26話 深淵の森~深部~
深淵の森という名前は6話で登場しています
『弾樹』
俺の左手より放たれた弾丸がキマイラの頭を吹き飛ばす。
『砲光』
リンの右手から放たれた光の弾がフォレストコングの胴体に風穴を開けた。
全然減らねー
俺とリンは只今清掃中だ。
六日間の移動の果てにもうすぐ深部だと思った時、生命を感知し戦闘モードに突入した。
最初は今までより少し多めだなと思う程度だったがだらだらと始末していると徐々に増えていき、気付いた時には囲まれていた。
「あークソ、きりがねぇ」
悪態をつきながら、弾樹を使い魔物共を駆逐する。
「落ち着いてタクヤ……そう、これはトレーニングよ」
リンは楽しそうに魔法を放ちながら俺に注意した。
リンの言うように、これはトレーニングだと思えば少しは気が変わり弾樹以外の魔法も使って遊ぶ。
「今の俺ならできるはずだ!」
『爆散』
放った弾樹に仕掛けを施し何かとぶつかった衝撃で弾樹に亀裂が入り爆散した。
一発で近くにいた魔物も巻き込まれ吹き飛ばす。
それを見たリンはやれやれといった動きをして呟く。
「昔、捕縛爆散に失敗してやらなくなったと思えばこれね」
りんちゃんよ、人間は日々成長する生き物なんだよ。
爆散は普通より多めに魔力を集め爆発をイメージするとできた。その感覚で捕縛爆散に挑戦したがうまくいかなかった。
——大きな魔力を感知、位置は三メートル
「私も強くなりたいからね」
リンが大魔法を使おうとしていた。
「ちょ……」
制止を呼びかけようとしたが遅かった。
『偉大なる光』
その瞬間、リンの正面は森ではなくなった。
「あ、アブねぇ」
とうのリンは胸を張っている。
「私頑張ってみた」
「お、お疲れ様」
更地となった台地を眺めて唖然とする。
魔物共は怯えてもう近寄ってこなくなるなかリンによる蹂躙が始まった。
『雷光』の乱射で身を潜めている魔物でも胴体に風穴を開け爆発する。
突っ立ているのは空から降ってくる高密度の魔力によって焼き払われた、あまりにもの絶大な熱量に地面が割れガラス状になっている。
俺は隣で成行きを呆然と見守る。
ラグナロクの始まりだ……
たまに爆発の衝撃波で飛んでくる魔物の死体を大樹で受け止め地面に寝かせ、両手を合わせて土に埋める。
一時間して魔物の気配が消えたときに周りを見渡すと森の象徴である木々は荒れ果て、地は抉れていたりと悲惨な状態へと変化していた。
リンは悪びれもせずに達成感に満ち溢れた顔で言った。
「私は強くなりたいの」
どこまでも軽く聞こえた俺はどうするべきかもわからず自重しろとだけ告げるとリンはテヘッと拳を頭に当ててポーズをとる。
それやって許されるのは俺の前だけだぞ。
小悪魔的なリンを堪能して歩き出す。
ちなみに植物使いの俺は広い範囲の森の再生はしません。抉れた地面の整備に時間がかかりそうだからです。地球でいう学校のグランドの十面分くらいの範囲はありそうでめんどくさいという感情が強かった。
まあいいじゃないの、人間からしたら安全エリアみたいになってさ、緑色で森と一体化する魔物の処理に苦労しなくてすむさ。
そんな妥協点を見つけ出し放置した。
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「いよいよ深部っぽくなってきたな」
リンによる森林破壊事件の後、二時間ほど歩いたところで森の雰囲気が変わってきた。
俺が飛ばされ場所とは違いすぎるほどの魔力だ。
感知系のスキル無しで入り込めば数十分と持たずに力尽きることになると予測できた。
魔物の姿は見えないが魔力感知でそこにいるのがぎりぎりわかる。気配を消し木々と一体化している魔物が生命感知でなんとか識別可能。
俺の感知系スキルでもぎりぎりだな……
リンの言う通りここで修行すれば俺は絶対に強くなれると思った。
「タクヤ……」
「ああ、わかってる」
短いやり取りを終え俺とリンは踏み入れた。
元々魔力の濃い場所のようで、魔力感知には靄がかかったようになってしまい広い範囲を感知できない。
「おっと」
全力で無いよりましな状態の感知系スキルを作動させて透明な魔物の突進をかわす。
十メートル距離をとられるとサーチできなくなってしまうため着地点を予測して大樹を放ち串刺しにする。
ここの狼は透明になれるんだな。
「油断しちゃだめ」
リンの警告を聞きながらさらに深部を目指し歩き出す。
この程度の魔物なら急に襲われても対処できるが、警戒は怠らないつもりだ。
「なあ、相手は魔物だからドレイン使ってもいいよな?」
ここで禁止された魔法の使用許可をとる。
「うん……魔物に限っては使ってもいいわよ」
これでステータス強化が楽になる。
そう思いながら異空間から水を取り出し少し飲んだ。
ここに来る前にダージュに大量に貰ったものだから大事にしたい。
木々の生い茂った森の中を歩き続けているとある物を見つけた。
「花だ……」
この世界にもあったのかと思うほど久しぶりに見たような気がする。
「はな?」
「ああ、そうだよ花だよ!」
リンはそんなに珍しいの? とでも言いたげだが、そんなリンに語って上げよう花の素晴らしさを。
「花があるってことは、俺は花の能力も使えることを示しているんだ」
そう言いながら食性植物をイメージして手から分解液をだし近くに生えている草にかけるとじわじわと溶けていく。
「え? なにそれすごい!」
「すごいだろ! だがこれだけじゃないぜ、花があるってことは、きっと胞子とか使えるはずだ、花粉とかも」
あーなんで今の今まで思いつかなかったのだろうか。俺は植物使いなのにな……
そんな俺を慰めてくれるリンは天使のようだ。
「攻撃のバリエーションが増えたね」
ああ、そうだ。魔王殺しの手段がまた増えたんだ、今を喜ぶんだ。
——魔物!
顔を上げればゴブリンが戦闘モードに入っていて、棍棒を向けていた。
隣にいるリンは気付いていたみたいで、敵より俺を優先してくれたことを嬉しく思うがこの調子で大丈夫なのかと少し心配になる。
「先手必勝よね?『弾光』」
一発の弾丸がゴブリンの首の下に命中し反動で首を引きちぎった。
「えげつないな……」
「精度が上がると、いろんな軌道で放つことができるようになる」
野球でいうカーブとかフォークとかのこのと思っておこう。
いろいろな発見があった、先に進もう。もっと強い魔物を求めて。
そして見つけた、ドラゴンを……
「ど、どうしようか……めっちゃこっち見てる……」
「ど、ど、どうって……タクヤがやっちゃいなよ……」
「な、な、何いってんだよぉ」
「ほ、ほら、ドレインあるじゃない……」
いやいや、無理だって……近づけてねーって
「か、かっこいいとこみせてよ」
「あ、ああ」
俺達はドラゴンの凄まじい覇気にひるんでしまっていた。
でかい、それも今まで見てきた中で一番、ドラゴンの口から出る白い息がさらに恐怖をかきたてる。
「よ、よし、俺が相手だ」
そう決心した時ドラゴンはしっぽで木々もろとも薙ぎ払い俺を襲いにくるが大樹を使い空中に移動して回避し被害の大きさを確認すると、しっぽで薙ぎ払らわれた場所の木はへし折られたりと尋常じゃない威力があると思わせられた。
空中で様子を見ているとドラゴンが上を向き魔力を口に集めていた。
これ、マズイやつだ……
そう思ったときには集められた魔力は火球となりちょうど俺に当たる位置に放たれた。
もうだめだと諦めかけたとき、リンのサポートが入る。
『破水』
火球が俺を着弾する前に水の塊が俺に到達して俺を吹き飛ばす。
あ、危なかったぁ。
心の中で火球を逃れたことに喜びながら空中に逃げることの危険さを実感した。
「リンはそのままサポートを頼む」
「了解」
緊迫した雰囲気の中ドラゴンとの攻防は続いた。
近づけば爪で引き裂かれ距離をとれば火球が飛んでくる。
あとちょっとで触れる所までいくが及ばない、触れればドレインでイチコロにできるがそれを許してはくれない。
このままじゃあらちがあかない、最悪はリンの魔力切れによるじりびんでの敗北。
ここで悪手になりかねないが戦法に切り替えないとな。
「上から行くぞ」
「わかった」
そう短く作戦を告げドラゴンのしっぽによる薙ぎ払いを空中に回避して落下しながら火球を待つ。
予想通りドラゴンは火球で追撃に出たためリンが動いた。
リンが水の玉を放ち俺を下から押し上げドラゴンの火球を回避し、そのままドラゴンの真上に到達。そのまま落下して俺自慢の一撃必殺魔法を放つ。
『ドレイン』
ドラゴンの背中に当てた手におびただしい量の魔力が集まっていくのがわかるが今までのように一瞬では吸収しきれず数秒の時間を要し、その間ドラゴンは暴れまわり抵抗をするが全くの無意味のまま絶命した。
「倒したな……」
「そうね」
けっこう危ない戦いだった。
何とか戦い制して勝利を喜ぶ。
身体への悪い異常は感じないからドラゴンへのドレインは有効であることが幸運だった。
「さて、ステータスはどれくらい上がったのか」
これが勝利の後の一番の楽しみだ。
ステータスプレートを異空間から取り出しチェックする。
「さ、流石ドラゴンだな……」
確認すると俺のステータスは全て2000ずつ上がっており、スキルも強化されていた。
それをのぞきこんだリンの発言に驚いた。
「一番弱いドラゴンでこれだけ上がるのなら、まだまだ強くなれるね」
ん? 今なんて……
「今のが一番弱いのかよ! てかリンもさっき怯えてたろ」
「場の空気に合わせました! ああ可愛かったよタクヤ」
なんてことだ……さっきまでの死闘が序章だったとは……それに……
顔が熱くなるのを感じた。
「この、小悪魔め」
その後一時、俺はリンの言うことに耳を傾けなかった。




