9話 過去の話をしました
ここは深い森の中、一か月ほど前に突然人間が現れこの森の最強の捕食者へと成長した。
その捕食者は森を抜けるためにさまよっていたが、偶然にも意思疎通できる魔族を死の危機から救出し共に森を抜けることにする。
行動を共にしているうちにお互いを信頼しはじめ、やがて二人は愛し合うまでの関係となった。
太陽は沈み木々の間から射す月明かりと魔法でつくった焚火の光だけが俺達を包んでいる。
俺はリンから俺がこの森にいる詳しいことを知りたいと言われたので、これまでのことを話すことを決意したところだ。
面白い話じゃないから聞き流す程度でもいいと言ってはみたが、リンは聞き流すといった様子はない。
どこから語るべきか。
どう語ればわかりやすくなるのかと考えると最初からが一番かと思う。
「俺はこの世界の住人ではない、地球というこことは別の世界から強制的に召喚されこの世界に来た」
出だしは悪くないだろう。聞き慣れない単語があっただろうが、リンは真剣な表情で俺の話を聞いている。
今から語ることはあまり人に知られたくない話だから上手く話せないところもある、それでも知りたいと言ってくれたリンには語ろうと思う。
「召喚されたのは俺を含めた二十五人。目的は人族の救世主として魔族を退けること、そのために五つに分かれて召喚された。ちなみに俺はウォグリアという場所に召喚された」
俺は考える、内容をわかりやすくするために。
「俺達はステータスを強化するために訓練する日々を過ごしていた」
あまり話たくないが、リンには話ても大丈夫に思える。
きっとそれは俺がリンへの愛からだと思う、だからリンには俺のことを知ってもらいたい、だから話たくなったのかもしれない。
「人族には固有魔法というのがあってその種類の魔法しか使えないんだ。知っての通り俺の固有魔法は植物で俺的にはとてもすごい魔法だと思うんだが、他の連中のが炎だとか重力だとかでそっちの方が優遇されてしまった。しかもステータスも俺より高い、その結果俺はステータス的にも固有魔法的にも周りの人によく思われなかった」
リンは少し俯いてしまっている。
あまり気持ちのいい話じゃないから仕方ないかな。
それでも黙って聞いてくれるのはリンも俺のことを少しでも多く知りたいということなのか?
「ある日、魔族がウォグリアに侵攻してきて仲間の一人が殺された。不幸が重なり俺が殺したと勝手な言いがかりをつけられ俺は仲間の攻撃によりこの森まで吹き飛ばされてしまったというわけで俺はここにいる」
以上だ、はぁ~喉が渇いた、いつもあまり喋らないからかな?
リンはどう思ったかな?
気になる俺は俯いてしまったリンの言葉を待つ。
しばらくして俯いたままのリンが口を開いた。
「タクヤはすごいよ……」
予想外な台詞に上手く言葉がでない。俺ってコミュ障?
「……俺がすごいか?」
すると俯いていたリンは顔を上げリンは俺の目をみる。
「すごいよ、だって仲間に裏切られても頑張って生きているもん」
「それは復讐心があるからでリンの思っているような綺麗なもんじゃない」
失敗した。思ったより声のトーンが下がってしまった。
「蔑まれ、仲間の死を利用され、裏切られ、それでも強くなろうとするタクヤはすごい」
リンなりの気づかいなのだろう。
気をつかうことのできる者は人に好かれると聞いたことがある。こんなにいい娘を捨てるなど、魔王は最低だな。ボロ負けした後だから口にはしないが。
とりま、お礼を言わなきゃな。
「話聞いてくれてありがとう。なんか楽になったような気がする」
まさか、俺が悩んでいると思い話をさせたのか?
ふとそんな予感が脳裏を過ぎ去ると「リンのことが好きすぎてここまでになってしまった」とかってに解釈して終わらせる。
可愛子ちゃんなことで。
「何か今、とても恥ずかしいこと考えたでしょ?」
「あ、ばれた?」
「タクヤは表情に出やすいからね」
「よく見てるんだな?」
「別にそんなんじゃないもん」
リンはむすっとなってしまった。ツンデレのリンも風情がある。
「明日から移動を開始するからもう寝ような」
リンはまだムスッとしているが一応頷いてくれたから焚火を消し眠った。
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「さて、そろそろ行きますか」
「うん」
今日の目標は転移魔法陣のある場所まで移動することだ。
この時間帯に移動を始めれば昼すぎにはつくらしい。
「なあ、転移魔法陣はこの森に何か所あるんだ?」
「あれ? 言わなかったけ?」
おっちょこちょいなんだから。
「 聞いてないよ」
「あら……テヘペロ」
拳をおでこの横に当てて舌をだすリンに愛おしさ感じるが、頑張って無視する。
「で、何か所あるのよ」
「ちょっとはかまってよ」
リンはぶすーとしながらも答えてくれる。これまた、ぶすっとしたリンもいい。
「この森には二か所しかないよ。西側に行けば人族の近くに、東に行けば魔族の近くに転移できるようになってるの」
と、いうことは
「じゃあ俺達は今西に向かってるのか」
「そうよ。ん? 方角もわかってないまま移動してたの?」
「え、あ……うん。そうだけど」
ジトーとした視線が痛い。
ごめんなさいこんな僕で、ごめんなさい。
――前方やく二百メートル先に魔物二体。ゴリラみたいなやつ(フォレストコング)
「魔物だ、俺が先制攻撃で仕留める」
「わかった」
短く打ち合わせをして俺は両手に魔力を集あつめ魔法を放つ。
『大樹』
手から放たれた樹が生きているかのように邪魔な木々を避けながら進み。視界外のフォレストコングを拘束したことを感覚で把握し俺は俺の最強の魔法を行使する。
『ドレイン』
拘束に使った大樹を伝って養分と魔力を一気に吸収しそれが終わると同時に命を奪いとる。すると残ったのは枯れたように痩せこけた死体だけとなった。
「相変わらず、えげつない魔法よね……」
物珍しそうに言うリンに「まあね」と返して「努力の結晶だからね。これくらい当然さ」と付け加える。
「弱点とかないの?」
「ドレインの効果があるのは動物と植物だけだから、相手に合わせないといけないんだよ」
「まあ、その辺は何とかなるでしょ」
聞いてきたのにそっけない。
早く強くならないと、基本の大樹にプラス効果の拡散とドレインだけじゃ勝てない相手もいずれ現れるだろうからな。できることなら樹が爆発する瞬間を見れたら俺も魔王の使っていた捕縛爆散を使えるようになると思うんだが。
けど、急すぎは危険を招くからな、まずは簡単にできそうな技から考えるとしよう。
そう思いつつ俺はリンの横に並び歩き始め再びサーチをかける。
リンは俺が守らないといけないからな、サーチ系は常に発動しとかないと。
こうして俺は実験と称してリンを守るために出会う魔物すべてを俺一人で相手をし移動をしている。
リンも戦いたそうだがこれでいい。もうあの時みたいにはなりたくないからな。
――右の約五十メートル先の草場に狼五体。
またか、転移魔法陣に近づけば近づくほど魔物との遭遇頻度が上がっている。
二分前に相手したばっかだぞ。
魔物の多さに悪態をつきながらも手に魔力を集め魔法を放つ。
今回は魔物に接近して樹の球を拳くらいの大きさに造り弾丸のように飛ばす攻撃を試みる。
さっきまでの闘いでは槍を造って投げたり、木剣で近接攻撃をしたり、捕縛爆散を試みたり。
など、失敗続きの実験をしている。
やり投げは周りに障害物が多くてあまり活用できそうにない。
木剣での接近攻撃は、木剣であるがゆえに威力がないしそもそも俺は接近攻撃は苦手な分野だ。
捕縛爆散はできませんでした。爆散しないんです。
さて、そろそろ成功してほしいところだ。槍より小さいから簡単に造れるから連射もできるだろう。
そう思いながら移動し魔物が視界に入ったら魔法を行使する。
『弾樹』
バキューンと音を放ちながら木の弾は狼の眉間を打ち抜いた。
あれ? 意外と速度が出てるし威力もある……もっと小さくしたら速さと貫通力も上がるんじゃないか?
俺は迫りくる残り四体となったフォアウルフに大きさバラバラの弾を造り撃つことを繰り返す。
弾を小さくすれば貫通力は上がるが威力は下がり。弾を大きくすればその逆になるのか……
工夫しだいでこの魔法は障害物の影響をあまり受けない便利なものになりそうだな。
「タクヤちょっと顔が……」
「顔が?」
リンが引いている! なぜだ!
「悪い笑顔になってる……何か企んでる?」
ばれたか。
「ちょっといいことを思いついただけだ」
ふふふ、あの魔法を応用して更なる高みを。
こうして実験を繰り返すうちに俺達はたどり着いた。




