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部活編・相沢視点

俺の名前は相沢あいざわ 恒一こういち

サッカー部のキャプテンをしている。


去年は県ベスト4。

敗れた相手は、県の絶対王者――明瞭学園高校だった。


大差をつけられいたわけじゃない。


ただ、あの一本。


あれは、俺の判断が半拍遅れた。

そこから流れは変わっていった。


守備の要として、あそこは止めるべきだった。

だから今年こそ、優勝する。

それだけを考えてきた。


……なのに。


昨日のミニゲームが、頭から離れない。


転校してきた一年。

羽谷――だったか。


味方が見えていないようで、

実は一番遠くを見ていた。


パスが来ない状況で、

一人で行くしかないと“理解した上で”仕掛けてきた。


あれは、偶然じゃない。


そんなことを考えていると、


「相沢、あいざわ〜!」


はっとして顔を上げる。


「この問題、解いてくれ。部活で疲れてるのか?」


先生が言った。


「……すみません。大丈夫です」


教室に、少し笑いが起きる。


つい、考えすぎた。


(まあ、放課後だな)


そう思って、ノートに視線を戻した。



放課後。


グラウンドに着くと、いつもの風景が広がっていた。

アップをする部員たち。

ボールの音。

声。


――なのに。


俺は、無意識に視線を動かしていた。


探すつもりはない。

確認する必要もない。


それでも、目が勝手に“そこ”を見る。


……いた。


昨日より、目立たない位置。

動きも少ない。


(今日は、大人しいな)


そう思った瞬間、

逆に違和感が増した。



ミニゲーム。


俺は敵側、センターバックに入る。

ラインを整えながら、前を見る。


羽谷が、一度下がって受けた。


前を向かない。

止めない。


ワンタッチで、横に落とす。


その瞬間――

俺は、反射的に一歩、ラインを上げていた。


ほんの一瞬。

誰かに指示する暇もない。


でも、その一歩で、

中盤に、スペースが生まれた。


ボールは前に進む。

シュートまではいかない。

だが、流れは切れない。


(……昨日なら、ここにはいなかった)


昨日の俺は、もっと後ろにいた。

あいつが“何をするか分からなかった”からだ。


今日は違う。


(今日は、来た)


それだけで、十分だった。


声は出していない。

目も合っていない。


ただ――

ほんの一拍だけ、プレーが軽くなった。


空気が、元に戻った気がした。



その後も、羽谷は何もしない。


昨日みたいに、一人で行かない。

無理な縦もない。

要求もしない。


周りに合わせている。

いや――抑えている。


(……あ)


その瞬間、はっきり分かった。


(こいつ、“選んで”やってる)


できないからじゃない。

昨日できたことを、今日はやらない。


偶然じゃない。


名前が、頭に浮かぶ。


羽谷。


……いや。


羽谷 叶弥。


その瞬間、

昨日のプレーが、一本の線で繋がった。


(まだだ)


自分に言い聞かせる。


(判断するには、まだ早い)


でも――

視線は、もう外れなかった。


キャプテン視点も書いてみました!

そろそろ第二章も終わりです。

これからも作品を楽しんでいただけたら幸いです。

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