24話 ブラドに到着
「いい朝だなぁ」
太陽の光で目を覚ました俺は隣で寝ているリンをゆすり起こす。
「ん……おはよ……タクヤ……」
「うん、おはよう」
こうして俺達の一日が始まる。
さて、昨日から移動を開始し今も『大樹』に乗って移動をしているのだが、今どのくらい進んだのか、まったく検討もつかない状況に陥ってしまったが問題ない。
「魔物はあまり出てこないし、これといった物は特にないから暇ね」
リンはつまらなさそうに足をぶらぶらさせている。
「そんなことしてたら落っこちるぞ」
と注意をしておくが意味をなさない。だって暇いんだもんとダルそうに返し、ゴロゴロと横になる。まるでペットでも飼っているような気分になって、ついついしっぽを摑んでちょっかいをかけようとするが絶対にしっぽだけは触らせてもらえない。
なんでもしっぽは大人になるまで触らせてはいけないんだとか。
人間と同じように魔族にも魔族の習慣ってのもあるわけだし余計なことはしないようにしているが、犬みたいにしっぽを動かされたら気になって仕方ない。それでも欲望に耐える俺ですけどね。
「あ! 魔物はっけーん。くらえー、一撃必殺『爆雷光』」
と、視野に入ったゴブリンに魔法をぶっ放して爆発させる。
後ろからいきなり頭を貫かれたゴブリンは何があったかもわからないまま殺され、そして爆発して肉片を広範囲にばら撒いた。
「いくらなんでもオーバーキルすぎるだろ」
「魔力が有り余ってるし、ほら新しい魔法の使い方の勉強になるわ」
と何度目かの同じ内容の会話をする。
あー早く着かないかな。このままじゃリンが残酷なことをしかねん
そう思い、俺は『大樹』のスピードを上げるのだった。
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「やっと着いたな」
「そうね」
太陽が沈みかけ空に星が見え始めたころ。長き道のりの果てに俺達はブラドに到着した。
かなり疲れているが堂々と正門から町に入ることにし『大樹』を解いて歩く。
やはり正門から入る人間の俺と魔族のリンというコンビは良く目立つようで町の魔族がチラチラとこちらを見てくるからうっとおしい。
まあ隣を歩くリンは別に気にしてないみたいだから気になっているのは俺だけみたいだ。
最初来たときはひどい目にあったがダージュのおかげなのか今回は騒動にはなっていないな
ダージュに顔を見せておきたかった俺はその辺を歩く魔族の女性に声をかけ、居場所を聞く。
女性はとても驚いていたがリンが隣に居たこともあって普通に会話ができた。
「さてと、広間に向かいますか」
会話を終えた俺はリンにダージュが居るという町の広間を目指す。
けっこうこの町はにぎわっていて、室内系の俺は行きかう魔族に目が眩みそうになるが我慢だ。
頑張って歩き広間に着いた。辺りを見渡し巨体の魔族を探す。
ダージュはでかいこともあってすぐに見つかった。
行きかう魔族をくぐり抜け近づいて声をかける。
「よう、久しぶりだな」
何かと振り返り声の主を見たダージュは驚きの声を漏らしたが。
「た、タクヤとリンじゃないか。久しぶりだな」
と気兼ねなく話してくるから、こちらも変にかしこまることもせずに返す。
「おう、久しぶり」
「久しぶりね」
その目にはもう人間がどうこうといったようには見えない。
初めて会った時とは大違いで大変嬉しく思う。
「えっと、旅に出たんじゃなかったのか?」
まあそう思うよな。魔王になるとか言いながら町を出たわけだし。
少し気まずいけど事実だし、あとちょっと人間には警戒した方がいいと警告してやろうと思い場所を変えた。
久しぶりなこともあるからいろいろと話をしたいが
「きて早々になんだよタクヤ」
「いやぁ悪い悪い」
と口では言うもののまったく悪いと思っていない。
さあて何から話そうかと思っていると先にリンに言われた
「人間が意外と強かったの、だから戻ってきた」
ダージュは呆けている、まさか魔族である自分を圧倒した存在に人間が手ごわかったと言われたのだ仕方ない。
「本当なのか?」
と確認してくるから、うなずき肯定する。
「嘘つく理由無いだろ」
「そ、そうか……なら何故戻ってきた? 吸収はどうした?」
「いや、吸収したら体内の魔力が暴走したみたいで、吸収はせずに強くなろうかと」
「そ、そうか……」
と、考えだすダージュ。
何かと思い、ダージュの思考が終わるのを待つこと数秒。
「そうか、森に修行をしに来たのか!」
「正解!」
今日は頭が冴えてますな。
ダージュの勘の良さもあり話が早く進む気配に喜びを覚えた。
「修行はいつから始めるんだ?」
と、早速だな……えーと、今日は疲れているからな
「今日はここに泊まって、明日の昼前に森に転移して修行を開始しようと思っているのだが」
と提案し、リンにいいよな? と顔を向けると微笑みながらうなずいた。
そのしぐさを確認してダージュに向き直る。
「そうか……なら俺の家に泊まっていけ」
まじでか、これはラッキーだな
「いいのか?」
「大歓迎だ。それにこの辺にはいい宿はあまりないからな」
「そうか……ならお言葉に甘えて」
ということで俺とリンは寝る場所を手に入れた。
「あまり大きな家じゃないから期待しないでくれよな」
とのことだが
「いつぶりだろうか、雨風を凌げる建物の中で一夜を過ごすのは」
感嘆の声が出てしまうほど嬉しかった。
「案内するぞ」
ダージュの案内のもと俺達はダージュ家に向かった。
広場を出て、しばらく歩くとダージュは一軒の家の前で立ち止まった。
「ようこそ我が家へ」
その家は見た感じだと本当に大きくはないが別に小さいわけでもない。
ダージュは早く来いとばかりに玄関までの少し長い距離を黙々と進む。
移動中に話を聞いたら妻と二人で暮らしているらしい。
玄関の扉を開け中に入りダージュは帰宅を示した。
「ただいま」
それは日本とまったく同じ習慣のようでなんだか親近感がわく。
「「おじゃまします」」
こういったことはちゃんとしておきたいからリンにも家に入ったら言うように伝えてある。
ダージュが靴を脱ぎ廊下を歩いていくから俺とリンも同じようにしてついていく。
やがて、一つの扉の前にたどり着きダージュがそれを開けると女性の声が迎えてくれた
「お帰りなさい」
「ああ、ただいま」
「あら、そちらの方は?」
「客人だ。えーと、この子はリンでこっちは人間のタクヤだ。今日は泊めてやってくれ」
軽く紹介され再びお邪魔しますと会釈をする。
ダージュの妻は少し驚いた様子だったがすぐに穏やかな雰囲気に戻り話しだす。
「あらまあ、あなたがタクヤさんでしたのね。ダージュがお世話になってます。あなた達のことはダージュから聞いておりまして会ってみたいと思っておりました」
「そ、そうですか……えーと」
「妻のリシールだ」
ダージュの紹介があってよろしくねっと微笑むリシール。
「お客さんが来るって知らなかったからあまりいい物は作れてなくて、お気に召すかどうか……」
「い、いえ。そんなお気を使わずにいてください」
こんな感じで今晩を過ごし明日に備えるのだったが
「魔族って就寝時間がはやいんだな」
「種族にもよるわ」
「そうなのかぁ」
家の関係上、リンと俺は一緒の部屋で寝ることになり今日は寝ることができるのか不安になる。
ここはダージュの家だ、理性を保つんだ俺
心と必死に戦っている俺に寝相の悪いリンが後ろから抱き着いてくる。
やわらかいの当たってるってやばいって
その戦いは朝まで続き俺は戦いに勝利した。




