表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

日常編 その2・体育という罠

次は体育の時間だ。


……まさか、こんなことで浮くとは思わなかった。


着替えである。


シャツを脱いだ、その瞬間だった。


「……え」

「体、やばくね?」

「ムキムキじゃん……」


ひそひそとした声が、更衣室に広がる。


(……なんでだ?)


確かに鍛えてはいた。

でも、海外では普通だった。


フランスにも、ドイツにも、俺よりでかい奴はいくらでもいた。

筋肉の塊みたいなやつだって、珍しくなかった。


だから、自分の体格を「普通」だと思っていた。


でも、日本では違ったらしい。


視線が集まるのが嫌で、俺はさっさと体操服を着た。


(……静かに過ごすって、意外と難しいな)



今日の種目は、バレーボール。


正直、少しだけ安心した。

サッカーほど目立たないと思ったからだ。


それに、経験もゼロじゃない。


イタリアにいた頃、ほんの少しだけバレーをやったことがある。

手を使う競技だが、ボールの落下地点、フェイント、戦術、瞬間的な判断——

驚くほどサッカーと共通していた。


チームを組み、まずはパス練習。


手でボールを扱う感覚には違和感があったが、新鮮で、少し楽しい。


(……悪くない)


そして、試合形式に移る。


男女混合。

ネットの高さは2メートル24センチ。


(低いな……)


体格差を考えると、正直疑問はあった。

でも、きっと「みんなで楽しむ」ためなんだろう。


そういう時代なのかもしれない。



試合開始。


相手チームには、女子バレー部の選手がいた。


次の瞬間。


——ドンッ。


強烈なスパイクが飛んでくる。


(……っ!?)


完全に油断していた。


女子だから、なんて考えた自分を殴りたくなる。


反射的に体が動いた。


……足で。


ボールは、幸運にもセッターの方向へ上がった。


「あいつ、今……足で取った?」

「え、そんなのアリなの?」


(やば……)


冷や汗が背中を伝う。


次は、攻撃の番だった。


高く上がるトス。

自然と、タイミングを測っている自分がいた。


踏み切り。


——跳ぶ。


「……たっか」


誰かの声が聞こえた気がした。


空中でボールを捉え、思い切り叩き落とす。


——バゴンッ!!


轟音が体育館に響いた。


(……これが、バレーか)


サッカーとは違う。

でも、確かに快感があった。


着地して、我に返る。


……まただ。


全員が、こっちを見ている。


「ジャンプ力おかしくない?」

「今、ボール見えなかったんだけど……」

ヒソヒソと声が聞こえる。


もう、勘弁してほしい。


叶弥は、ゆっくり息を吐いた。


(……学校では、静かに過ごそう)


そう、心に誓った。


——この誓いが、ほとんど守られないことを、

彼はまだ知らない。

次回で日常編が最後になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ