カミキタへの道
ヴァスノミアを出て、しばらくは静かな道が続いた
峠を超えると風が冷たくなった
冷たさの質が段違いだ
「風がヒヤッとする」
ミリが更に上着を着込んだ
土は白く、ざらざらとした霜のようなものが地面を覆っている
「雪、じゃないんだよな……欠片みたいな」
アオは膝をつき、地面を指でなぞる
冷たく、指先に貼りついた
「ここから先がカミキタの都市か」
空を見上げる
前方の雲が、徐々に【雪雲】へと変わりつつあるように見えた
「空気が濡れてるみたいな感覚になる」
「雪の予感って、こういうのかな」
風の音が変わる
サァーからヒューへ
ミリが立ち止まった
「見て あれ」
斜面の途中に小さな家があった
瓦礫ではなくちゃんとある
2人は近づいた
中には何もなかった
ただ壁に異様な文字が刻まれている
「しずかにして ねむってるから」
ミリが息を呑んだ
「……誰が?」
「ここで何があったんだ?」
アオが壁をなぞると風が家の中に吹き込んだ
目的地に近づいている
そんな予感がする
――
「この辺……動物の気配もない」
「足跡も……人も」
道は崩れ、白い粉に埋もれていた
遠くに何かが見える
柱のようにまっすぐ立った白い何か
物や雪ではない
2人は近づいた
「これ……人の像?」
ミリがリアルさに怯える
歩いている途中で凍りついた人の像
表面は白くなめらかで、人は笑っていた
「ちがう……像じゃない……本物だ」
アオが思わず後ずさりしながら言う
凍っていた
皮膚も着ている服も劣化がない
――そのまま、時間ごと閉じこめられている
強い風が吹く
笑っていた顔が半分崩れる
地面には雪のような粒だけが残る
アオは石板に手を伸ばした
何も反応しない
「欠片は、ここでは無いのか」
都市の中心へと向かう
空が白くなってきた
はじめて体験する雪が空から落ちてくる
「降ってきた……キレイ」
ミリが見上げる
アオも一緒に雪を眺める
街の異様さなど忘れるほどに




