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初めての〇〇

初めてのトラブル

作者: 東堂柳

 突然コックピットの中に、不安を煽るような警告音が鳴り響いた。画面を見ると、エンジントラブルの表示がある。両翼のエンジンが、両方とも止まってしまったようだ。


「き、機長! エンジンが全てストップしたようです!」


 副操縦士になりたての僕は、何の前触れもなく、いきなりのトラブル発生に混乱していた。そもそもこんなことは初めてだった。どうしていいのかわからない。

 訓練の時は、今どきの飛行機はコンピュータで安全管理がばっちりできているから、こういうトラブルは滅多に起こることがないので、心配する必要はないなんて言われたというのに、ばっちり起こっているではないか。たった数回のフライトでこんな事態に巻き込まれるなんて。なんてツイてないんだ。

 がたがたと揺れ始める機体に、俺の心拍数が徐々に上がっていく。完全にパニックになって、あたふたと挙動不審な行動をしている。


「ど、どうしたらいいのでしょうか……。私はこのようなエンジントラブルは初めてで、た、対処の仕方が……」


 そんな僕を尻目に、機長は全く動じることなく、


「落ち着け! 焦ってもどうにもならないぞ! しっかりしろ!」


 と冷静に注意する。

 そうだ。この機長は飛行時間六千時間を超えるベテランパイロットだ。そのどっしりと構えた、威厳さえも感じられる風格に、狼狽しきっていた僕は段々と平静さを取り戻しつつあった。

 やはり機長は頼もしい。彼なら、的確な指示を与えてくれるだろう。

 その機長が放った一言で、コックピットに何とも言えない沈黙が訪れた。


「私もこんなエンジントラブルは初めてだ」

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ、殆どの機長は事故なんか一度も会ったことの無い人が殆どだから経験したことなくても仕方ないね!ここでシュミレーションの練習でやった通りに手動で着陸できるのかがよい機長か駄目な機長かの分かれ…
[良い点] 随分序盤でオチは読めてましたけど、それでも面白かったです。 機長オイッ!、って感じですよね(笑) [気になる点] ラスト一言の前、 その機長が放った一言で、コックピットに何とも言えない沈黙…
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