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日常編・「天才とは何か?」

教室での雰囲気を話そう。


教室に入った瞬間、いくつもの視線が集まった。


ただ、相手はクラスメイトだ。冷たい空気ではなく、どこかざわついた、軽い熱を帯びた視線だった。


朝のチャイムはまだ鳴っていない。

教室には、椅子を引く音や、机の上に鞄を置く

音が混ざり合っている。


いつもと変わらないはずの風景なのに、今日はやけに落ち着かなかった。


「お、羽谷だ!」


「ローカルのテレビに出てたよな?」


「新聞にも載ってたし、ネットでもちょっと話題だぞ。映えスタとか」


そう言いながら、クラスの一人がスマホの画面を差し出してくる。


そこには、ドリブルで相手を抜き去る俺や、ゴールを決める瞬間の映像が映っていた。


画面の中の自分は、どこか他人みたいだった。

動きも、表情も、記憶の中の感覚より少しだけ誇張されて見える。


コメント欄には賞賛の言葉が並んでいる。

「すげぇ」「別格」「未来のスター」

その中で、特に目についたのは――


天才、という文字だった。


新聞にも大きく見出しが踊っている。

『明瞭学園が破れる!新鋭高校に天才現る』


「まじすげーよ!」


「お前、天才だったんだな」


「試合見た時、天才かと思ったわ」


冗談交じりの声もあれば、本気で感心している声もある。

俺は曖昧に笑って、自分の席に腰を下ろした。


椅子が軋む音が、やけに大きく聞こえた。

胸の奥に、小さな重りが落ちたみたいな感覚が残る。


――まただ。


皆、口を揃えて同じ言葉を使う。


悪気がないことは分かっている。

むしろ、褒め言葉なのだろう。


それでも、その言葉を向けられるたび、説明しきれない違和感が積み重なっていく。


隣の席のやつが、少しだけ声を落として言った。


「正直さ……同じクラスに天才いると、なんか現実味ないよな」


笑っていた。

でも、その目は、さっきまでと少し違って見えた。


俺は何も返さず、机の上に視線を落とす。

ノートの白さが、妙に眩しかった。


――なぜだ?なぜ違和感を感じる


そう考えた瞬間、答えはすぐに浮かんだ。

それは、俺の過去にある。


天才とは何なのだろうか。

天才の定義とは、一体どこにあるのか。


凡人が見た秀才を、天才と呼ぶのか。


それとも、凡人の想像できる範囲に収まる存在を、天才と呼んでいるだけなのか。


天才とは、凡人が作り出した延長線上の言葉にすぎないのではないか。


そんなことを考えていると、

胸の奥に沈んでいた感覚が、ゆっくりと過去へ引きずられていく。


――あの場所。

――あの時間。


俺の意識は、自然と昔の記憶へと引き戻されていった。

過去編がスタートします。

お楽しみに!

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