33話 強化されたステータスで
「私、タクヤは本日よりドラゴン討伐にリンと共に出かけます」
そう精霊達に伝えると皆は「一通り終わったら戻ってきてください」とのこと。
武運を称える声が響くなか、一人の少女の声が俺とリンの出発を止めた。
「私を連れてって」
声の主はクウだった。
俺は駄目だと断ったが、どうしてもと引かない。
そんな時、リンは私ともう一度を決闘をして自分で決めろ。と言うもんだから、早速決闘モードになった。
道場に移動し決闘を始める。俺は壁際に座り中央でにらみ合うリンとクウを眺める。
決闘の合図はプウがするようだが、この前のような態度ではない。
「はじめ!」
プウの合図で決闘が始まった。
クウはムエタイの構えを作り様子を見てる。対するリンは構えを作らず、さらに魔力も集めていない。
「ふざけてるの?」
とクウは叫ぶがリンは返事をすることはなくクウを睨んだまま動かない。
その威圧するような視線にクウ警戒を深めるが、前に闘った時と同じように攻める。
リンが対応することが出来なかった技。一気に間合いを詰め、右肘でリンの胸を突こうとしたが、リンに届くことはなかった。
リンは片手でクウの肘を払いもう片方の手でルウの顔を引っ叩き吹き飛ばす。
「これが私の実力よ」
吹き飛ばされたクウは何故? といった顔をしている。
ちょっと前に闘ったときは避けることすら出来なかった相手が、今は避けるだけでなく、カウンターを使い吹き飛ばしてきた。
それでもクウは諦めることなく立ち向かうが何度試しても結果は同じだった。
「私の勝ちよ」
リンがそう宣言したとき、クウは意識を手放していた。
俺はリンに何があったのかを知るために聞こうとすると、俺の心でも読んだのかリンは原因を答えた。
「魔族には月に一度、種族別に必ず行うある習慣があるのよ。それを経て魔族はステータスを強化しているの。人間で言うとステータスプレートを見ることよ」
つまり、昨日リンはステータスプレートで自分のステータスを見たから、一気に強くなったのか……
俺達のステータスにはそんな秘密があったとは……
周りの精霊達がいまだに唖然としている中、リンはクウに近づいてクウを起こす。
目が覚めたクウは「私はまだまだね」と言うと何処かへ行ってしまった。
「タクヤ、私たちも行こう」
リンはそう言い道場を出ていく。
「一通り終わったら必ず戻ってきます」
とっさに俺は集まった全員の精霊に聞こえるように言い、リンの後を追った。
「リンどうしたんだよ」
リンに追いついた俺は呼び止める。
「クウはたぶん修行しに出て行ったの」
そうなのか?
「私……クウに負けなくないの」
「リンが負ける?」
「今のままじゃ、直ぐに追いつかれる。だから……」
だから焦っているのか……
負けたくない、か
クウはやってくれたな。俺には出来ないであろう事を。
ライバル意識、ただそれだけなのに何か悔しい、が嬉しくもある。
この森に来て正解だったな。
「さあ、行きましょ」
「ああ」
魔力サーチでドラゴンの位置を把握しているリンの後に続いて歩く。
「どれくらい離れている?」
「二日歩く距離よ」
「そうか」
もう遠いとは思わなくなったな。
そう思いながら俺は歩き続ける。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「いたな」
数百メートル先にドラゴンの魔力を感じる。
ちょっと前までは、感知することも出来なかった距離を感知できるようになった。
「今回はドレイン無しでどれくらい戦えるのか調べよう」
「わかった」
つい先日にステータスが大幅に強化されたため、力試しをする予定だ。
試すことは二つ。
一つ目は、物理攻撃がどこまで通用するのか。
二つ目は、魔法でドラゴンを始末するのに何秒かかるかだ。
移動中の二日間に起こったことだが、移動を開始して初めて出会ったゴブリンに対して、リンは「雷光」を使った。そこまではよかった、そこまではいつもの通りだったが、それからが違いすぎた。
今まで雷光は野球ボール程度の大きさを持ったレーザーだったが、その時放った雷光はバスケットボールくらいのお大きさだった。
魔力の調整を間違えるなんて珍しいなと思った俺は、「力入れすぎだろ」と言ったもののリンは「今までより魔力は抑えていた」とのこと。
雷光の通った付近の木々は強すぎる魔力量のせいで、溶けた部分も見られ、無論それをくらったゴブリンの上部は綺麗に消滅していた。
と、まあ、それぐらい成長したため、ドラゴンも余裕で倒せるのでは?
と考えたわけだ。
「まずは私からね」
「おう、いつもの感覚でやってくれ」
俺の出した指示にリンは「任せて」と簡単に返し、数百メートル先の標的に手を向けて魔法を放つ。
『雷光』
光の速さで放たれた雷光は一瞬で障害など何も無いかのように木々を破壊していきドラゴンの魔力を消滅させた。
これを避けれるやつはいねーだろ。
敏捷値を24000まで上げた俺でもギリギリ見えるか見えないかのスピードだ。
敏捷値2000程度だと何が起きたのか理解もできないだろうな。
俺は雷光で穴の開いた木々の様子を見ながらドラゴンの元へ歩く。
ドラゴンの魔力は消滅しているから死んでいるだろう。
「やっぱりか」
ドラゴンの胴体には大きな風穴が開いていた。
「リン、どれくらい制御した?」
「え? いつも通りだったけど」
「そうか……」
ドラゴンの胴体には直径にして約一メートルくらいの穴が開いている。
普段通りでこの大きさにこの威力、リンからして初級程度の魔法でこれだから、問題なくドラゴンを倒せるだろう。
あとは俺だな……
出来れば、ドレインを使わずに倒せるくらいの力がついていれば、これからの戦いで苦戦することは無くなるだろう。
そうなってくれれば、本格的に魔王殺しの本格的な計画に取り掛かれそうだ。
いや、念には念をだ、魔王は強いもっと力をつけてからがいいのかもな……もう一度神でも吸収できたら、話が早いのにな。
そんな都合のいい話は無いか。と自分を笑ってしまう。
「よし、次のドラゴンを探しに行こう」
俺とリンは再びドラゴンを探し歩き出す。
探すと言っても、いる場所が分かっているからただ移動する。
「この先に一日くらい歩いたところにいるわ」
リンがいると、効率がいいな……
と思いながら俺はリンについていった。




