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29話 俺の実力

「勝負はついたな」

「ええ、クウの負けです」


 その言葉を聞き俺は止めをかける。

 クウは気を失っているため寝たきりだがリンは魔法を解き立ちあがり戻ってくる。



「お疲れさま」

「最悪だったわ……」


 それもそうだ、俺もなんて言ってやればいいのかさっぱりわからん


「とりあえず、身体洗ってこい」


 俺はそう言いながらリンのお尻をなでてルウに水場への案内を頼み行かせる。


「もう……タクヤの変態……」


 リンは頬を赤く染めてルウについていく。


「まさか、娘が負けるとは思ってもいませんでした」

「なめられたものだな」

「ドラゴンは殴る蹴る程度で倒すことはできません。強い魔力が必要です」


 だから、魔力のいらないこの闘いで負けるはずないと踏んでいたのか。


「魔力ってのは便利な代物だからな、それがあるだけで己の能力をいくらでも上げることができる」

「その結果が今回の勝敗の結果になったわけですね……何故最初から魔力で能力を上げなかったのですか?」

「あれは、リンに残された最後の切り札みたいなやつです、最初から使えるわけありません。それにリンは負けず嫌いですから」


そこまで言うとお母さんはため息をつき、クウの様子を見てくると言って、立ち上がり歩き出す。

俺は後姿を目で追いながら考える。


ここの精霊種は他の魔族と比べて頭が良いみたいだ。魔術師相手にわざわざ魔術で挑んでやる道理はないってか? そりゃその通りだ、俺だって剣の達人相手に刀で挑む真似なんて絶対にしない。やるなら銃による不意打ちだ。クウはリンを相手に魔術ではかなわないと判断し先手を体術とりそのまま圧倒したがまだ浅かったな、リンをなめすぎだ馬鹿野郎。


決闘の講評を勝手にしていると早くもリン達が帰ってきた。

魔法で乾かしたのだろう、服は綺麗になっている。


「お帰り」

「ただいま」


 リンはそう言いながら隣に座った。


「さっきの……とても強かったわ……」

「だろうな、この村の五本の指に入るくらいの実力をもっているらしいしな」


 ならば仕方ないかみたいな顔に変わったリンは介護されながらも歩いてくるクウを眺めている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 その後、この村では緊急集会が行われ、ここに住む全ての精霊が道場と呼ばれる場所に招集された。

 全員が集まったのは夜になってのこと、それまでは稽古やら見張りやらの仕事を終えてからの会議になった。


 俺とリンは決闘のあと直ぐに道場へ連れてこられて待機させられている。

 その間に道場で稽古中の精霊には嫌な目で見られ続けることになって精神的ダメージを受けたが、それでもあのお母さん精霊のおかげもあっていきなり攻撃されるなんてことにならなかったのが救いだった。


「ということで、一か月間この魔族と人間のこの村の滞在を認めようと思いますが異論はありますか?」


 なんとなく察していいたが、この村に住む精霊は五十人ほどでかなり少ないうえに、全員が女性という童貞野郎には耐えられない場所となっている。(俺にはリンがいるので問題ない)


「はい。そちらのリンと呼ばれる魔族の実力は把握しましたので滞在は認めますが……そこの人間は納得がいきません。即刻排除とはいかないのでしょうか」


 その言葉に周りの精霊も賛同する。


「一応恩人ですので殺すことはできません。それに、出て行ってもらうとドラゴンの排除に手が回らなくなりかねません。だから一か月なのです」


 異論を立てた精霊は言葉に詰まり黙り込むがやはり納得がいかなさそうだ。そこでお母さん精霊は提案した。


「先ほどの言いぐさだと、実力があれば、皆さんは認めると取れますがどうでしょう?」

「ま、まあ……そうですね……実力があり、ドラゴンを討伐できるものなら……」

「聞きましたかタクヤさん。あなたは昼にドラゴンを一人で倒したと言ってましたよね?」

「え、ええ。言いましたよ」


 応えて気づく。この女は悪魔だと。


「ならば、ここでその実力を披露してはいかがでしょうか?」


 その言葉に周りは大いに賛成のようだ。

 もう俺に言えることは「勿論です」の一言だった。

 こうして俺の実力を示すための闘いが始まる。


 この場には全ての精霊が揃って事の成り行き見ているだから好都合だ。どうせ実力を見るって言っても決闘だ、ならば負けなければいいだけの話だ。


「決闘で、村で選ばれた十人の相手をしてもらいます。降参の声または気を失った時点で勝敗を決します」

「十人同時に相手するのか?」

「勿論です。そうでなければドラゴンを倒すと言う方には手も足も出ないでしょう」


 これ、確実に俺をつぶす算段だろ、なんて腹黒い精霊だよ。


「それでは前へ」


 俺は促されるままに、道場の中央へ移動し相手を待つ。


「タクヤ頑張ってね」


 リンからの応援が入ったんだ。スタイリッシュに勝ってあげようじゃないか。


道場の中央に立つ俺、それを囲むように十人の精霊がいてさらにそれを残った精霊とリンが壁際に着座して囲む。


「えーと、あなたも闘うんですか?」


 目の前に立つお母さん精霊に問うが返事はない。


 この村の会議を仕切るんだ、この村で一番強くてもおかしなことじゃないな。


 クウのレベルで五番手だ、ならばと思い相手の一人一人の顔を確認していくと、気合満タンのクウがいた。

 リンに負けて悔しかったのか俺をボコりたそうにシャドウをしている。


「審判はわたくしが務めさせていただきます」


 とお婆さんが出てきてその人が任された。

 そして片手を上げて「はじめっ」と声を上げながら振り下ろし、十の精霊対一人の人間の決闘が始まった。




 木刀を持った精霊は剣道の中段の構えをとり、武器を持たない精霊は別々の武術の構えをとっている。相変わらずクウはムエタイの構えだ。


 俺は感知系のスキルを全開で使い死角をなくす。精霊たちはスキルの発動に気づいておらず、背中はがら空きのように見えているだろう。


 予想通りに後ろからその場でステップを踏んでいた空手使いのお姉さんが一足で飛び込み右手で突いてくる。

 スキルで丸見えなわけもあってストレートに放たれた突きもその場で右にステップしてかわし勢い余って俺の前に出たお姉さんの脚を蹴り転ばせ大樹で作った木刀を向けて威圧した。


 するとお姉さんは潔く負けを認めて退場する。

 残った九人はさらに警戒を強めてじりじりと間合いを詰め襲いかかった。一人は後ろからもう一人は左前からと同時に攻めてくる。

 左前からくる斬撃をかわすと後ろから迫る突きの餌食となるだろう。完成度は高く連携がしっかりしているため隙が見えない。それに普通の人間なら反応すらできずに斬撃を浴びることになるだろう。


 だが俺は普通じゃない。


 俺は木刀による斬撃を白刃どりで受け止め振り回す。さすがに受け止めるとは思わなかったのだろう、木刀の持ち主ごと、後ろから迫る精霊にぶつけて弾き飛ばし道場の壁に激突して動かなくなる。


 振り回すなか動く精霊が一人、攻撃の直後に必ずできる一秒もない隙を狙って動くムエタイ使い。

 首を狙って繰り出される肘を身体を前に倒してかわし、固まったムエタイ使いに大樹を伸ばし吹き飛ばし、伸ばした大樹でボクシングの構えをした精霊に横から薙ぎ払うが受け止められ、他の精霊が攻撃にでたから仕方なく受け止めている精霊を身動きの取れないように拘束して相手の数を減らす。


 正面からくる空手使いの攻撃は片手で捌き左からくる縦に振り下ろされる木刀は余った手で俺に当たる寸でのところで横から弾き木刀ごと体を外に向かされた精霊の下から大樹を生やして顎を下から突き気絶させる。そして古武術使いの突きが迫る絶妙なタイミングで顔面に大樹を打ち込み怯んでできた隙に回し蹴りを横腹にめり込ませ吹き飛ばす。


「あと五人」


 俺は自ら作った木刀を片手にムエタイの構えをとっているクウに向かって飛び込む、一歩踏みだした時点で、手にしている木刀をクウに投げつけ戦闘不能にする。まさかの投げつけに目を見開いて驚愕しているのがわかった。


「俺は予想の上を行くぜ」


 その台詞を吐き終わったのと周りの三人精霊が動きだしたのはほぼ同時だった。


 俺の脚と腕と胴を狙った同時攻撃がくる。が地面から大樹を生やし空中に飛んで逃げ次の行動に入ろうとする三人の意識を俺に集めたところで、回避に使った大樹から根を生やし、三人をあっという間拘束した。


「残りはあなただけですね」


 ただ、見守るだけの精霊たちのブーイングを鉄の精神で受け止め俺は視線をお母さん精霊に向けて身構える。


 俺は反則なんてしてないだろ。


「九人を相手にここまでやられるとは、嘘ではないようですね」


 その言葉を聞き、降参してくれるのかと思ったがそうはならなかった。


「この村トップの実力を見せてあげましょう」


 そう呟いたとき、その場の空気が変わった。


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