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雷に到着

2人は村を後にして、さらに歩き続けた

石板の雨も止んだ空

踏みしめる地面は乾いていて足取りも軽快だ


そして、丘を越えた瞬間――空気が変わった

「ここが……ヴァスノミア?」

アオの声が思わず漏れる


眼下に広がるのは、雷が走る黒雲の海

そして、かつて都市と呼ばれたものの亡骸

瓦礫に埋もれた塔

建物だったであろう四角い物体

そして、何より――空

「空が……裂けてる?」

ミリがそう呟いた

大地から天へ【ひび】のようなものが浮かんでいる

中は紫がかった光がきらめいていた

「これが……天気図の歪み?」


まるで巨大な地図が破れたように目の前にギザギザを作っていた

「入るのか、こんなとこに」

「……でも、ここに来るしかなかった」

2人は見つめ合う

覚悟を決める


――


一歩踏み出すたびに、空気が重くなる

雷喰らいに会った時のように毛が逆立つ


心配していた雷は無かった

外から見ると雷が落ち続けているのに

中に入ると物音ひとつしない


「変だ……ここだけ時間が止まってるみたいだ」

「きっと、時間も……歪んでる」

ミリが懐中時計を取り出す

秒針は、止まったまま微動だにしなかった


裂け目に入ってからは不気味だが快適だった

ほとんどの場所にまっすぐ行ける整備された道

不思議と歩きやすく固く黒い舗装

崩れていたりする場所もあまり無い

「……ここ、本当に街だったの?」

ミリが思わず口にするがアオは答えようが無かった


自分の知っている街とはまるで規模が違う

建物の形も違う

人が住んでいたのかどうかさえ分からない

全く自分の常識が通用しない


通りを歩いていると

雨の都市に近いような、平屋の住居を見つける

建物の1つは扉が開いていた


「見るよ」

思わずミリに宣言する

ミリは声を出さず頷くだけで返した


恐る恐る覗き込む

机や椅子が整然と並んでいる

やはり人が住んでいた住居のようだ

キレイなまま残っていた

ただ、人の姿だけが無く


「ぶはぁ~」

思わず息を止めていたアオが深く息を吐く

「ぶはぁ~」

ミリも止めていたのか後ろで息を吐く

2人とも顔を見合うと、何だか可笑しく久しぶりに笑い合う


――


都市の中心部に行くほど、建物が原型を保っていた

風化という概念が無いのかもしれない

6階建てはありそうな巨大な建物

屋上には鉄の塔

都市の骨格はどこか【意図的に】残されているようだった


アオが石板をぎゅっと握る

「ここにきっと天気図の欠片【雷の章】が……」

空のひびが明るくきらめく

まるで、それが返事のように

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