16話 俺、頑張ったから早くも町に着いたよ
アールスに着いたな……よし、南側にあるバルシオンの様子を見に行こう。ゆっくりしている暇はないぞ。
ユウ達がダンブルの率いる魔族を殲滅した後、魔族の支配した土地がどんなふうになっているのか調査しなくてはならん。もし人間が取り戻していた場合、一か月でどこまで土地の修復が進むのかを調べたい。
「リンよ、このままバルシオンに向かおう」
「え? でももう夕方だよ? タクヤは休んだ方がいい」
困惑気味なリンが心配してくれる。まあ心配するのも無理が無い、一日中大樹を使い続けているのだから。心配してくれるの嬉しい、特に愛する者からもらう気持ちは特に、だが今回は休むわけにはいかない。
急がないと。
戦いが終わってまだ一か月だ、まだもしかしたらと思える時間だ
「夕方だからこそ移動をするんだ。日が沈んだら休むよ」
そう言いながら進行方向を東から南に変えた。
俺はまだ冷静に判断ができる。目的地はバルシオンで急がねばならない。そこでリグレットから南東方向に直接進む方が少ない時間で移動できただろう。だが、斜めに移動すると自分達が何処にいるのかを把握できなくなってしまいかねないし、町に気付かず通り過ぎるかもしれないため、だからいったんアールスにより、バルシオンを目指す直角な動きで移動する方法をとった。
急がば回れという言葉もあるしな。
やばいもうすぐ日が暮れる、もっとスピード出ろ!魔力の供給量を上げろ
あとどれくらいの距離があるか分からないが、もうすぐで着くということを俺の感が告げている。
闇召喚士ダンブルとかいう懐かしいやつは召喚魔法をつかいこの距離をあっという間に移動していたのだろう。だがダンブルの魔力は無限じゃないから移動に魔法を使うのはせいぜい二回程度だろう。なら二回で移動できる距離なんて徒歩二日もないはずだ……
感が告げているわけではなかったな。
あ、魔力の回復が止まった。
日が完全に沈んだようだ。
というわけで移動手段を徒歩に変更する。
「リン、魔力は後どれくらい残してる?」
「大樹の上で寝てるだけだったから後九割は残ってるけど」
と言いながら何故? と頭の上にハテナマークを出しているリンだったが、すぐに俺の質問の意図を組んだのか急に表情がこわばった。
「タクヤは大丈夫なの?」
「ああ、日光は魔力だけじゃなく体力も回復してくれるからな」
「何それ……初耳なんだけど……」
リンはむくれている。
「それが、この頃体力の回復量が増えたんだよーすごいだろ?」
「タクヤが大丈夫ならそれでいい」
嬉しい言葉をありがとう。
もう四分の三は移動できていると思うから二日掛かるという推測が間違っていなければ、後半日だ、三時間程度歩いて夜は休憩、日が昇り次第移動を開始すると明日の昼前までには着くな。
「よし、リン明日の昼前に到着できそうだぞ」
「そうね」
相変わらず俺達の進む道は背の低い草しか生えていなくて、まるで草原のような場所だ。樹が一本も見当たらない。自分で生やせばいいだけなんだけどね。
さて、そろそろ眠くなってきたぞい。なんたって昨日は寝てないからな、眠らずに移動してたからな。
リンは昼にガッツリと眠っていたから平気だと思う。余りにもぐっすりと寝てたからその無防備な胸をちょちょっと触らせていただき大変おいしい思い出を作らせてもらったことは内緒だよ。
本当に眠くなった俺はリンに今日はもう休むことを伝え、魔法を使い樹を生やし寝ることにした。
おやすみリン。
そして俺は意識を手放した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ま、眩しい……
「もう朝か……」
太陽の光で眩んだ目をこすりながら意識を覚醒させていく。
一度寝たことにより体からだるさは消え体が少し軽くなったように感じる。睡眠の重要性はここにあったようだ。
リンは……隣寝てたのか……起こさないとな。
俺は寝ているリンの体に触りたいという欲望を抑えながらリンを起こした。
「おい、リン起きろ、朝だぞー」
「ん……あ、タクヤー……おはよ……」
冴えない両目をこすりながらお姫様がお目覚めになった。
リンは寝起きできつそうだが早くバルシオンに着きたいから出発する。
『大樹』
魔法を使い大樹に俺とリンを乗せ動き出す。
「大樹で移動するなら私起こす必要なかった……」
そう言いながら横になり始めた。
「寝起きだといざって時に体が動かなくなるから起きてなさい」
「ん……」
リンは可愛い声を上げながら体を起こし俺の隣に座った。
この言葉は効果抜群のようだな。
後三時間くらいでバルシオンに着くならこの時間帯から起きとけばもし戦闘に巻き込まれても判断ミスのリスクを減らせるくらいには動けるだろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「リンは顔としっぽが見えるような恰好をしといてくれ」
「わかった」
俺達は今バルシオンの前にいる。
この町には町の外と中を繋ぐ通路に誰もいないから自由に出入りできる。
そう判断した俺とリンは堂々と町に入った。
あれ?
ぶ、無事だったのか……
俺は一か月前にダンブル共が殲滅されたことを知り流れで占領されたバルシオンを取り戻すために人間族が乗り込み取り戻したという未来を強く想像していたが、あまり期待していなかった未来が現実だった。
町は魔族で溢れている。
まさかの幸運に感激しながらもこれからについて考えるが
「ちょっと、周りの反応おかしくね?」
「なんか、変……」
俺達は注目されていた。
そこには怪奇の視線で満ちている。
それもそうだろう、魔族と魔族のごつい体格とかけ離れたむしろ人間の体格に近いフードを被った者が仲良く行動を共にしているのだから。
「あーなにこのデジャヴ感」
「とりあえず、この町で一番偉い人に会いに行きましょ」
「お、おう……」
だがそう簡単に会えるものなのか? 何処にいるかもわからないんだぞ。どうするんだよ。
とまあ、そんな不安を抱いていた時期がありました。
なんとリンがその辺にいる通行人に話掛け情報を集めだした。
そして俺は何もせずに道の隅にて待機することにする。
ほら、俺って人間だし……俺が話掛けても答えてもらえそうにないもん。
数分ほどリンを待っているとリンは満面の笑みと軽やかなステップを踏みながら帰ってきて自慢げに聞き込みした内容を話した。
リンは聞いたことを全部話すから要点が分からなくなる。
それでも聞いて内容を要約すると。
ダンブルが死んだと報告があった後、すぐに町に新しい隊長が派遣されて、その人がこの町を仕切っている。
とのこと、そしてその隊長さんはイスカルという名前らしく、町の真ん中に建っている建物の中で生活しているらしい。
長く語ってくれたが大事な部分はそれだけだ。
まあ俺達が知るべきことはすべて聞いて来てくれたみたいで助かった。
リンの礼を言うと早速町の中心にある建物を目指し歩き出す。
イスカルには戦いについてやこの世界にある植物に関する知識を分けてもらいその礼にこれから人間に攻めて来られると予想されるこの町を全力で守ることを約束しよう。
あ、その前に俺の実力を示さなければ約束できないよね……
そ、そうだ人間だけど、この町に滞在してもいいよね? という確認をしに行く、ということにしよう。
植物に関することは本さえあれば自分でも調べられるし。
戦いについてはリンが聞きだしてくれるだろう。
あー早く町の中心に着かないかな。さっさと話をつけて金を稼いで宿に泊まりたい……




