23話 やっと手に入れました
別れを告げようとしたときに思い出した。
「早速ピンチだから助けてくれ」
そう言うと二人は黙り込む。
そ、そんな冷めた反応しないでくれよ。まあね、ちょっと調子に乗ってかっこつけたりしてたけどさ。思い出しちゃったもん。仕方ないやん。
未だ無表情の二人だが、気にしたら負けだという気持ちを持って言う。
「地図をくれないか?」
助けてと言っておきながら、その内容が地図をくれとのことで二人は目が点になったが、俺は負けない。
「これからの旅に地図は必要に不可欠な物なんだよね。今までは伝聞を頼りにしてたけど、全部が全部真実とは限らないじゃん」
だからさ、とばかりにイスカルに頼んでみる。
勿論yesが返ってきて、取ってくるからここで待つように言われて待機することにした。
残された俺とリンはその間に話し合う。
「メリクスに行くんじゃないの?」
「いや、流石にもう無理でしょ」
「まあそうよね、一人殺したからね」
じゃあどこ行くの? と顔を傾けて聞いてくるリン。
「魔族の国か、森に行こうと思っている」
「なんで?」
「森では鍛えるためで、魔族の国に行くのは魔族にはドレインが使えるのかを試すためかな」
とそこまで言うとリンの表情は曇りやがて口を開く。
「これからドレインは使わないで」
何を言うのかと思えばそれだった。
確かに今回の戦闘でドレインを使い危ない状態になったがちゃんと生きている。だから次もなんとかなると思っていたが、リンはそういうわけにはいかないらしい。
「ドレインを使った後ね、タクヤは体内の魔力を制御できずに暴走させていたのよ」
ふーんとばかりに聞き流す俺。
「体内の魔力暴走は死に至ることが多いの」
わかる? と目で訴えてくるリンが何を言いたいのかやっと理解した。
「そうだったのか……ありがとう」
ま、まさか命の危機に瀕していたとは。かなり危ないところだった。
「知らなかったの?」
あ、また顔に出てたかな?
「まあ、そうだな。知らぬが仏なんて言葉もあるわけだし」
「意味わかんない」
それでいいのさ。
さて、じゃあ次にどこへ行くのか検討するが、魔族の国に行く理由は無くなったから。
「消去法で森に戻るか」
ということになる。
「そうね。あの森は浅い部分には強い魔物はいないけど、深い所にはかなり強力なものもいるからね修行にはとても有効かもね」
え? 修行に有効だと? 俺はあの森で最強になったはずだが。
「俺達が歩いたのは深い場所だよな?」
確認してみるがリンは何言ってんの? とばかりに首をかしげて述べる。
「深い所というのは、ドラゴンのいる所を指すわ。タクヤの飛ばされて来たのは浅い場所じゃないの?」
はいはい、首をかしげた時点でやばいやつだと予想してましたよ。でもねドラゴンはないんじゃないかなー。いくらなんでもファンタジーすぎるだろ。それにドラゴンのいる森で一か月ほど生活していたなんて……ホント知らぬが仏様だなおい。
いろいろと言いたくなることはあるがポーカーフェイスだ。
「ちなみに、なんで俺が飛ばされて来たのが浅い場所だと思った?」
「え? 森の深い場所に川なんて無いでしょ」
そうなのか? 流れて無いのか? 初耳だぞ。
「あの森では当たり前のことよ」
その説明で力が抜ける。
最強だと自惚れていた時期もあったな。
反省しているとイスカルが戻ってきた。
「お待たせしました」
と言いながら地図を差し出すから礼を言い受け取る。
「まさか地図を持たずに旅をされていたとは、驚きです」
「ははは、お金を持っていなかったものですから」
と他愛無い会話で締めくくり別れを告げた。
「近くを通られるときは寄って行ってください」
「ああ、そうするよ」
そして俺はリンに森へ戻るために、森へ転移することのできる町に戻るという計画を伝えて町を出た。
その町にはダージュがいて地図によるとその町はブラドって名前みたいだ。
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『大樹』
町を出た俺は大樹を地面から生やし、移動の準備をする。
「しゅっぱぁつ」
と元気な声を上げるリン。
ここに来るときは一度リグレットとアールスによったが、今回はよらずに斜めに移動してブラドに向かう。来るときは急がば回れでアールスによったが今回は急ぐ必要もないのでこれでいいと思う。
「ダージュは元気にしてるだろうか」
昔の俺だったらこんなこと思いもしなかっただろうこの台詞。リンの影響があっての俺だな。
「ねぇ、早く行こうよ」
もの思いに浸っている俺をリンはせかしてくるから移動を始める。
徒歩で十三日という距離だが、斜め移動だから九日くらいで日が昇っている時間帯は大樹に乗って移動するため、五日くらいでリグレットに到着できるだろうと目安を立てておく。
一応今は夜だが町とは距離をとった場所で眠りたいから頑張って魔法を使う。
それにしても町に来て半日で別の町を目指し移動を始めるなんて、なんて精神してるんだろうな。
とか考えていると、もうすでに町が見えなくなるくらいの距離に到着したから大樹を解く。
リンはえーという顔を作っているが、俺の魔力は無限じゃないことを理解してもらいたい。
そんなかんなで寝る用意を始める。狙って来ていたわけじゃないが丁度いいくらいの樹がたくさん生えている場所だから寝る場所には困らない。
俺とリンは適当な樹に上り「お休みといい」眠りにつく。
今日はいろいろなことがありすぎたこともあり、あっさりと眠りにつくことができた。
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先ほどノブアキとコウヘイとシンがボロボロになって帰ってきたそれも、緊急用の転移石を使ってだ。
最初は何事かと思ったら、ヒロトの死とタクヤが生きていることを告げられた。
その時そこにいた誰もが驚愕し次々にノブアキ達に質問を投げていた。
タクヤが生きていた。
最初それを聞いた時は嘘だと思ったがノブアキ達の怪我と真っ青な顔で語ってくる姿をみて、事実であると信じることにした。
一通り話を聞いた俺はコハルに連れられ食堂にいる。
「生きていたとわね」
と隣で語るコハル。
一応ここはアールス大聖堂の食堂だから人の生き死にを語れるような場所じゃないが、周りには誰もいないからいいようにできる。
「でもまさか、ノブアキ達をまとめて追い詰めあのヒロトを殺すことができるなんて」
よくも裏切ったなとでも言いたげな表情で語るコハルに違和感を感じる。最初にタクヤを殺しかけたのはあんた達だろと。
「でも、それだけ強くなっているなら、タクヤが生きていても不自然じゃないよな」
「ほんとね、一体どこで何をしていたのかしら」
ノブアキの話を聞いた時タクヤが生きていることに喜びを覚えた俺がいたが、それとは別に仲間を殺されたことへの嫌悪感も生まれた。
タクヤが俺達を裏切り者だと思っていても仕方のないことだとわかっている。だがそれでもヒロトを殺す必要は無かったのじゃないかと思いもする。
「これからタクヤはどうするんだろうな」
「知らないわよ」
タクヤは仲間を裏切ったため俺達に殺されたとなっているが、生きており、さらにはこの町最強の救世主であるヒロトを殺したんだ、もう誰も味方にはなってくれないだろう。俺を除いてはな。
タクヤにはヒロトを殺した罪をちゃんと償って貰うつもりだ、だが何かしらの事情があったに違いない。俺はそう信じるぜ。
「タクヤと一緒にいたと言うしっぽの生えた魔族というのも気になるところよね」
と言うコハルに曖昧に返し
「明日ヒロトの葬儀があるから、もう寝る」
と告げて席を立つ。
「お休みなさい」
と後ろから聞こえてくるが振り返らずに自室を目指す。
タクヤに直接会って話をしなければ……だが、魔族を連れていたということは、魔族側についたのかもしれない……
どちらにしろ、俺には力が必要だ。力が無いと何処かでタクヤと出会った時に罪を償わせることができないかもしれないからな。
この日よりユウは力を求めるようになった。




