21話 ドレイン
「さて、空間制御魔法使いのヒロト君、君には死んでもらうよ」
俺はそう言いながら少しずつ手を上げればヒロトの胸の辺りに手が届く位置まで下ろした。
背中から大樹で貫かれて数十分はたっているがまだ意識を保っていられるのは、高いステータスのおかげだろう。それほどまでに高いステータスを保持しいるならばきっと便利なスキルもいくつかはあるだろう。そう期待して俺はヒロトの胸に手のひらを添えて魔法を使おうとしたときリンが声をかけた。
「待って……一応ステータスを確認しとかない?」
リンの言うことにも一理あるな。救世主がどれくらいのステータスを持っているのかを調べておいて損は無いだろう。
そう思いステータスプレートを取り出してヒロトのステータスを確認した。
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ヒロト17歳レベル50
固有魔法:空間制御
筋力 1870
抗力 1710
体力 1780
瞬発 1910
魔力 1840
スキル:座標固定・転移制御・制御範囲拡大・制御数増加Ⅲ
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普通に強いな、俺がレベル60の時は平均1400程度だったけどこいつらは俺より簡単にレベルを上げることができさらに上昇値が大きいな……やっぱり俺は最弱だったな。
昔を思い出しながらなんとなく意識を失っているコウヘイのステータスを調べると、固有魔法は肉体強化で俺とコウヘイのステータスは4000くらいの差で俺が勝っていたことに不安を覚えた。
4000もの差があったのにもかかわらず、攻撃を簡単に防がれたりしていた。それは固有魔法の性能次第でいくらでも埋めようがあると表しているようなものに見え呆然となってしまう。
そんな俺にリンに声をかけられ我に返った。
「タクヤの強みはスキルの多い所よ。大丈夫、タクヤは弱くなんてないわ……だって私を助けてくれたもの」
優しく放たれたその言葉は俺のメンタルを保つのにとても良い影響を与えてくれる。
そのうちリン無しでは生きていけなくなりそうな気がするな。
いやもうリン無しでは生きていけない状態にまでなってしまっているかもしれないが、それでもいいと思う。好きな人と一緒にいたいと思う気持ちは誰でも同じはずだから。
感極まって涙が溢れそうになるが、グッとこらえて、ヒロトの正面に戻り胸元に手を当ててリンの顔を見ながら笑顔で礼を言い、そのまま魔法を使う。
『ドレイン』
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ノブアキとヒロトからしたら残酷な話だろう、殺される前に抵抗することもできないまま勝手にステータスを見られ、感動の道具にされてから殺されるのだ。
タクヤが落ち込んでいる間に必死に魔法を使おうとするから私がタクヤの代わりに邪魔をする。
邪魔している時に私と闘っている時みたいに転移とか使えばいいと思ったが、きっと使用するためには条件があり、おそらくその条件は胴体に物が触れた状態だと使用できないとかだったりするのかもしれない。だから転移以外の魔法を使用しようとしているのかと納得がいく仮説がたった。
私も少しはタクヤみたいに考えれるようになってきたと思う。
それよりもタクヤのあの表情……とても悲しそう……タクヤのあんな顔を見るのはとても久しぶりだわ……
私はタクヤにかける言葉を探すがなかなか見つからない。この状況ではなんて言ったらタクヤは戻ってきてくれるのだろうか。悩んでしまったがすぐに答えはでた、タクヤは私の言葉はなんでも受け入れてくれるはずよ! と。そして私は声をかけた。
「タクヤの強みはスキルの多い所よ。大丈夫、タクヤは弱くなんてないわ……だって私を助けてくれたもの」
そう言うとタクヤは我を取り戻し私に笑顔でお礼を言ってくれた、こんなにも近い距離にいて愛し合っているのにもかかわらずその表情でお礼を言ってくるところに私は心を引かれ、最高のパートナーに思える。
さて、タクヤが魔法を使う気になったし後は見守るだけね。
そう思い私は数歩下がりタクヤの横顔を眺める。
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『ドレイン』
魔法を唱えると胸元に当てた手から一気にヒロトの魔力や養分が流れて来るのがわかった。魔法を使って数秒経ったころにはヒロトは痩せこけた死体と変わっておりそれが元ヒロトですと言われても識別できないくらいの有様となった。
「ヒロトおおおおおお」
とノブアキが隣で涙を流しながら叫んでいるがあまり気にならない。
俺はそれどころじゃなくなっている。今までドレインで吸収した魔力は外に放出することで体内の魔力量が多くなり過ぎないように制御していたが今はそれができない。
あ、あああああああああああああああああ
か、身体が、熱い
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い頭がああ身体があああああ」
いきなり絶叫する俺を見てリンは戸惑っている。
そして、強い痛みに耐えきれなくて心臓の辺りを押さえて地面をのた打ち回る俺は魔法の制御することもできなくなり、ノブアキの拘束が解け、ノブアキは地面に落ちた。
「クソおおおタクヤあああ、てめえよくもおおおよくもおお」
仲間が殺され怒り狂ったノブアキは雄叫びを上げるが負った傷のせいか立ちあがることはない。
その間もリンはノブアキの応報に警戒しているが、タクヤへの心配の方が勝りタクヤの介護に徹していた。
「タクヤ!ねえタクヤ!しっかりして!」
リンの声は届くが何を言っているのかわからない。
リンは必死に今何をしてあげるべきかを考えるがどうしていいかわからず、隣であわあわとしている。
「タクヤあああああああああ」
ノブアキは奇声でリンは冷静になったがそれと同時に背筋がヒヤッとする感覚に襲われた。
ふと後ろを見てみると、ボロボロで血の付いた服を纏った男が刀を振り上げていた。
「ヒロトの恨み!『破壊振』」
シンが魔法を唱えて刀を振り下ろしたのとリンがとっさに瞬雷を使いタクヤを拾い回避行動を使ったのはほぼ同時だった。
「痛っ!」
ぎりぎりだったが回避しきったと思っていたが少しかすっていたようだ、回避する際にだいぶ距離を取ったから顔を落として痛む場所を確認すると脚から血が出ている。
それでも耐えれないほどでもないから再び顔を上げ警戒するが魔法を放った後のシンは刀を手放し地面に倒れこんでいて、まったく動く気配がなかった。
タクヤは相変わらず痛みに悲鳴を上げながら少しバタバタと暴れている。
このままではタクヤが危ないと思ったリンは俺を抱えてその場から逃げるように歩きだす。目的地はイスカルと話をした場所。
またいつ救世主共が回復して襲ってくるかわからないから、それにドレインで発生した異常事態に戸惑い、リンはとどめを刺すという判断ができなかった。
タクヤ……動かないでよ。
タクヤが暴れるためゆっくりとしか移動できない。リンはたまにふらついたりしながらも助けを求めイスカルの元へと向かったのだった。




