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3崩れる平穏③

ガルは南地区に面している門へと走っていた。冒険者時代に身に着けていた鎧を身に纏い、大剣を背に担ぎ吹き荒れる風のように走り抜ける。ガル・グレイブスはこの村出身ではない。5年前、25の時にここカルソー村を訪れ村長の娘に一目惚れし求婚、当時所属していたパーティーをすったもんだの末に何とか認めさせ村長に土下座し結婚を認められたのだ。警鐘の音にどこか緊張を隠せない村の様子を肌で感じながらもとある一軒の家の前で立ち止まる。呼吸を整えると力強く戸を叩いた。


「ゴートっ!いるか!俺だっ!ガルだっ!開けてくれっ!」


少しも待たずに戸が開けられ朴訥とした青年が現れる。警鐘を聞きつけたからだろう既に装備を身に着けている。


「ガルさん?」


「いいか?南の方からオーク共が群れを成してこの村に近づいてきてる。俺は行かなきゃならん。お前には南地区の避難の呼びかけを頼みたい。教会に受け入れてくれるようボルドが言ってたから多分大丈夫だ、できるな?」


事態の重さに目を見張るもすぐに覚悟を決めゆっくりとだが確かに頷くゴートに頷きを返すとガルは頼んだぞと言い残し走り去っていった。


ゴート・レンデルはロックとパーティーを組む青年だ。無口で食い意地ばかり張るのろまな奴と陰口叩かれていたのをロックが勧誘。がっしりとした体格、我慢強い性格を見抜きパーティーの盾役へと仕立てあげたのだ。

ラージレザーシ-ルドとメイスを構えた盾役であるゴートが加わったことでパーティーの安定度はぐっと増したのである。


ゴートは即座に行動を開始する。近い家々を回り口下手なりに事態を説明し避難を促す。





教会まであと半分といったところでボルドが前方から走ってくるのが見えた。


「おうっ、あと半分ってところか」


こくんと頷く。


「次は?」


避難誘導が終わった後はどうする?と聞きたいのだろうが、簡潔な物言いしかできないゴートに少しだけ悩んだボルドは告げる。


「南門へは冒険者と血の気の多いやつを送っちまったからな。お前らは教会を頼む、あいつらにも言っといてくれ。」


あいつらとはパーティーメンバーのロック、デニス、レーネのことだ。


ボルドと別れたゴートは避難誘導を続け教会の門扉で話し合っていた3人へと近づく。


「だーかーらっ俺らも行った方がいいに決まってんだろ」


「馬鹿言うな皆あっちに行っちまったんだから俺らはここを守るべきだ」


「デニス守るより攻める方が好きだもんね~」


デニスは南門へ向かい戦うべきだと主張し、ロックはここに留まり村人を守るべきだと主張する。もう一人の軽装に弓を持ち腰に短杖を挿した少女レーネ・セラーズはどちらでもないようだった。


そうこうしているうちにゴートの存在に気づいた4人は集合し、ボルドの言葉を伝える。


「ボルドさん言ってた、ここ守れって」


早く冒険者として名を馳せたいデニスは不満そうだったが、こういった窮地を何度も潜り抜けてきたであろうベテランのボルドの言葉とあれば従うしかない。


道の向こうからゴブリンやオーク共が数匹近づいてきているのが分かった。魔物の群れは大多数が南門付近でガル達と戦っているものの最低限の柵で囲われただけの村の守りなどどこからでも入り放題なのだから侵入そのものを防ぐのは無理だ。散発的に襲われてしまえば守り切れるはずもないゆえに村人を集め疑似的な籠城戦としたのだ。


「しゃあねえ、気やがれ魔物ども!」


パーティーのリーダーであるデニスがロングソードを掲げ意気を上げると村人たちもそれぞれの武器である農具や包丁を掲げ声を上げる。


村の明日を守るための必死の抵抗が始まろうとしていた。

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