22話 撤退
やっと、たどり着いた……
普通に歩けば数分の場所まで脚の怪我もあったせいで何分もの時間をかけてやっとイスカルと話し合った場所にたどり着いた。
リンは大きな扉を片手で開き中をのぞくが誰もいない、とりあえず安全を確認し中に入りソファーがあったのでそこにタクヤを寝かせて様子を見る。
だいぶ治まってきてはいるみたいだけど、まだ身体の中で魔力が暴走しているみたいね……
ここに着くまでにリンはタクヤの症状を見て時間経過で治るものと予測した。その証拠に呼吸は安定してきている。
「ねえタクヤ、聞こえる?」
タクヤに反応は無い。
寝てるのね……
あの場所を離れる時はあまりにもの痛みに地をのた打ち回るタクヤだったが、痛みに耐えることができずに気を失ってしまった。
「水は……」
少しタクヤの眉が動いたように感じたリンはいつタクヤが目覚めてもいいように飲み物を探す。
「あったわ、これ大丈夫なやつよね?」
数分程して透明な液体を探し出したが水なのかわからない。無いよりかはましということでタクヤの寝ているソファーの近くに置いた。
これからどうしようか……
イスカルは今頃兵の準備や町の魔族の避難に勤めてるに違いないと予測していたが、もしかしたと思うとここに来ずにはいられなかった。
イスカルを初めて見たときタクヤは気付いて無かったみたいだけど、かなりの上位の回復魔法を使えると感じ取った、これもステータスを見たときにわかった第三の目というスキルのおかげなのかな?
それはいいとして、タクヤの回復を待つ間に何をすべきかよね。救世主共はきっとイスカル達がなんとかしてくれるでしょう……一応相手には多くの傷を負わせてるけどイスカル達は敵うのかな? まあ私にはタクヤさえ生きていてくれるなら他の命がどうなろうと関係無いけどね。
特に何をするべきか思いつかなかったリンは身体を休めるためにタクヤの向かいのソファーに横になった。
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「ん……ここは?」
リンは横になって小一時間が経ちタクヤは目覚めた。
「おはよう、タクヤ」
「うん、おはよう……」
俺はそう言いながらダルそうに身体を起こし目をこする。
「ここは、イスカルと話をした場所よ」
「そうか」
それを聞き状況を察し礼を言う。
「救世主はどうなった?」
と聞くがリンは俺をここに運んでから一歩も外に出てないらしい。
「それよりも体調はどう?」
「ああ、問題ないよ。なんか身体が軽くなったようにも感じるくらいだ」
そう言うとリンはならよかったとばかりに息を吐いた。
これからどうしようかな。
また、救世主がまた暴れ出す前にとどめを刺しに行くべきか、それとも町の魔族の様子を見に行くか。
そもそもあれだけの傷を負わせたんだイスカルに任せても問題ないはずだな。
そう判断した俺はステータスを確認した。
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タクヤ16歳レベル280
固有魔法:植物
筋力 7700
抗力 7350
体力 7870
瞬発 7640
魔力 10870
スキル:集中Ⅴ・魔力感知・魔力操作・多重魔法・特殊植物化・養分制御・魔力吸収・投擲・早業・高速移動・精密動作・生命感知・鑑定Ⅴ・感知範囲強化Ⅵ・イメージ強化Ⅳ・炎耐性・召喚Ⅰ・神の加護Ⅰ・空間指定Ⅰ・座標固定・リミッター解除
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まずまずだな……レベルは10上がって、ステータスはどれも1000ずつ増えている。やはりスキルはヒロトの持っていたものがあるな……リミッター解除ってなんだよ。初めて見るな。
そこまで確認し、早速鑑定を使いスキルの情報を把握する。
『鑑定』
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空間指定Ⅰ:異空間の扉を開く
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座標固定:異空間からものを取り出すまたは召喚魔法を使用する際の特殊イメージ強化
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リミッター解除:一時的に人間の限界を超え、新たな力を得る
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リミッター解除こわいな、極力使わないようにしよう。
そう思いながら、空間指定を念じれば使えるのだろうと予測し早速やってみると。
「おお!」
何もなかった空間に突如黒い穴が空いた。
とりあえず手を突っ込んでみたが手に当たる感触はない。どういった仕組みなのかわからないが近くにあった水の入ったビンを入れ、一度異空間を閉じて、また開き中を確認する。
「ちゃんとあるな」
手にはビンが握られていた。
「それ慣れたらイメージするだけで欲しいものを取り出すことができるようになりそうね」
と、隣で見ているリンはうらやましそうに見ている。
「リンの私物も入れてやるよ?」
恐る恐る言ってみると。
「いやぁったあああ」
満面の笑みで喜んでくれた。
「それはそうと、これからどうするよ」
「そうね……救世主にとどめを刺しに行きましょ」
「そうだな」
こうして俺たちは来た道を戻り、戦った場所へ移動した。
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「あれは……イスカルみたいだな」
戦いの地に戻る途中でイスカルと思われる後姿を発見した。どうやら考え事をしているようだ。
ちょうど話をしたいと思っていたところだから近寄り話かける。
「ご無事でしたかイスカル様」
と声をかけると驚いた反応を示して振り向いた。
「おお、君はタクヤ君とリンさんではないか。まだここにおられるということは、さては君たちが人間を追い払ってくださったのかな?」
「とどめまでは刺さなかったが戦闘不能にはした……で、その人間共はどうなった」
「それが、見当たらないのです」
「は?」
「私たちは三十分ほど前にここにたどり着きましたがすでにいなくなっておりました。私たちはてっきり君たちが退けたのかと思い生を喜び合っていたところです」
嘘言ってんじゃねーよさっき周りも見えなくなるほど考え事をしてたろ。
「あの、もしよろしければ、救世主がどれくらいの強さを持っていたのか」
「ステータスはお前とあまり変わらないくらいだったが、そいつらは固有魔法が強力で手こずったな」
そう言うとイスカルの表情が曇ったから、アドバイスを一つ。
「もしも戦うことになったら距離を詰められる前に魔法で迎撃したらいいかもな」
イスカルはその一言を聞きたかったとばかりの反応を見せたから次の質問だ
「一応聞いとくが、被害はどれくらいだ?」
「はい、北側は民家が数十件魔法により壊され、南側は建物が崩壊していて、合計死亡者は数十人と少ない数で収まったという情報が入っています」
それを聞きどこに考え込む要素があるのかと考えるとすぐに前にした会話を思い出した。
「いやー流石はイスカル様、見事に救世主を最小被害で退けられるとは、私達は感服いたしました」
手柄を魔族にあげ、俺達は何もしなかったことにする。元より勝手に俺達がやったことだそもそもイスカルが咎められることはない。だが一応のためだ俺達はこの町にはいなかったことにしよう。
その意図が分かったのかイスカルは少し困った表情になったが。
「おほめの言葉ありがたく頂戴します救世主タクヤよ。この恩は一生をかけてあなた様にお返しすると共に私はあなたの味方をします」
「礼なんか要らない」
と言ってみたが、そういうわけにはいかないようだ。
「じゃあ、俺がピンチになった時に助けるってのでどう?」
「わかりました」
という良い返事が聞けてホッとした。
救世主はおそらく回復道具でも使って身体を癒しそのままノブアキの魔法を使い、帰ったのだろう。
だから俺達がこの町に残る必要な無くなったわけだから俺たちもこの町から出ることにする。
そのことをイスカルに告げると、イスカルはポケットから数枚の金貨を取り出し渡してくれた。
「もっとお礼したかったのですが、それを望まれないみたいですのでせめてこれだけは持って行ってください。持っていて損は無いでしょう」
「あ、ありがとう……」
俺は貰った金貨を異空間に収納し、イスカルに別れを告げようとしたときに思い出す。
「早速ピンチだから助けてくれよ」




