全国大会編④・「最終解答」
別の日。
二つ目の高校は、
大阪から来たチーム。
守備が堅い。
失点が少ないことで有名らしい。
今年は全国を逃したそうだ。
県大会準決勝で、
大阪の東堂学院に惜敗。
フィジカルの強さで有名な学校だ。
だが、
相手の高校も守備は本物。
どれだけ堅いのか楽しみだ。
前半は拮抗。
中央が閉じられる。
なら外。
外が閉じる。
なら中央。
俺がボールを触るたび、相手のラインが揺れる。
35分。
ポストで落とす。
後ろから走り込んだボランチがミドル。
ボールがキーパーに弾かれる。
そのこぼれ球を詰める。
一点。
後半。
徹底マーク。
背中に張り付く。
だが、焦らない。
守備はさらに低くなる。
中央は閉じられ、縦は消される。
62分。
右サイドでボールを受けたのはサイドバック。
前を見る。
ウイングは二枚に挟まれている。
中は密集。
ボランチもマークを背負っている。
一度、横へ預ける。
センターバックに戻る。
しかし戻ってくる。
選択肢が削られていく。
時間だけが流れる。
「どうする……」
小さく漏れる声。
最後に視線が中央へ向く。
背負っているのは俺。
二人に挟まれている。
一人は背中。
もう一人は横。
体を入れれば潰される距離。
明らかに楽な状況じゃない。
それでも。
強い縦パスが差し込まれる。
(……おい、そこ来るのかよ)
挟まれている。
楽な状況じゃない。
それでもボールは迷いなく飛んでくる。
逃げ場はない。
俺は背中で受ける。
当たりは重い。
背中のDFが肩を押し込む。
横から足が伸びる。
ボールが足元で弾む。
二枚。
(ちょっと強引すぎんだろ...)
体を入れる。
一歩ずらす。
こぼれたボールが前へ転がる。
振り抜く。
キーパーが飛び込む。
指先が、わずかに掠れる。
それでも――
ゴールネットが揺れた。
歓声。
だが。
少し離れた位置で見ていた相沢は、
拍手しながら、目を細めていた。
(……今の、他にあったよな)
逆サイドは遅れて上がっていた。
ボランチもフリーになる瞬間があった。
だが誰も見なかった。
最後に見たのは――羽谷。
「ナイス!」
「助かった!」
声が飛ぶ。
俺は軽く手を上げる。
チームは盛り上がる。
そんな中で相沢だけが、静かだった。
(助かった、じゃない)
(頼りすぎてる)
違和感が、はっきりと形を持ち始めていた。
⸻
試合後。
ベンチに戻ると、誰かが言う。
「結局、羽谷だな」
笑い混じり。
否定はできない。
二試合で計四得点一アシスト。
数字は残した。
内容も悪くない。
全国でも通用する。
そう思える。
でも。
ふと、気づく。
どちらの試合も、
“最後は俺を通していた”。
崩しの最終解答が、俺。
それで勝っている。
問題はない。
――今は。
でも。
もし俺が止められたら?
その時、このチームは――
監督がメンバー表を閉じる。
「次は少し相手のレベルを上げる」
静かな声。
キャプテンが反応する。
「どこですか?」
監督は短く答えた。
「社会人だ」
空気が少し変わる。
俺は無意識にスパイクの紐を締め直した。
全国大会まで、あと2週間。
本当の確認は、これからだった。




