20話 死刑宣告♪
シンは意識を失い、コウヘイは拘束されている状況となり先ほどまでの騒ぎはなくなり静寂へと変化し時間が流れた。
コウヘイは未だに意識を保っているため尋問くらいだったらすぐに始めることができる。
俺は周りに怪我をした魔族がいないことを確認し、尋問の前にとりあえずということでステータスを調べようと思い向き直った。
「固有強化魔法Ⅴ発動!『破壊衝動』」
俺がコウヘイのステータスを調べるために歩み寄った時に、コウヘイの魔法が発動した。
「チッさっさと眠らせとけば……」
拘束された状態で魔法は使えまいと高を括っていたことが悔やまれたが仕方ない。一応のためにバックステップで距離を取り観察する。
魔法の発動から数秒経ちコウヘイの体に莫大な魔力が集まり黒みがかった煙がコウヘイの体のそばを漂いだしたところで、強引に刺さった根を砕き拘束を解いていく。
あれは理性を保ってないだろ……
眼は赤く染まり、牙と角が生え心なしか肌は鱗のようになっているように見え、もとが人間とは思えない様子となっている。
コウヘイは拘束を完全に解き雄叫びを上げるなか、攻撃に移ろうとしていた俺と視線が交わったその瞬間先ほどまで二十メートルほどもあった距離を一気に詰め攻撃の動作に入ったコウヘイが目の前にいた。
はやい。
大きく振り上げた右腕、そこから振り下ろされた拳の挙動を予想しぎりぎりでコウヘイの側面に周り回避する。
かわされた後すぐに拳を戻し別の攻撃に移ると思っていたが、拳を止めずに振り下ろし地面にクレーターを作った。
その隙にまた距離を取り魔法の準備をしながら思考する。
おそらく痛覚と意識を遮断してる。
そのため、普段はしないような動きや痛みがないから多少のダメージは無視して特攻してくると予測できる。
ここまで状況を判断したときに後ろにまわった俺を見つけ、再び距離を一瞬で詰め今度は膝を抱えた体勢をとったことから回し蹴りが繰り出されると判断し、蹴りの軌道に合わせて地面から三つの大樹を生やし重ねてガードを試みるものの、大樹のガードをすべて粉砕しそのまま俺を吹き飛ばし建物に背中から直撃し停止した。
「なんちゅー威力――おあ!」
地面に倒れこんで悪態をついている時、俺が立ちあがるのを待つことなく跳躍したコウヘイがライダーキックでもするかのような姿勢で迫ってきたのを大樹で体を空中に飛ばしなんとか回避し地面に着地し攻撃に備える。
ガードは通用しないから回避しかできない。
とっさのガードが使えないのがだいぶきついが攻撃の一つ一つが単純で大振りだからかなりのスピードがあってもなんとか回避できることが救いだった。
あまり効果は無いと思っているが日が暮れる前に決着をつけたいから弾樹を作りどれくらいのダメージを与えることができるのかを探るための攻撃をする。
放たれる弾樹は確実に飛び蹴りの反動で動きの止まったコウヘイの頭や胴体に着弾するが硬い鱗に全てはじかれ微動だにしない。
「なんて硬さだよ……」
悪態をつきながらも別の魔法につなげ打破する策を考える。
『ニードル』
協会で神の動きを封じるほどの威力を誇るこの魔法は今まで飛んでいた弾樹から一斉に複数の棘が生え一気にコウヘイの体中を攻撃し一番柔らかそうな部位を探す。
ん! 脇の下あたりに少し刺さった根の後が……
弱点らしき部位を見つけたところでコウヘイはがれきをつかみ投的してくるのを左手から生やした大樹で粉砕し走りだす。目指すのは脇の下、俺が近寄りながら大振りの拳をかわし懐にもぐりこみ魔法を使う。
『槍樹』
放たれた樹は槍のように鋭く確実にコウヘイを貫いたがまだこれだけでは終わらない、貫きまだ刺さったままの樹から一気に新たに樹を生やす。体の内側から勢いよく飛び出した樹は硬い皮膚と鱗を突き破りコウヘイの絶叫が響き渡る。
「がああああああ」
悲痛な声を上げたコウヘイは急に動かなくなり魔法が解けていき元の姿い戻った。
さすがに体の内側からの攻撃には弱いか……
内側からの攻撃になす術無く血をそこらじゅうにばら撒いたコウヘイを見下ろしていると魔力サーチが発動したかと思うと俺の正面の空間が歪みそこから二人の人間が現れた。
二人は辺りを見渡す前に倒れているコウヘイを見つけるとすぐに駆け寄り声をかける。
あーあ、まずは仲間の心配よりも周りを見て状況を判断しなきゃだめでしょ……
こいつらはリンから逃げてきたっぽいな……だがよく無傷でいられたな。
先に状況を把握し未だにコウヘイを回復させようとしている救世主共に不意打ちをかける。
こんな状況で詠唱なんて意味は無いそのまま静かに大樹を忍ばせ一気に背中から貫き地面に脚が届かない位置まで持ち上げる。
不意打ちは見事に成功し大樹に貫かれ空中で刺された部位を抑えながらジタバタとしている救世主を見上げ、顔を確認したときにふと気付いたその時俺の口元がにやけるのを感じた。
「おまえ……ノブアキじゃね?」
本人も眼を大きく見開き驚きを露わにしている。
「ま、まさか、タク……ヤ……か?」
「覚えててくれたのか、嬉しいなぁ」
「え? お、お前……は……死んだんじゃ……なかったのか?」
少し怯えた様子のノブアキ……まあ無理もないさ、殺したと思っていた人間が実は生きていてさらにその人間に不意打ちをもらった状態なんだ。そんなノブアキ君にはさらに絶望してもらわなければな。
そして先のとがった根をノブアキの目の前まで迫らせ笑顔で言い放つ。
「どうも、君を殺すために地獄から這い上がってきました……タクヤでーす」
それはかなりの効果があったのか、下半身を濡らしながら震える。
その光景を見ていたもう一人が魔法を使う予感がしたから大樹でいたぶり集中を強制的に崩させる。
このままでは何も始まらないことを悟った俺は提案する。
「まずは自己紹介をしましょうか」
二人は目に恐怖が植え付けられてしまったのか固まったままだが始める。
「私はウォグリアに召喚された救世主タクヤです、固有魔法はみての通り植物です。事情により人間や魔族の味方はしないことにしました。よろしく」
言い終わると目で自己紹介を始めるように促す。
「お、俺はヒロトだ……固有魔法は空間制御魔法だ……」
空間制御だと? それチートじゃないのか? そんなんに勝てるやつないだろ。
驚きに事実に不意打ちを成功させていたことに喜びいやむしろ感動を覚えながら時を待つ。
「もうすぐだと思うんですよね。私の連れが戻ってくるの」
そう言いながら二人を見上げ監視する。ノブアキとヒロトはたまに魔法を使おうとするからそのたびに大樹でいたぶることを数回繰り返したところでリンが魔法を使い速力を上げ全速力で走りながら戻ってきた。
「タクヤ無事?」
すごく心配そうな表情だが少しは余裕があるみたいだ
「おう無事だ、お帰りリン」
そこまで言ったときにリンは空中に浮く二人の人間を見て。
「この人たちに魔法は当たらなかったのになんでタクヤはこうして大樹で串刺しにできているの?」
「嗚呼それは、不意打ちだったからだよ。間抜けな救世主さんは付近の状況判断
よりも仲間の安否を優先しちゃったからこんなことになったのさ。
あとこっちのやつの固有魔法は空間制御魔法らしいから、おそらく胴体の前と後ろの二か所の空間に穴を開けていたんだろ」
その推測はまるで見てきたかのようなものであったためヒロトの表情が固まったのがわかった。
そしてそこまで教えるとリンはハッとした表情に変わった。
「だから魔法がすり抜けてるように見えたのか!じゃあ最初に攻撃したノブアキってのは私の雷光に反応できなくてただ棒立ちになってただけだったのね……」
ホッとため息を吐くリンの頭を優しくなでながら告げる。
「この空間制御魔法は後々かなり危険な魔法になりそうだからここで死んでもらおうと思う……いいよな?」
「問題ないよ」




