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過去の記憶

「まだ動いてる装置がある」

マリョが埃まみれの画面を拭く

こっこうの章?

『雨制御の失敗と修正案』

『50年以内に臨界』

「過去の人たちが、天気を無理やり変えようとしたの?」


そして映像が流れる

空に届くバベルの塔

その頂から、ふわりと浮かび上がる花のような光

五つに分かれ、空に散る

「これが……花?空に咲く花のこと?」

「5つ……雨 雷 雪 風 晴れ」


人類の罪を悔い、塔に鍵を隠す者

『風は拒み 雪は感情を封じ 雷は時間をとめ 陽は全てを燃やす』

『雨は全てを見届ける者なり 鍵はその者に預けられる』

「雨の民……」

アオの呟きにミリが反応する


――


『バッテリーロスト』

装置が動きそうな所で画面が消えてしまう


「……止まった?」

ミリが不思議そうに画面をつつく

アオが表示に気づく

「雷のマークが点滅してる……もしかして雷の章を使えば」

アオが石板を取り出す時にマリョが早口で言う

「分かりました!この建物は全て雷のちからで動いており、雷の都市に雷が落ちない事で機能を停止しました 人型はすぐに停止しますが、装置は予備の雷で動いていたのでしょう――雷を使ってちからを――」

話し半分にアオが聞きながら石板を触る

「雷の章お願い!」

目の前に雷雲が出来た

少し見つめ合った感じがしながら宙に舞い上がる

「バチッ!」

放電の閃光


塔全体が昼のように輝き出す

スイッチ、パネル、ディスプレイ――眠っていた機構が次々に息を吹き返す

まだ説明していたマリョが思わず黙る

「……うわぁ~」


塔の最上部にまで光が届く

地上と空が繋がる

1億年ぶりに


――


中央制御室の扉が開き塔の心臓部が現れる

天井まで吹き抜けの空間

中心には1本の柱

天へ向かって伸びている


周囲には石碑のような端末があり1つが光っている

「これ……」

アオが近づくと、石碑が自動で起動した

太陽の花

黄金の花

禁断の太陽

風花

二つ目の太陽

『起動キー認証完了』


伝承にある、この施設のおこなった事

知るべきではなかったとすら思わせる


石碑と石板が共に光る

全ての石板の記憶がアオに流れ込む

【地球 科学技術 戦争 崩壊 気象操作 研究者 末裔 アオ ミリ】

膨大な情報の波に襲われ、ふたりは同時に膝をつく

「おいっ! 急に大丈夫か」

マリョが慌ててるのが見える


「大丈夫」

全て分かった

俺は技術者の末裔

世界に青空をもたらさないと


「大丈夫だよ」

やっと分かった

私は雨を操る一族

世界に恵みの雨を降らせる


2人に人類全ての知識が入り込む


――


『選定者へ告ぐ』

『選択せよ』

空の花は1つ

5つの章に割れた今、それは再び咲くことも、あるいは眠ることもできる


『咲かせれば天は昔を取り戻す』

『しかし、戻すことも帰る事も出来ない』

『鍵は【雨の章】の主に委ねられる』

『起動時:シャフト破損可能性99%』


『過去のように気候を操作するために起動するのではない

 元の環境に戻すためだけに全エネルギーを消費する』


『元に戻すなら空花を咲かせよ』

『平等を求めるなら空花を隠せ』

『すべてを揃えし者が、どちらか選ぶ』

3人は沈黙した


――


マリョは意見を絞り出した

「私はどちらも正しいとは思えない 選べるのは……旅してきた君たちだ」


かつて空を失った人類

それでも空を取り戻そうと、想いを石板に託し続けた者たち

その記憶が、今ふたりの胸に息づいている


「……やっぱり、僕がやらないといけないんだ」

運命のようなものを感じてアオが言う

「私も行く」

隣でミリが言う

彼女の瞳もまた、覚悟を決めていた

「私は雨を制御する一族 空が晴れるだけじゃ、世界は戻らない」

アオが目を見開く

「1人だと……寂しいでしょ?」

ミリがいつも通り笑う

「アオと私で空を完成させよう 2人でなら、きっとできる」


マリョが口を開く

「それなら私も一緒に――」

「君にはやってほしいことがある」

アオが振り返り強めに言う

「未来に伝えるんだ 壊れた世界がどうなったか、どうやって戻したか、2度と同じ事が無いように」

「……クソ」

マリョは唇を噛み、うなずいた

「私、書くから 誰にも忘れられないように」

3人は手を重ねた

一緒に手を繋ぐのは初めてかもしれない

アオとミリの体温を覚える


2人は並んで扉の前に立った

その先に待つのは空の果て

宇宙


旅に出る前には夢にも思わなかった

空のその先へ進む


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