最終話 空の記憶 未来
――宇宙エレベーターの最上部
そこは太陽の花と呼ばれる
中央にはかつて科学者たちが記録した情報が残されていた
巨大な石板――科学の結晶であり、人間の最後の祈りだった
アオとミリが石板に触れる
膨大な情報と記憶が流れ込む
【おかえりなさい、末裔よ】
それは、崩壊前に遺した最期の意思だった
「もう私たちの時代は、未来を選べない」
「だが、あなたたちなら世界を1つにして空に届く」
それぞれに話す古代の科学者たち
その誰もが、自らの子孫を信じて未来を託した
覚悟はもう出来ている
アオとミリは起動キーを押す
天気図が、空花が、全て統合されていく
その瞬間――世界のねじれが逆に動く
捻じれた世界の骨が音を立ててまっすぐに戻っていく
シャフトがきしむ
宇宙エレベーターは崩壊を始め、地上に残されたマリョが叫ぶ
「アオ! ミリ!」
その声は届かない
天気図が修復されると空に花が咲いた
金色の、静かで巨大な空に浮かぶ「ひまわり」
畳まれていた広大な装置が静かに空に展開する
世界の天を調和する、新たな空花として咲いている
天候を無理矢理操作するのでは無く
昔の自然な環境に戻る手助けをするためだけに
古代
西暦がまだ使われていた頃に戻ったかのような
豊かな空が広がる
――
雷の都市ヴァスノミア
雷がやみ新住民が移住を始めた
雪の都市カミキタ
新しい世代に希望を繋げ米作りに励んでいる
晴れの都市フェニックス
地表に再び緑が芽吹き、地下から人々が出てくる
風の都市サート
空鰹が風に舞い、研究者たちが青空と養殖の研究をしている
そして雨の都市
雨がやみ
初めての日差しに喜ぶと共にアオとミリの帰りを待っている
マリョは書き続ける
すべてを忘れないために
青空を背負った少年と
雨をまとう少女の話を
――
エピローグ
世界はもう【空模様】で都市を縛ることはない
どこかで雨が降り、どこかで太陽が照り、どこかで雪が降り、風が舞う
それらはすべて、ただの【普通なこと】になった
大昔の地球のように
それが、どれだけ貴重だったかを知る者は少ない
世界が【当たり前】を取り戻したのだから
新しい伝説が増えた
2人の旅人の話
1人は青空を背負い
1人は雨をまとい
雷の街も、雪の都も、嵐の都市も、地下も巡る
マリョの書いた話しは教科書にも載っている
それを手に取った子どもたちは、こう言う
「ねえ、本当にいたの?」
「空を直した人たちって、本当に宇宙にいるの?」
誰も答えられない
誰も知らない
しかし
空を見上げた者だけがそっと気づく
――空に、あの花が咲いていることを
作者メモ
会話だらけでテンポが悪い
今後の作品の反省点にします
完結して良かったです
雨の都市に名前が無いのは
読者それぞれの住んでる所という事で
ネタバレコーナー
鰹辺りで「んっ?」と感づいた方も居るでしょうか?
サート→土佐
マリョ→竜馬
高知県
強風の室戸岬が有名です
浮島が4つ→四国
雷の獣は電気で動いてた機械動物だよ
とか他にもありますがチラ裏になってしまうので、活動報告であとがき