25話 扉がない……あ、そうか
「それでは行ってきます」
そう言いながら朝食を振る舞ってもらい、腹を満たした俺とリンとダージュがリシールの見送る中ダージュ家を出たのが一時間ほど前の話。
現在は昼前
行きかう人々を尻目に転移魔法陣のある小屋の前に立っている。
「それでは言ってくる」
「ああ、行ってこい……やはり帰りは昨日話したみたいにこっちには帰ってこないのか?」
「予定を変更するつもりはないからな」
昨夜、俺達は修行の後にどうするのか予定を聞かれた。
森には転移できる場所が二か所存在し、その一方を通ってこの町に来たから、今度はもう一方に転移したいと思っている。
本来ここは人族の住処だった所で人間の領地と思い転移してきたが、すでに魔族の支配地となっていたから、次に転移する場所は何事も無ければ魔族の領地だが現在どうなっているかわからない。
そのわからないを調べるためと現魔王の支持率を調べるためにもう片方に行くことにした。
「不測の事態でも発生したら戻ってくるよ」
「そうか。でもまあ、お前達のことだから、不測の事態でもさらっと解決してしまうんだろうけどな」
信頼の意味が込められた言葉に微笑みを返し小屋の扉を開き中に入る。
相変わらず埃っぽいな……あと臭い……
酷い環境だが我慢する。
「そ、それじゃあ行ってくる」
「行ってきまーす」
そう告げ俺とリンは扉を閉め転移魔法陣を探す。
転移石は前に俺達が転移してきた場所から動いておらずすぐに見つけることができた。
「よし、魔力を流すぞ」
「わかった」
俺はリンと手をつなぎ転移魔法陣の前に立ち魔力を流し転移した。
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真っ暗な場所に立っている。
身体が重くなる感覚と共に一瞬だけ目が眩むほどの光を浴びせられると、さっきとは別の場所に立っている。これが転移するということだ。
『灯火』
リンが魔法を使い明かりを灯した。
「サンキュウー」
俺が礼を言うとリンはそそくさと歩きだす。
「地下はなんか気味悪いから……」
そう言うリンに合わせて俺もついて行くと、しばらく歩いて地上へ出た。
「変わってないわね」
地下から出た俺達は相変わらず大きな十字架を見上げ一か月ぶりのこの場所に変化がなかったことを確認した。
誰かがここへ来た形跡は無いな。
教会の中は落ち着いた雰囲気だがずっとここに居るわけにもいかないから、さっさとリンを促す。
「行くか」
短く言い歩き出すとリンは「はーい」と返事をして後ろをついてくる。
そして教会を出ようとしたときに思い出した。
「あ、扉直さないと……」
前ここに来たときにリンがこの開かなかった正面の扉をぶち壊してしまったから次に訪れたときに直そうと思っていたんだった。
壊した張本人のリンは何故立ち止まった? みたいに首をかしげていて扉は壊れていて当然というような表情をしている。
「ま、まあ。直そうとは思うんだが、あれだ物資が無いということでまた今度な」
とテキトウな言い訳を作り扉は直さず教会を出た。
物資が無いを言い訳にしたらもうこの扉を俺が直すことは絶対にないだろう。
「さ、さあ出発だ」
リンを先頭にして森の深部を目指し歩き出す。
やはり森になると魔力の供給量がまったく違うな。植物使いにとって森は最高のアドバンテージになっているみたいだ。
そんなことを考えて歩いていると感知スキルに反応があった。
——フォレストコングの生命を感知
『弾樹』
右手より放たれた拳くらいの大きさの一発の弾丸が回転をしながらフォレストコングの顔面に直撃し頭を吹き飛ばした。
「この辺の魔物は弱いんだよな」
率直な感想を述べるとリンが「当たり前」と簡単に返し歩き出す。
ここから深部に行くには徒歩で七日はかかるらしい。
その間に大樹での移動はこの生い茂った木々が邪魔なためできない。それが原因でリンは少しご立腹のようだ。当てつけのつもりなのか、リンの対処する魔物は骨すら残らないようにきれいに消されている。
そんなかんなで俺達の前に現れる魔物共を全て蹴散らしながら深部を目指し歩き続けた。
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「タクヤが生きていた……それにあの魔族は一体なんだったんだよ」
ノブアキは一人おびえる時が見受けられるようになった。
あの時の俺は何もできなかった。魔族を殺しているといきなり爆発が起きて何かと思えば、認識すらできないほどのスピードで魔法が飛んできて、ただそれをヒロトに守ってもらっていた……
ノブアキは最初はいらないと言っていたが、もしものためにと強く推すヒロトが用意してくれていた異空間防御のおかげで今の命があることに複雑な気持ちにさせられている。
あの時ヒロトと一緒にいなかったらすでに何回も死んでいただろうと……
俺の役目はただ強力な魔法を放ってくる魔族にあたかも避けているよに動きながら突っ込んでいくだけ。
魔族がさらに強力な魔法を行使した時に生まれた隙を突くようにヒロトは魔族の背後に転移し、攻撃を試みたが
攻撃は完璧に見切られ、手より放たれた続けていた魔法をヒロトのほうに位置を修正しやがった。そんなことできるやつは救世主でも見たことが無い。これはマズいと思った俺達は転移でシンとコウヘイのいる場所まで撤退したらコウヘイがボロボロになり倒れていた。
駆けよって息があることを確認しようとしたとき、腹の辺りに激痛が走りそのまま身体が宙に浮き拘束された。痛みを我慢し拘束を魔法で解こうとすると殴られてうまく魔法を使えない、そんな恐怖のなか俺達を拘束した本人を見ると俺達が殺したはずのタクヤだった。
驚きで声が出なくなり焦った。
やがて俺達と相対していた魔族がタクヤの所に現れてグルであるとわかった時に絶望した。
タクヤは俺達に復讐しに来たのか……
と思ったときヒロトが死んだ。タクヤの魔法によって殺された。あの魔法は一体何だったんだろうか、ドレインと唱えると一瞬だったがその後タクヤはいきなり苦しみだし俺を拘束する魔法が解けた。地面に落ちた。
俺はタクヤへの復讐の心で満たされていて、殺してやると思ってはいるが身体が言うこと聞かない。
隣にいた魔族に恐怖していたこともあったが傷が深かった。
それでもと思っていたら、シンが現れ俺の代わりにやってくれた。
俺は殺ったと思っていたが傷を負わせただけで致命傷には至らず逃げられた。シンは力尽き倒れて動かなくなり俺だけが取り残されたような感覚に陥る。
回復薬はあったからなんとか皆の傷を癒し歩ける程度には回復させたが今の精神状態では何もできそうに無かったから、最後の転移石を使い帰投した。
ノブアキはアールスの宿にある食事場にいる。
「あら、ノブアキじゃない」
「フッ!」
後ろからいきなり声をかけられて驚いた。
「そんなにびっくりしなくてもいいじゃない」
「す、すまん」
声の主はコハルだった。
「また思い出してたの?」
これで何度目だろうか、コハルからはこの頃よくそう言われる。
コハルなりの気づかいなのだろう、俺は肯定し何故わかるのか聞いてみる。
「まあな……そんなにわかるのか?」
コハルは微笑みながら優しく答えてくれた
「ノブアキの雰囲気でわかるのよ」
俺は雰囲気で察せられるくらいにわかりやすいのか
「あまり思いつめちゃだめよ」
「わかってる、けど」
思わず冷たい口調になってしまい慌てて訂正する。
「わかってる、心配かけてごめん」
コハルは笑顔のまま穏やかな声で「ならいいわ」と言い何処かへ行ってしまった。
強くならないとな……
俺は自室に戻った。




