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第5章:クール剣士は見た! 衝撃の「全自動顔面シャワー」!

 アッシュ・グレイソードとかいう、顔面偏差値は天元突破してるが性格は底辺スレスレなクール系イケメン剣士が俺たちのパーティーに(なし崩し的に)加わってから一夜。


 道中の雰囲気は、昨日までとは打って変わって妙な緊張感に包まれていた。

 主に俺とアッシュの間に流れる、見えない火花(というか一方的なアッシュからの冷たい視線)のせいだが。

 

 リリアーナは、昨日の盗賊騒ぎで俺の股間キャノン(聖水(仮)改め、もはやリリアーナ専用ドーピング剤)の威力を目の当たりにしたアッシュに、少しでも俺のことを見直してほしいのか、道すがらせっせと俺の「功績」をアピールしている。


「あの白い液体は本当にすごいのよ!  私、普通の魔法使いなのに、あれを浴びると超強くなれるんだから!  昨日だって、盗賊団なんてあっという間だったし!」

「フン、付け焼刃の力だな。それに、術師本人への負担も大きいようだ。お前、まだ顔色が悪いぞ」


 アッシュはリリアーナの言葉を鼻で笑い、的確な指摘で彼女の顔を曇らせる。

 うぐっ、こいつ、本当にデリカシーってものを母親の胎内に置き忘れてきたタイプだな。


 そんなギスギスした(?)雰囲気の中、俺たちは王都へ続く道の中でも特に危険とされる難所――「ワイバーンの巣窟」と呼ばれる断崖絶壁の続く峠道に差し掛かっていた。

 

「おい、気を抜くなよ。この辺りから、いつ奴らが現れてもおかしくない」

 

 アッシュが鋭い視線で周囲を警戒する。

 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、空気を切り裂くような甲高い咆哮と共に、巨大な翼を持つ爬虫類型の魔物――ワイバーンが数体、急降下してきた!


「出たな!  リリアーナ、援護を頼む!」


 アッシュが瞬時に剣を抜き、先行してワイバーンの一体に斬りかかる。

 その剣技は、素人目にも分かるほど洗練されていて、美しい。

 さすが、口は悪いが実力は本物らしい。

 

「私も戦うわ!  聖水(仮)をお願い!」

 

 リリアーナが、決意を込めた表情で俺に向かって顔を差し出す。

 よし来た!

 今こそ俺の「液体供給役」としての真価を見せるとき!


 俺は、以前よりも幾分か手慣れた感じで、リリアーナの顔面めがけて股間キャノンを発射……しようとした、その瞬間だった。

 

 ブシュッ! ブブブシュシュシュゥゥゥーーーーーッ!!

 

「え!?  ちょ、おま、なんで!?」


 俺の意思とは無関係に、股間キャノンが、まるで壊れたスプリンクラーか水鉄砲のように、断続的かつ制御不能な勢いで白い液体を噴射し始めただ!

 しかも、狙いすましたかのようにリリアーナの顔面に向けて!


「ひぎゃああああっ!?  ま、前が見えないいいい! なんなのこの断続的な顔面攻撃はぁぁ!?」

 

 リリアーナは、顔面を白いシャワーで連続的に攻撃されながら、悲鳴を上げる。

 しかし、同時に彼女の身体からは虹色のオーラが噴き上がり、魔力はみるみるうちに増大していく。

 

「で、でもでも!  力は、力は確かに来てるぅぅぅぅ!!  ええい、ままよ!  目隠し乱れ撃ちいいい!」

 

 完全にヤケクソになったリリアーナは、目をギュッと瞑ったまま、杖を振り回して超絶魔法を四方八方に乱射し始めた!

 巨大な火球が空を舞い、氷の槍が地面から突き出し、雷の柱が天から降り注ぐ。

 その無差別攻撃は、運良く数体のワイバーンを撃墜したが、同時に周囲の地形を派手に破壊し、俺とアッシュも危うく巻き込まれそうになる。


「……お前たち、本気でやっているのか……?」

 

 アッシュが、そのあまりにもシュールでアホらしい光景に、さすがのクールフェイスも引きつらせて絶句している。

 無理もない。

 俺だって絶句したい。

 というか、誰かこの全自動顔面シャワーを止めてくれ!


「うっぷ……も、もう……一滴も浴びたくないし、顔もヒリヒリするし、魔力も限界だし、一歩も動けない……パタッ」


 リリアーナは、連続自動顔面シャワーと無差別魔法乱射のコンボで完全にキャパオーバーになったらしく、ついにその場にへたり込んでしまった。

 虹色のオーラも消え、ぐったりとしている。


「ちっ、役立たずどもが!」

 

 アッシュは悪態をつきながらも、残ったワイバーンに向かって華麗な剣技を繰り出す。

 空中で三次元的な動きをするワイバーンを相手に、まるで踊るように立ち回り、的確にその急所を貫いていく。

 

 強い。マジで強いぞ、このイケメン。


 全てのワイバーンを仕留め終えたアッシュは、剣についた血を振り払い、疲労困憊のリリアーナと、なぜか股間を押さえて「あ、あれ? やっと止まった……のか?」と安堵と不安が入り混じった表情をしている俺を見て、深ーーーーーいため息をついた。

 

「……とりあえず、その液体、もう少しコントロールできないのか……」

「ぜ、善処します……」


(でもどうやって!?  コツとかあんのか、これ!?)


 俺は力なく答えるしかなかった。


 アッシュは、俺のあまりにも未熟な「液体供給っぷり」に呆れ果てたようだったが、同時に、制御不能とはいえ、あのリリアーナの爆発的なパワーアップを目の当たりにして、俺の能力のポテンシャル(と底知れない危険性)を改めて認識したようだった。


 その証拠に、彼の俺を見る目に、ほんの少しだけ「コイツ、マジでヤベェな」という感情が加わったような気がする。

 ……気のせいかもしれないけど。


 リリアーナの疲労はピークに達しており、この先進軍するのは無理そうだ。

 

「仕方ない、今日はこの近くで野営する。お前は、その役立たずの股間がまた暴発しないように、しっかり管理しておけ」


 アッシュの言葉に、俺は力なく頷く。

 

「液体供給役」としてのプロ意識……というより、もはや「暴発管理責任者」としての自覚が、俺の中で芽生え始めていた。

 この役立たずの股間キャノン、どうにかして制御できるようにならねえと、いつか本当に世界を滅ぼしかねないぞ……。

 いろんな意味で。

 

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