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六階建て

それは街の残骸の中でも異質だった

この建物だけは整っている


「……入るの?」

ミリがかすれた声で尋ねる

発声出来る1番小さい声だろう

緊張感が伝わる

「大丈夫 石板がある」

根拠にならないが、何となく意味が分かる返答をする


入口の扉は、最初から開いていた

見た事も無いような透明なガラスだ

何となく触らないように、身体を横にしながら中に入る


中は窓も少なく暗かった

しかし【紫色】の光が溢れていた

「空の【ひび】と同じ色」

「かもな……天気図が近いという事なのかも」


足元は布が敷いてあるのか少しフカフカする

「凄い 王室みたいだ」

アオが王室に行った事も無いのにイメージだけで言う


1階は店だったのだろうか?

カウンターのような所と椅子がある


「あっちから上に行けそう」

ミリが何かに気づき指を指す

階段の形のマークが天井から下がっている


「よし こういうのは1番上に何かあるものだろう」

また根拠も無くアオが答える

「それは絵本とかでしょ? まぁ絵本みたいな所だから行くしか無いね」

ミリが突っ込むが結局上に向かう


――


階段は奥まったところにあった

一段、一段、慎重に登る

背後で【カタン】と音がした

振り向いても、何もいない

「……風だよね」

「風、無いけどな」


しばらく上がると

上からは低く唸るような音が漏れていた


音は1番上の6階から流れてきている

2人は目を合わせ、無言で最後の階段を登る

――そして

廊下に出る

外に居るかのような明るい紫の空間

空間のひびの影響が大きい

最奥の部屋――その扉の向こうに、何かがいる

そんな気配を感じる


アオは石板を構え直す

ミリがそっと頷く

「行こう」

2人は手を伸ばした



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