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第二十四話:黎明の救い

「ヴィルヘルム陛下……」


静寂を取り戻した謁見の間に、エーレンとガルドがレオンハルトを伴って歩み寄る。


彼らは、傷つき、立ち尽くす主君の前に跪いた。


「……もう、やめましょう。陛下」


「陛下にも、きっと救いはあります。私たちが力を尽くします」


「……不甲斐ない配下ですが、命を賭してお支えいたします」


膝を突き、涙を零しながら、震える声で忠義を誓う臣下たち。


皇帝としてではなく、一人の孤独な男としてのヴィルヘルムを丸ごと受け入れようとする、真摯な訴え。


「……お前たち……」


ヴィルヘルムは、どうして良いか分からないといった表情で彼らを見つめた。


その光景を、ジャックの腕の中で見届けていたエレナが、小さく息を吐いた。


「……ねえ、ビル。『私しか要らない』なんて言っていたけれど」


エレナは、まだ涙の跡が残る顔で、困ったように微笑む。


「貴方のことを、こんなに大切に思ってくれる人たちが、ちゃんといるじゃない……」


「……」


「本当に、おバカさんね。……だから、目が離せなかったのよ」


泣きながら笑うエレナ。その言葉は、呪縛のようにヴィルヘルムを縛っていた執着を、優しく解いていく。


ヴィルヘルムは天を仰ぎ、自嘲気味に、けれど憑き物が落ちたような顔で笑った。


「……ああ。本当に馬鹿だな、僕は」


その顔は、冷徹な皇帝でも、怯えるビルでもない。ようやく等身大の自分を受け入れ始めた、一人の青年のものだった。


「……さて。両者とも、ひどい傷です。すぐに手当てが必要ですね」


レオンハルトが、場の空気を和らげるように冷静な声を出す。


「はい、すぐに医療魔道師を手配いたします!」


ガルドが弾かれたように立ち上がり、エーレンもまた、深く、長く溜め息を吐いた。


「……本当に、長い一日でしたね」


人智を超えた英雄たちの激突。国を揺るがし、愛を奪い合った戦いにも、ようやく終止符が打たれた。


ルーメンシュタットの長い夜が、ゆっくりと明けようとしている。


空に浮かぶ、今にも消え入りそうだった淡い弓月は――いつの間にか、強い輝きを取り戻していた。


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