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2話 ステータス

 目を開けて視界に入る全てを一目見て絶叫した。


「なんじゃこりゃああああああああああ!」


  俺達は大きな石でできた建物の大きな門の前に立っているようで。上を見上げると空は紅く染まり、前を見れば地面は荒れ果てていて、とても人の暮らせる場所とは思えないような有様だ。


「魔界か何かかよ……」


 漏れた感情にあほらしさを覚えていると、俺に少し遅れてやってきたユウが目を開けると全く俺と同じ反応を示した。


 俺ってこんなにダサい反応したのか。


「あなた達……どうやってここに? そうか司祭様が言っておられたことが起きたのね……よかったわ……」


 パニックに陥った俺とユウは目の前のことに必死すぎて後ろにいる女性に気づけない。


「おいユウどうするよ、ここ絶対やばい場所だって! 人が暮らせるようには思えん! 俺たちは騙されたんだ!」

「待て待て待て待て待てええええ! 大丈夫だ……たぶん! きっとあのおっさんにも何か考えがあるんだ!」

「いやいやそんなバカな事あるか、ああきっとこのまま俺達は死んでいくんだぁ」

「諦めんなよぉ。まだ死んでない……」


  話している間にも何も無い空間に浮かび上がるように現れる人間に驚くことも忘れて考えを張り巡らせていた。

 そんな中ユウは


「ほら次々に人が現れたよ。きっと俺達みたいに扉の向こうからきたんだ」


  驚くどころか喜んでいるそぶりを見せるためなんだか落ち着く。


  次々って言っても俺達含めてもまだ5人だぞ。


「とりま、ユウの言う通りおっさんには考えがあることに期待だな」


  俺達の後に来た3人は皆俺と同じような反応をしてみせユウはなんだか満足そうに見物して楽しんでいた。


「あのー、ちょっとよろしいでしょうか?」


 ふと後ろから声をかけられて驚きながらも振り返るとあわあわとしている小さな女の子見つめている。


 背は小さめだが、胸はあるな。それに髪はポニーテールか合格だ……なんて失礼なやつなんだよ俺……


 あたふたする女の子をジッと観察しているとその子が再び口を開く。


「あなた方は司祭様から召還された救世主様ですよね?」

「「「……は?」」」

「ち、違うんですか!?」


 どう答えるべきかといった状況になり数秒の沈黙が続いたが意外と頭の回転が速いユウが対応してくれる。


「いや、たぶん間違ってないよ」


 その一言だけだったが彼女はとても安心したのか「よかった」と言いながらホットした様子を見せた。


 この子普通に可愛いな。


 そう思ったとき一人の女の子が質問を投げる。


「あの、ここはどこですか?」


 えーと、たしかコハルちゃんだったけ? 記憶にねーな。まぁいいや。


「説明は砦の中で我らの将が致しますので中へお入りください」


 そう言うと身を翻し門を開け中に入ろうとする彼女を俺は呼び止めた。


「俺達の他に後二十人いるから待ってくれ」

「え? こちらにお越しになる救世主様はたしか五人と聞いておりましたが?」


 ここに来るのが五人? 残りの二十人は別の場所にいると考えていいのか?


「どうするタクヤ?」

「ついて行こう。今は情報が欲しい」

「そうだな」


 俺は他の三人も俺の意見を合わせてくれたので、俺達五人は彼女の後を追った。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「よくぞ来てくれた、感謝するぞ」


 大きな椅子に腰を下ろした大柄で渋い系の男が感謝しているのかわからない態度で出迎えてくれた。

 ここは中庭みたいな広場になっていて、俺達の周りには野次馬が集まり隣の仲間と思われる人と何かを言い笑いあっている。


「おぬしらの名はなんと申す?」


 そんな中、先手をとったのは将とやらだ。


「人に名を尋ねる時は自分から名乗れと教わらなかったか?」


 つい挑戦的な物言いになってしまったがどう返してくるかな。


「これは失礼した、我名はサイホーン、この砦で最終決定権をもつ者だ」


 意外と紳士的だった。


「俺の名はタクヤだ」


 俺の後に他の四人が続いて名乗っていく。


「俺はユウ」

「私はカナよ」

「僕はノブアキです」

「私はコハル」


 コハルちゃんで間違ってなかったことに喜びを覚えながらサイホーンを見ると彼は満足そうに顎を摩りながら俺達を見つめ観察してくる。


 それにしても凄い筋肉だな、腕相撲でもしたら腕へし折られるんじゃないか?


 威厳に満ちた表情のサイホーンは観察が終わったのか椅子に座りなおすと説明を始めた。


「この世界は魔族に支配されかけている。人口は~~~」


 要するに、世界は魔族に支配されそうで、人口は約10万人程度で人が暮らしている場所は八つに分かれている。ここは八つに分かれたうちの一つで、ウォグリアという土地らしいそしてこの土地の人口は千人程度だそうだ。

 魔族の目的は邪魔な人間の排除、魔族の国の建設といいたところか。魔族の戦闘手段は十年くらい前までは単体による自由な戦い方だったが、五年くらい前からは統率者が現れて集団戦法に変わった。

 対して人間は十年前から同じ集団で確実に一体を殺す方法をとってきたが、魔族が集団戦法を覚えたことで通用しなくなってしまって現在の状況に陥ったとのこと、そして司祭様が俺達を召還したこと。


 一通り聞き終えた俺はある疑問を口にした。


「俺達の召還はどうやっておこなった?」

「わからない、司祭様が全ての準備をされたそうだからな」


 そうかそうか。


「じゃあ、俺達を召還した司祭様ってのはどこにいるんだ?」


 サイホーンの表情が曇る。


「司祭様は半年前に私たちに今日ここの砦の門の前で待つようにという言葉を最後に亡くなった……」

「「「………………」」」


 絶句!

 俺達をこの世界に召還した人は死んだ、つまり帰れなくなったことになる。

 それを察したのか皆の表情も暗くなったがそんな俺達に気を使ったのかサイホーンは明るいトーンで告げる。


「だが、この世界を平和にした者には人神から願いを叶えてもらえるという言い伝えがある」


 このとき俺達はその言い伝えは作り話だということを悟った。


「おぬしらには可能だと信じておるぞ? 見るからに体からあふれんとする力には驚いておる」


 説明にもあったが俺達はこの世界の人間よりも強いらしい。この世界にはステータスというゲームみたいなものがあり、ステータスは特殊なプレートで簡単に確認することができるそうだ。

 この世界の上級兵のステータスの平均は200くらいで魔族は種類にもよるが強くて上級兵の倍くらいらしい。


「あの、僕たちはまだ自分のステータスを確認してないんですけど」


 ノブアキ君今まさに俺が言おうとしたことを言ってくれた。


 そしてサイホーンは俺達をこの場所まで案内してくれた女性に指示をだした。


「そうだったな、おいティオ、プレートを持ってこい」


 俺の隣に立っているユウはティオという名前が聞けて嬉しそうにしている。


 こいつは夜にナンパにでも行きそうだ。


 ティオが帰ってきて俺達はさっそく自分のステータスを確認した。


~~~~~~~~~~~

タクヤ 16歳 レベル1

固有魔法:植物

筋力 300

抗力 300

体力 300

瞬発 300

魔力 300

スキル:集中

~~~~~~~~~~~


 まぁ、初期にしては強いな。


 というわけで好奇心旺盛な俺はユウのをのぞかせてもらった。



~~~~~~~~~~~~~~~

ユウ 16歳 レベル1

固有魔法:炎

筋力 700

抗力 700

体力 700

瞬発 700

魔力 700

スキル:索敵・炎耐性・威圧・肉体強化・魔力放射

~~~~~~~~~~~~~~



 ん? ステータスオール700とか強くね? 俺の二倍以上あるし。しかもスキル五個もあるなんてずるい。


 と、子供みたいなことを考えながら他の人のステータスを盗み見たがみんなステータスはオール700でスキルは五個持ちでそして俺は悟った。


 俺って雑魚キャラじゃね?


 えーと、ユウが炎でカナが水、ノブアキが風でコハルが重力と、カッコイイものだ。

 植物とかダサい……ダサすぎる。


 深刻な問題に悩んでいる横でカナ達はステータスを見せあっており、とうとう俺の方にも話が回ってきた。


「タクヤはどうだった?」

「俺か? 俺は、そのー」


 ユウを含めた四人が俺のほうを向き聞きたそうにしている。


「ステータスはオール300で固有魔法は植物だ」


 応えると笑いが起こった。


「あははは、オール300で植物使い!?」byカナ

「冗談面白すぎ」byコハル

「それは嘘ですよね?」byノブアキ


 皆が笑っているなかユウだけは何も言わなかったし笑うこともなかった。ただの無表情である。


 ユウお前ってやつは……


 ユウの対応に感動していると俺の手にあったはずのステータスプレートがなくなっていた。


「あっ」


 面白がったカナに俺はステータスプレートを奪い取られていたようだ。


「ほんとだ……オール300で植物使いよ」

「今まで指揮っといてそれはないよー」


 カナのセリフでこんどは全体で笑いが起こった、よく見ると護衛のやつまで笑っていやがる。

 今度の笑いは嘲笑が込められていた。


「今日は疲れただろう、部屋は用意してあるから食事の後は休むといい」


 サイホーンはティオに後を任せ、どこかに行ってしまった。


 食事の時にはもう俺達を知らない者はいないようで俺は救世主(笑)ということになっていることがわかった。

 あの部屋にいたサイホーンの護衛や見物人が広めたんだろう。

 憂鬱な食事の後俺達には個人部屋が用意されていてなかなか広い部屋みたいだ。

 このまま笑われっぱなしは不愉快だから明日からの訓練で強くなることを決意して俺は眠りについたのだった。


  俺は救世主(笑)として明日から皆と共に訓練する。



3月1日に読み返したところ十話以降の展開と矛盾した箇所があったので変更しました。

 人が暮らす土地数を五つから八つへ

 ウォグリアの人口を一万から千人へ

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