35話 エレメント・ドラゴン
『大樹』
右手より放たれた大樹がドラゴンの顔面を貫き瞬殺する。
「タクヤふぁいとだよ」
リンの声援に応えるように次々とドラゴンをただの肉の塊に変えていく。
現在俺は洞窟の中の大きな広い空間で大乱闘中だ。
そしてリンは休憩中。
リンが休憩中なのには理由があって、こんな洞窟の中で、リンが魔法を使ったら洞窟が崩壊しかねない。
生き埋めになるのはごめんだ、だから休んでいてもらっている。
「あと壁際の三体」
植物使いの俺を前にして壁際に行くのは悪手だったな。行くように追い込んだのは俺だけど。
とか思いながら俺はいつもの魔法を行使する。
『大樹』
そう唱えると三体のドラゴンの下の地面や上の天井、後ろの壁から大量の柱状の樹が生えてきて一気に串刺しにする容赦の無い攻撃で始末した。
「よし、終わったな」
ドラゴンの殲滅を終えた俺はリンの元へと戻る。
「お疲れ様」
「おう」
この程度なら余裕だな。
雑魚の相手に飽きてきたから強敵を探す。
「リン、強いドラゴンがどこにいるか分かるか?」
「ここ戻って行って二時間くらい歩いたところに一番強いのがいるわ」
「そうか。じゃあそいつ殺しに行こうか?」
「案内は任せて」
俺達は来た道を引き返して行く。
「そのドラゴンと黒竜とではどっちが上だ?」
「これから倒すのは黒竜の十倍は強いと思っていていいわよ」
そ、そんなにか?
ちょっと不安にさせられるが平然を装う。そんな俺を見てリンは「ふふっ」と笑っている。
うん、ばれてるな……
「タクヤの考えること全部分かる」
かーこの娘めー
リンの嬉し恥ずかしい言葉で顔を熱くさせた俺は照れ隠しのつもりでリンの頭をわしゃわしゃと撫でて歩く。
「もう、やめてよぉ」
とかリンは言いながらも嬉しそうにしている。
傍から見れば鬱陶しいくらいのピンキーな雰囲気を堪能していると空気を読まない一匹のドラゴンが曲がり角から現れた。
「空気を読め馬鹿野郎!」
と言いながら大樹で貫きそのまま大樹経由のドレインで一気に魔力と養分を吸収してドラゴン骨に変えた。
「あのドラゴン、サイテー」
リンは雰囲気をぶち壊されてご機嫌斜めな様子だ。
さっきのドラゴンのせいで俺はリンをなだめながら移動することになった。
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リンの案内の元迷路の様な道を歩き続けること二時間。
「この先よ」
俺とリンは俺がサーチで、情報を取得できる距離まで近づいていた。
さてさて、この先のドラゴンはどれほどか、リン情報によると黒竜の十倍は強いらしいが……
そう思いながらの魔力サーチを機能させる。
これ十倍どころじゃねーぞ。
広間までまだ数十メートルはあるが一つの魔力がピリピリと伝わってくる。
「リンも全力で戦ってくれよ?」
「わかってる」
一応確認しておいた。
よし、今までのとは違うんだ気を引き締めろ細心の注意を払うんだ。
と自分に言い聞かせながら広間に足を踏み入れようとしたとき
「なあ、気づいていたか?」
「今までまったく気づかなかった」
「そうか」
広間と通路の間に結界が張られていた。
この距離になるまで気づけないとは。
まだまだだなぁと反省しているとリンが短く言ってくる。
「タクヤいい?」
「任せた」
リンが今から何をしようとしているのかを察した俺は数歩下がり待機するとリンは詠唱を始めた。
「内に宿る魔力、魔の王の名のもとに全ての光を打ち消さん『暗黒波動』」
リンが魔法を行使すると張られていた結界が黒く染まっていき、全てが黒に覆い尽くされたころ、ガラス窓のように、パリンと音を立て砕け散り俺とリンは言葉を失った。
結界を壊す前まではただの洞窟だったが、目の前に広がるのは洞窟とは思えない全く別の空間。
「すげぇ」
その空間はとても広く、地面や壁、天井までが白く染まっていた。
「リン、魔力感知はどうだ?」
警戒の意図を込めてリンに調べてもらう。
「特に変わったものは感——」
リンが話終わる前に正面の空間にひずみが出来た。何かと思い観察していると
「気をつけて……この魔力量は……」
「これはマズいな……」
そこから五体のドラゴンが現れ雄叫びを上げた。
現れたドラゴンはそれぞれ赤、青、黄、緑、茶色の体で二足で立っている。
二足歩行とは初めてだな。
空間で反響しうるささを増す雄叫びが止み空間が静まる。
「一体ずつ確実に殺ろう」
「わかった」
簡単な打ち合わせを終えた時赤いドラゴンが火球を放ってきた。
「まずは赤いやつからだ」
俺とリンは火球をヒラリとかわし、ドラゴンに詰め寄る。
『大樹』
得意な魔法を行使しながら全速力で走りドラゴンとの間合いを詰めようとするが、ドラゴンはそれを許してはくれない。
他のドラゴンがブレスを放ち一定の間合いを保とうとしてくる。
俺が大樹でドラゴンを拘束しようとすると、ドラゴンが火球を放ってきてそれを邪魔する。
ドレインで始末しようと間合いを詰めるが、それぞれのドラゴンから水球やら雷の球が飛んできて結局、下がらざるおえなくされる。
「作戦変更だ。俺が黄色と茶色と緑色の相手をするから、リンは赤と青をたのむ」
「分かった」
予定を変更し後ろでサポートを担当していたリンを前に出す。
リンは飛んでくる火球に臆する様子を見せずに魔法を放つ。
「雷光」
放たれた雷光がドラゴンの放った火球を打ち消しながら進み、赤いドラゴンの胴体に直撃し爆発した。
「まずは一体」
リンは赤いドラゴンを瞬殺した。
一方俺は相手をするドラゴンの数が半分に減り、より簡単に間合いに入ることに成功した。
雷の球をかわし、黄色いドラゴンの体に大樹を張りドレインで吸収する。
黄色いドラゴンの魔力をじわじわと吸収していき、ドラゴンを殺す。
そして直ぐに茶色のドラゴンに目を向ける。
茶色のドラゴンは岩石を飛ばして俺の間合いの外で戦おうとしてくるが、そうはさせない。
『弾樹』
右手より放たれる樹の球が飛んでくる岩石を正確に粉砕していく。
弾樹を使っている時も俺は足を止めずにドラゴンとの間合いを詰めながら別の魔法を平行して使う。
ドラゴンと俺の間の地面から大樹を生やしお互いを見えなくする。
「あまいんだよ」
魔力感知でドラゴンの居場所が正確に分かる俺はドラゴンの下から柱状の大樹を生やし貫き動きを封じ、そのままドレインで仕留めた。
ちょうどその頃、リンも青いドラゴンを仕留めたみたいで形勢は一気に優勢となっていた。
「さっさと終わらせるか」
ふと呟いたときには緑のドラゴンは全身に風の結界を纏い完全に防御の姿勢に入っている。
「固そうだな……」
一筋縄では倒せそうにないことはパッと見分かるが、
「問題無い。私が結界を壊して、また張られる前にタクヤがとどめを刺す」
リンはそう言うなり、数秒間で魔力を集めて放った。
『無限光粒砲』
放たれた高密度の魔力の光線は地面を削りながら飛んでいきドラゴンを包み奥の壁を大破する。俺はとどめを刺すタイミングを計っていたが俺が攻撃をする機会はなかった。
リンの魔法により、ドラゴンは跡形も無く消滅した。
その光景に驚いた俺は言葉を漏らす。
「なんちゅう威力だよ」
リンは「凄いでしょ?」と、だけ返して黙り込む。
「どうした?」
「いや、その……」
普段はあまり言葉を濁さないリンが今回は言葉を濁した。
どうしたのだろうか? そう思ったとき、目の前の空間が歪みリンが言葉を濁す原因を作った正体が現れた。
リンは次にこれが現れる事を察知していたみたいだ。




