???side No.0
初めての異世界物。一話目が大変短くてすみません。
_____________冷たい。
自分の中から何か確実に温かな血が流れ出る感覚。
少しずつ意識が闇に侵されていくのを感じながら、彼は必死になって自らの体を動かそうとしていた。
その目には先程からある光景が焼きついて離れない。
後ろから放たれる斬撃、宙に飛び散る血飛沫。
___________そして、こちらに向かって縋るように手を伸ばしながらも崩れ落ちる【彼女】。
助けなくては。
あの子を守らなくては。
が、そんな彼の必死な思いを嘲笑うかのように、時は少しずつ、だが確実に彼の命を奪って行く。
もうピクリとも動かない状態のままうつぶせに倒れていると、誰かが駆け寄ってくる足音と彼の名を呼ぶ切迫した声が聞こえてきた。
体が持ち上げられる感覚とともに【親友】の声が聞こえる。
今まで聞いたことが無いほどの切迫感に満ちた声に思わず、似合わないなと彼は感じた。
いつものように飄々とした態度の【親友】の姿を思い浮かべ、苦笑をしようとしたが駄目だった。
今にも閉じそうな瞼を必死の思いで開けると、顔を歪めてこちらを見下ろす【親友】の顔が目に入る。
動かない口を無理やり動かそうとして、遅々として動かないことにもどかしく思いつつ彼は【親友】に尋ねた。
【彼女】はどうなった、と。
______返事は短く、残されたのはどうしようもない程の喪失感だけだった。
ああ、と思わず彼の脳裏に思い浮かぶのは【彼女】がいつも浮かべていた太陽のような明るい笑顔。彼女が笑えばそれだけでその場の人々にも笑みが浮かぶ光景を、彼はいつも見てきた。
そう、その笑顔に、彼はどれほど救われてきただろう。
どれほど、一緒になって笑ってきただろう。
そして。
_________どれほど愛しく思ってきただろうか。
僅かに、だが今の彼にとっては途方も無いほどの時間を懸けながら顔を横に向けると視界に彼女の姿が映った。
白い地面、その上に広がる赤い血溜りの中心に倒れ伏す【彼女】の姿に、己の心臓がキリキリと音をたてて痛むように感じる。
すまない。間に合わなくてすまなかった。おまえも、【彼女】も、助けられなくて本当にすまない。
何度も何度もそう言って謝る【親友】に彼は伝えたかった。
君のせいではない。君が責任を感じることは何も無い。だから自分を責めるな、と。
_____________________だがもう、この身体は限界だ。
意識が急速に暗闇に閉ざされていくの感じながら、彼は思う。
もう2度と【彼女】は自分の名を呼ぶことも、彼が好きだったあの笑顔を見せることも無い。
だがそれは、全て彼の力不足。彼が【彼女】を守り切れなかったことが原因だ。
だから。
もし次というものがあるのならば、その時は今度こそ。
________________あの子を必ず守りきってみせよう。
これからもよろしくお願いします