暇つぶし妄想族。~コンビニ店員・亜美の場合~
私は亜美。19歳のフリーター。今はコンビニでバイトしてる。
ここのコンビニ、まぁ、どこの店も同じようなものだろうけど、お客さんの波が来ないときはすっごい暇なんだよねぇ。とりあえず、商品陳列したり、掃除したりもするけど・・・やることがなくなると、かなり退屈するのよ。
そんな時、私が思いついた暇つぶし方法が「妄想恋愛」なのよね。
店の前を通る人から見たら、レジのとこに普通に立ってるだけに見えるだろうけど、頭の中じゃいろんなことを妄想してるわけ。
暇な時間帯でも、ぽつりぽつりとお客さんは来るから、誰かが店に入ってきたら、妄想恋愛のスタートの合図になるのよ。
ピンロンピンロン
あ、お客さんきた。
入って来たのは、スーツ姿の会社員。年は30代ぐらいかなぁ?汗かきなのかな、ミニタオルで汗をふきながらお弁当とか物色しだしたわ。遅いお昼ご飯なんだろね、きっと。手に取ったのは、ハンバーグ弁当とカツサンド、コーラ。
「ありがとうございました」
会社員風男性客が出て行く。次のお客さん来るまでに、ちょっと妄想しちゃお。今のお弁当、野菜がほぼ入ってなかった。カツサンドにも。きっと野菜嫌いなんだわ。
妄想タイムスタート!
私は可愛いエプロン姿でキッチンで料理をしていた。
「亜美~~まだぁ?」待ちきれず、シンジ(仮名)が声をかける。
「もうちょっと待って」
「あ!俺の嫌いなニンジン入ってる!うわ、キャベツも!」
「大丈夫よ~美味しく作ったから。シン君もちゃんと野菜食べなきゃ」
「でも・・・」
「はい、出来た!あ~ん」私はシンジの口に出来上がった料理を食べさせる。
「・・・美味しい!亜美は料理上手なんだね!亜美の作った料理なら苦手な野菜も食べられるよ!」
「うふふ、ありがと」私は嬉しくなってシンジのほっぺにチュッ。
あ、汗かいてたのね。しょっぱいわ。
ピンロンピンロン
あ、次のお客さん来た。
次に入ってきたのは、よく日焼けした、どう見ても小学生の男の子。5年か6年か・・仮に11歳と設定してみよう。まっすぐにアイスを選びだして、ソーダアイスを買って行った。
「ありがとうございました」
例え、相手が小学生でも暇つぶし妄想恋愛するんだから!
妄想タイムスタート!
最近、学校帰りに毎日のように店に来る男の子がいた。毎日、ソーダアイスだけ買って帰るが、ある日、そんな男の子が私に声をかけてきた。
「おねえさん、いつもいるね」
「そうね。キミもいつもアイスを買ってくれてるよね」
「おねえさんの顔を見に来てるんだ」
「えっ」
「おねえさん、可愛いよね。僕のタイプなんだ」
「キミ、年いくつよ。まだ子供じゃない」
「僕はまだ11歳だけど、おねえさんは?」
「私は19歳よ。キミより8つも年上よ」
「なんだ、8つしか変わらないじゃない。充分恋愛対象だよ」
「でも私から見たらまだまだ子供よ」
「もう少し待っててよ。僕、絶対いい男になるからさ」
「わかったわ。楽しみに待ってる」
顔つきからしてきっと数年後はいい男になると期待大かも。
そして数年後・・・
「な?やっぱり俺ら付き合ってよかっただろ」
いい男に成長した彼と一緒にソーダアイスを食べる私。
年下の彼氏も悪くないなぁ・・・なんて。
ピンロンピンロン
あ、次のお客さんだ。
入ってきたのは・・・ちょっと体臭のきつい年配のオヤジだった。
「ねえちゃん、肉まんちょうだい」
小腹が空いたのか、肉まんを一つ買って、店を出ると同時にパクついていた。
「ありがとうございました」
うう・・・ちょっと臭いな。でも一応・・・
妄想タイムスタート!
ある日、私がバイトを終えて帰っていると、背後から声をかけられた。
「ねえちゃん!」振り返ると肉まんオヤジがいた。
「ああ、いつも肉まん買ってくれる・・・」
「今日は、ねえちゃんが仕事終わるの待ってたんだよ」
「え?どうして?」
「どうしても食べたい肉まんがあって」
「?」
「ねえちゃんのそこについてる肉まんだよ」
と、肉まんオヤジがいきなり私に抱き付いてきた。
うわっ相変わらず体臭がきつい~
やっぱ無理があったかな、この設定は。恋愛というより犯罪だわ。
「あ、もう上がる時間だわ」
バイトも終わる時間がきたので、今日の私の妄想恋愛はおしまい。
毎日、こんな感じで暇つぶししています。
暇つぶし妄想族。~コンビニ店員・亜美の場合~ (完)