31話 突然やって来ました。
決闘から二日が過ぎた。
「あら、タクヤさんとリンさん、おはようございます」
「あ、タクヤお兄ちゃんリンお姉ちゃんおはよー!」
「タクヤさんリンさんおはよう」
「「おはようございます」」
俺とリンの好感度は上がっていた。
「今日もよろしくね」
「はい」
精霊達と稽古で共に汗を流していると仲が深まったみたいだ。
「今日は私からね、いいよね?タクヤお兄ちゃん」
「もちろんだ」
こうなったのも俺が一人の精霊に柔術を教えたことが始まりだった。
ちょっと背負い投げを教えてみると直ぐに習得して、別の相手との組手で使うから瞬く間に広がった。
おかげで俺は人気者だ。
そして、俺は召喚される前に知識として教えられていた技を試す。
いくらでも相手がいるし、大きなステータスがあるおかげもあって、召喚前はできるはずもなかった技が簡単に成功するもんだから、楽しくってしょうがない。
「あ、今日は木刀使うの?」
「まあな、挑戦がてらやってみるわ」
対する少女も木刀を手にしている。
「いざ尋常に」
稽古が始まる。
開始まもなく少女は木刀を振り上げ、振り下ろす。
見える!
俺は振り下ろされる木刀を刷り上げ少女の木刀の流し軌道をずらして回避する。
木刀を完全に振り切りった少女の頭に木刀をコツンと当て一本とる。
「ま、参りました」
「おう」
今回も楽勝でした。
「ねえねえ、さっきの何? どうやったの?」
と、いつもの流れになります。
教えると笑顔で別の相手を探しに行ってしまった。
現在は昼下がり。
俺とリンには休む暇なく相手が押し寄せてくる。
順番待ち状態かよ……
精霊達のものすごい向上心が俺達に休憩を与えない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
稽古が終わって道場に二人だけとなった俺とリンは床に寝転びくつろぐ。
「つ、疲れたぁ」
「私も……」
一人だけならまだしも、相手が連続で挑んでくるから流石に疲れる。
「なあ、リンは精霊に何教えたんだよ」
「精密な魔力操作……タクヤは?」
「技を少しだけだ……」
精霊達は組み手をするたびに強くなっているような気がする。
初めて参加したころは気を抜いていても対応できる程度だったが
それにしても、成長早すぎるだろ。
気を抜くと自分の教えた技にやられそうになる。
特に拳からいきなり魔力の塊が飛んできたときは焦った。
リンが教えたであろう技は拳の届かない距離からでも攻撃できるため厄介だった。
俺達も自主トレーニングしないと危ないな。
そう思った俺は提案するとリンは賛成してくれたからトレーニングを開始する。
とは言っても今は疲れている、だから今日のところは技の知識を教え合う程度にし就寝した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
空はまだ暗いころ道場で寝ている人間を目覚めさせる一人の魔族がいた。
「タクヤ……タクヤおきて」
リンの声がする。
「何か近づいてくる……」
リンの低いトーンで発した言葉で目を覚ます。
「どうした?」
「だから、強い魔力を感じるの」
強い魔力って言っても、俺の魔力サーチはこの森ではあまり、役に立たないし。
「どれくらい強い?」
「おそらくドラゴンよ」
とうとうきたか……
「場所はどのへんだ?」
「村の西側……もう遅いかも」
リンが言い終わるのとほぼ同時に轟音がして床が揺れる。
まさかのドラゴンですか?
そう思いながら、俺とリンは道場から出ると、ちらほらと精霊達が家から出てきていた。
俺は急いで西を目指し走り、数分もせずに到着しあたりを見渡す。
木々はなぎ倒されたり、焼かれて燃えていたりとなかなか酷い惨状となっていた。
これは酷いな……
そう思ったときに避難を呼びかけるプウの姿を発見し声をかけようと思ったが、ドラゴンがプウに向かって火球を放つ。
「プウ!」
プウに着弾したと思ったが、プウはしっかりと回避していた。
よ、よかった。
俺達に安心している暇は無い。
まだ、ドラゴンの注意がプウ達に向いている今だからこそ、絶好の好機。
そう考えた俺はリンに気がかりなことを聞く。
「リン、あのドラゴンの種類はなんだ? 今までとは何か違うような気がする」
「あれは黒竜といって、ドラゴンの中でも一番凶悪なやつよ」
そうか……俺にはドレインがあるから問題無いかな。
「わかった。今まで通りの手順でいこう」
「うん」
俺はひっそりとドラゴンとの距離を詰める。
リンが魔力を溜めて待機していてるから、俺がピンチになってもリンが魔法で助けてくれる。だから落ち着いていられる。
距離が詰まった。
俺はドラゴンの足元まで一気に飛び込み足に触れて魔法を行使する。
『ドレイン』
ドレインでドラゴンの魔力や生命力を奪うが、一瞬で奪いきることができない。
『破水』
突如リンの放った魔法が俺に直撃し俺を吹き飛ばす。
俺がいた場所に少し遅れて火球が飛んできて地面を焦がす。
あ、あぶねぇ
リンのサポートが無かったら今頃火だるまになっていたところだ。
俺はドラゴンとの距離が開いてしまったため、右手から大樹を生やし、ドラゴンを貫こうとするが、硬い鱗に邪魔されて、かなわない。
吸収力は落ちるが無いよりましか。
俺は貫くことを諦め、大樹をドラゴンの足に巻き付け大樹経由でドレインを使うが。
やっぱり、全然効かないな。
効果があまりない。
「リンもう一度距離を詰めて、ドレインで倒そう」
「わかった」
リンは返事をしながら『雷光』を使いドラゴンの注意を引き俺が動きやすいように援護する。
俺はその隙に大樹を使いドラゴンの背中へ移動したときに、リンが魔法を使いドラゴンの足元を沼に変化させ足を止めさせた。
ナイスだリン!
『ドレイン』
足をとられて上手く動くことのできなくなったドラゴンは、ドレインによって十秒くらいの時間で骨となった。
「よし、完了だな」
俺はリンの傍に戻り、プウ達に終わった事を告げに行くことにした。




