15話 俺は優しいぞ
「さて、何から話してもらおうか」
その言葉だけで肢体を拘束され身動きの取れない賊は震えている。
あのような光景見させられたんだ無理もない。そして眼の数センチ前には先の尖った根があるんだ。
今の俺はこの世界について知らないことが多すぎるからこれはいい機会だと思っている。
無いと思うがこの状況を第三者に見られることは避けたい。必要最低限の質問をし解放してやろうと思う、俺は優しいからな。
そして俺は一番近くにいる賊に問うた。
「まずは、この世界の金について教えてくれ」
「「「!?」」」
「なんだ? 聞こえなかったのか?」
「き、聞こえている! 金、金だな? この町では金貨一番価値があり次に銀貨、
その次に銅貨だ。銅貨百枚分が銀貨一枚になり、銀貨二十枚分は金貨一枚だ」
ご丁寧にどうも、えーと金貨は一万円で銀貨は五百円、銅貨は五十円ということになるな。
眼の前にある根を離すと賊共に少し余裕ができたみたいだ。これで話やすくなるだろう。
「宿に一泊するのにはいくらかかる?」
「それは宿にもよるが一般的な宿だと一泊銅貨二枚だ……なあもういいだろ? お願いだ解放してくれよ」
宿高いのか安いのかわからんな、わからないから木の上で寝る方が断然いいな
「いいや、まだだ」
後いくつか知らなければならないことがある。
「この町の名前は?」
「ここはリグレット」
「この町の近くにある人間の領地名は?」
「この町から東にアールスという町があるそこが一番近い」
なるほどね……
「ちなみに魔族の領地は?」
「南にあるバルシオンだ」
ふーん、次はバルシオンに行こうかな。おっと、そろそろ賊に限界が来てるみたいだな……次で最後にしようか。
「お前らは召喚された救世主って知ってるか」
「知っている」
「そ、そうか! そいつらはどこにいるんだ?」
「お、その食い付き様はなにかあるな?」
「いいから話せ」
つけあがるなよと威嚇する。
「アールスの北にメリクスという町がある。そこに八人いるらしいぞ」
八人? 何故だ? 五人が五か所に振り分けられたんじゃないのか?
「なぜ八人いるか分かるか?」
「ああ、一か月ほど前ウォグリアという砦にバルシオンから侵攻してきた魔族に二人殺されてそれで残った三人はメリクスに移動したらしい」
「バルシオンから侵攻してきた魔族はどうなった?」
「残った三人が殲滅したそうだ」
なるほどね……そんなことになってたのか
一番知りたかった情報をこうもあっさりと手に入れてしまった。この運の良さに感動を覚えているとリンが提案してきた。
「タクヤ、この町で活動する理由は無くなった。早速メリクスを目指そう」
リンにも思うところがあるのだろうか少し殺気が溢れてますよ
早くメリクスに行きたいのは俺も同じだが。
「メリクスはアールスに行った後にする。理由はバルシオンの様子を見ていきたいからだ」
「……わかった」
納得してなさそうだが我慢してもらおう。
さて、そろそろ解放してやろうかな
俺は賊の拘束を解いてやった。
「あ、ありがてー」
体が自由になった賊共は心底嬉しそうだったが大樹で道が塞がれていることに気付き再び表情が死んでいく。
「な、なあ解放してくれるんじゃ……」
「痛い目見たくなかったら、金を全部置いていけ」
「え……?」
「聞こえなかったか?」
「ヒッ」
仕返しだ馬鹿野郎!
怯えた賊共は金を置いたので道を開け解放してやると一目散に走っていった。
「金貨三枚に銀貨十枚に銅貨が……たくさん」
数えるのが面倒になるくらいあった。
するとリンが不安げな表情で言った。
「タクヤ……」
「なんだよ心配すんなって、別に金が欲しかったわけじゃない。だからこの金はここに置いていく」
その言葉を聞いたリンはホットしたみたいだ。
ここで金を取ってしまえばあの賊と同一になってしまう。そんなことは俺のプライドが許さなかった。
「もうこの町に用は無いからさっさと移動するか」
「そうね……大樹を使って一気に移動しない?」
「勿論そのつもりだ」
俺は大樹を使い建物の上に移動し。建物の上を移動した。
ここに来るのに三十分かかった道がこの方法だと五分でスタート地点に着いた。
「今夜は町の外の樹の上で寝て、明日の朝から移動を始めよう」
「うん」
明日の予定を立てながら俺とリンは町を出て町の東側に進みながら背の高い樹を探す。
「森じゃないからなかなかいい樹が見つからないな……」
「そんなもんよ」
見つからないまま町の東側に到着したらしたでアールスへの移動を開始すればいいだけの話だが……日光が無い今、大樹を使った移動方は魔力の供給が追い付かなくなりそうだから避けなければならない。
よって徒歩になる。
俺は別に寝らずに歩いても問題ないがリンは嫌がるだろうなぁ。いや、一応魔族で魔王の娘なんだそれくらいは頑張ってもらわないと。
…………マジで見つからないとか。マジかー最悪だな……
現実を逃避したくなる状況のなかリンは何かを思いついたのか笑顔で口を開いた。
「仕方ないからこのままアールスまで移動を始めない?」
ま、まさかリンの方から提案してくるとわ……てかもう歩き始めてるし……。俺の魔力の事を考慮して歩いて行ってるのかな?
「お、おう……俺もそうしようと思ってた」
と言いながら小走りで追いつきリンの隣を歩く。
それから俺はリンの満足そうな表情を眺めながらチラ見しながら歩く。
か、可愛いなー。は、早く宿を探さないとグフフ
さてさて森での経験でこの世界で近い距離は徒歩三日という事を知っているから今回は聞かない。
まあ、朝になれば大樹を使って移動するから結局は一日でつくことになるだろうけど。
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——野生のゴブリンを発見した。
リンの攻撃。
『光弾』
ゴブリンは眉間に風穴を開け死骸となった。
「これで五回目だな」
「うん、なんだか少しずつ増えてる」
現在昼前。俺とリンは大樹に乗って移動をしている。夜と朝方は魔物と一切遭遇しなかったが昼前になると突然遭遇するようになった、それもアールスに近づくにつれて。
「これはアールスに何かあると予想しているが……どう思う?」
「私もそう思う」
リグレットに来るときは魔族と遭遇は余りしなかった。
いや、アールスに何かあるのではなく。逆にリグレットに何かあるのかもしれない。
別に魔物が増えようが減ろうが俺達には関係ない事だから問題ないがな。
さて後半日、頑張りますか。
「リン魔物の相手はよろしく、大樹使いながらだと狙いにくいからさ」
「ん……わかってる」
俺の魔力は日光が当たっている限り無限に使えるがリンはそうじゃないからな、もしものためにも半分は残しておいてもらいたいな。魔物が出てくる前に移動しきってしまえばいいのか……
うぉっしゃあ!頑張るぜえええ!
後半日だ!




