ。これもクウのおかげです」
おっと久しぶりに聞いた名前だな。
「あれからクウはどうかしたんですか?」
「クウはタクヤさん達が出られている間に一人技の研究をしていまして。それでリンさんの技術を自分なりに改造したら、凄い威力の技になってそれを私達に広めたんですよ」
やっぱりリンの言った通りだったな。
それにしてもクウはいったいどんな技を編み出したんだろうか。
「クウはどこに?」
「おそらく道場で稽古中ですよ」
「そうか……」
「今から行きますか?」
「いや今日は行かないよ」
何故? といった表情のプウに俺はリンの時と同じことを告げた。
「今日はずっと寝ていたい」
「じゃあ明日ですね」
ありゃ? それだけか……
もうちょっと何か面白い返しを期待していたんだが。眠りたい気持ちは変わらないから黙っておく。
「それでは道場に戻りますね」
「いってらっしゃい」
「行ってきます……それと夜には戻りますので」
「わかってますよ」
そう、ここはプウの家なのだ、あとルウとクウの。間違いだけは犯さないぞい。
俺は決意をしながらリンと出て行くプウを見送った。
「俺達は寝ようか」
「そうね」
短い会話の後におやすみの一言を言い合って俺とリンは眠りについた。




