10話 そのどこかで見た老人は〇〇でした
時は昼すぎ、森の中を移動し続けていた俺達はとある建物の前で立ち止まった。
「なあ、この教会みたいな建物の中に転移魔法陣があるんだよな?」
「……ん」
森の中に不自然な程の大きさを持った教会がそびえたっており森の雰囲気とは異なりすぎている。
「ここにこれがあること知ってた?」
「知らなかったわ」
どうやら転移魔法陣のある場所は知っていたが来たことはなかったらしい。
それにしても、この教会はでかいな。一応周辺の様子を調べてみたが学校の体育館の二倍くらいか?
転移魔法陣は俺の思っている以上に大きいのかもしれない。
まあ、ちゃんとたどり着いたわけだし、後は中に入って帰るだけになったから昼ごはんでも食べようか。
「昼ごはんどうする? 俺はいらないけど」
俺に必要な養分や魔力は周りにある木々から吸い取っているから腹が減らない。
とっても便利な魔法ですよもう。
「私はさっき捕らえたフォレストコング食べるから」
リンはちゃんと食べないといけないもんな。食べることは、魔力や体力の回復につながるからね。
ぞれじゃあ俺はリンが食事をしている間に仮眠でもとるか。
「ちょっと寝る、食べ終わったら起こして」
「うん、おやすみ」
リンのそっけない返事を聞き俺は眠った。
「…………きて」
リンの声がする。
「タクヤ起きて」
ああ、飯食べ終わったんだね……
「おはようタクヤ」
おはよう……リン
「俺ってどれくらい寝てた?」
「私がごはん食べ終わって一時間くらい?」
時計無いのによくわかるなー。てかそんなに寝てたのかよ。
「仮眠のつもりが深い眠りについてしまってた」
やっちゃった感を出しながら言ってみるがあまり関心をもってもらえない。
「どうする? もう行く?」
飯食べてやる気満タンって感じかな?
寝起きで頭痛いけど、転移するだけだし頑張っちゃおう。
「よし、行こう」
そう言いながら教会の扉を力強く開け―—開かなかった。
あ、そうだった、扉開かないんだった。
あちゃー寝る前に調べてたんだけどな。
忘れてた……
扉の取手をつかんだまま動かない俺を見てくる後ろからの視線が痛い。
そんな俺は恐る恐る振り返り、リンの方をみるとそこには笑顔をつくったリンが。
「開きませんでした」
一応報告してみるとリンはクスクスと笑いながら「扉壊したらいいじゃん」と言うと腕を前に伸ばし魔法を行使して扉を爆破した。
小さい規模の爆発だったが扉は粉砕され原型をとどめていないため修復不可能。
びっくりな事態に言葉を失う。
「………………」
「開いたわ! 早く行きましょ!」
次来る機会があったら作り直してあげないとな……
リンの行動に驚愕を覚えながらも教会の中に入ると、大きな十字架が天井から吊り下げられ幻想的雰囲気であり、その十字架の下にある椅子には白髪で飾り気のない服を纏った老人が座っているのが見えた。
あの老人どこかで見たような……
そんな思いが脳裏をよぎったが半年前に死んだそうだからそんなはずはないと割り切った。
とりあえずその老人を警戒しながら、近づき言葉を交わそうと試みる。
リンも老人の存在に気付いたのか警戒しているようだな。
サーチ系スキルをフルで行使しながらゆっくりと長い距離を詰め話しかけようとしたが。
「ようこそ、私の屋敷へ」
先手を取られた。
「私の屋敷に何か用かな?」
相手は友好的な老人とみた俺は転移魔法陣がここにあることを話し転移する方法を聞く。
「ここに転移魔法陣があると聞いたのだが知らないか?」
できるだけあっさりとした口調で話すと答えは直ぐにかえってくる。
「魔法陣は地下にある、使いたければ使うといい。使い方は魔法陣に魔力を流すだけだ」
案外簡単な作業で転移できることに感動を覚え「ありがとう」と返事をして地下を目指して歩き出したとき、突如強い魔力を感じとり振り返りそれを老人が放ったものだと確認した。
やばい、強すぎる。
魔力は流れているがまだ魔法は完成していない。とっさの出来事だったため距離を置き攻撃魔法で相殺または先制攻撃で対処することを判断し俺を見つめているリンに視線で指示をだす。
「なかなかいい判断をしよるな」
リンに指示を出しながら距離を置いた俺の耳にその言葉は入ってこない。
俺は今使える魔法の中で一番速度のでる魔法であり大量にかつ連射できる魔法で先制攻撃を試みる。
『弾樹』
大量に現れた樹の破片が弾丸のように一直線の軌道で老人に襲い掛かるが老人は建物の中を縦横無尽に駆け回るため一発も着弾しない。
魔力を保ったままかわすのか……しかも動きが速い……
ならばこれでどうだ。
『ニードル』
今まで老人に襲い掛かっていた樹の弾丸の一つ一つが着弾する寸前に栗のように棘のような根が生え紙一重でかわしていた老人に傷をつけていき動きを鈍らせていくなか、一筋の光が動きを鈍らせた老人の胴体に吸い込まれるように放たれ爆発し、胴体に風穴を開ける未来が予想できた。
『雷光』
足止めをしている隙にリンが魔法で追い打ちをかける。
俺とリンのコンビネーションはさらに高まっていたこともあってここまで無駄のある行動は一つも無かったがリンの放った魔法が老人の胴体に風穴を開けることはなかった。
「魔法の使い方もよく成長しとるな」
爆発によって生じた煙が散乱し老人の姿がはっきりと見えるようになると老人はそう呟いた。老人は手を合わせて合掌をしておりそこを中心にガラスのような光輝く壁がありその壁がリンの魔法を防いでいたようだ。
あの魔法を防げるのか……
いつのまにか与えた傷も既に回復しているな……しかしどんな魔法で防いだのか検討もつかない。
日光がない場合の魔力の消費スピードを考えると長くは戦えないな……
「リン天井だ!」
『雷光』
瞬時に俺の意図をくみ取ったリンが放った雷魔法は老人の真上の天井めがけて放たれたがまたもやガラスのような壁に遮られ魔法は散った。
「その程度の魔力じゃ無駄よ」
ちっ……扉は魔法で壊せても天井までは壊せないか。
くそ、どうすれば勝てるか……俺の使えそうなのはドレインだけか。だがドレインを使わせてくれそうな時間を与えてくれるとは思えない……
どうすれば……
そんなとき作戦を練っている俺に老人は話しかけてきた。
「おぬしは……人間の敵はなんだと思うか?」
ラッキー! ここだ、ここを上手くやり過ごせば戦わずにすむかもしれない。
そう思った俺は慎重に言葉を選らぶ。
「人間の敵は魔王の率いる魔族だ……」
「ほう。では、逆に魔族の敵はなんだと思う?」
同じ系統の質問だな、ここは無難な回答でいきたいところだな。
「人間だ」
そう答えた俺を見る老人の顔は笑っている。あの笑いは嘲笑いだ。
俺は間違ったことを言ったつもりは無い、では何故?
その疑問の答えは老人の放つ言葉ですぐにわかった。
「違うな。魔族の敵は人間ではなく神族だ」
「誰だよっ」
おっと、ついうっかり心の声が漏れてしまった。
それは置いといて、つまり老人は無知な俺を嘲笑っていたのか……ムカつく野郎だな。
だが、この老人の前では無知なのは事実だ、その証拠に俺は神族という単語はこの世界に来て初めて聞いた。
強い魔力に魔族の敵が人間でなく神族という辺りからこの老人は何か重大なことを知っているに違いないと悟った俺は戦うことよりも情報を得ることを優先させるべきだと思い、会話に集中する。
「聞きたそうな顔をしとるな、おぬしはきっと神族について聞きたいのだろ?」
「その通りだ教えてほしい」
「素直でいいな。よかろう、ではこの世界のすべてを教えてやろう」
老人は手を背中で組み、俺達の周りを歩きながら一気に語った。
「この世界は元々人間と魔族がお互いを尊重しあう世界だった。だがある日この
世界に神が現れて魔族の王を殺しこう言い放った。
「王を復活させたくば我々を殺せ、我々は人の中にある」と。
その一言でこの世界から平和という言葉は消え、人間と魔族の戦争は始まった。当時の魔族の王は人間からも魔族からも高い評判を受けるほど人気な存在であったため、魔族は魔族の王復活のために人の中にいると思われる神を殺すために動きだした。
そして現在の魔王はこういう論を立てた。
「人間をすべてこの世界から排除することにより元魔王は復活する。人の中にいるなら人を殺すことは神を殺すことだ」と。
その考え方は瞬く間に魔族全体に広がり、人間狩りが始まった。
が、その論は間違っている。
確かに神は言った我々は人の中にあると、だが神の本体はそこにはいない、だから、現在の魔王の論は間違っている。人の中というのは人の心の中に生きているということが真実である。だから神を殺すためにはまず人間と協力するのが大前提なのだが、血の気の多い魔族はすぐに戦い始めてしまったため、取返しのつかない今のようになってしまったのだ」
この老人は何を言っている? 戦争の詳しい事情は知らなかったが、何故こうも詳しく知っているんだ?
出てくるのは疑問ばかりで語られた内容を信じれるものとは思えない。
そんな俺を見て老人は俺の疑問を予想し、教えてくれた。
「おぬしらは不思議に思っているであろう。何故わかるのか? と。その答えは簡単だ、それは、私が神族の一人だからだ」




