12 決着・・・?
3人が戻るまでの時間稼ぎを果たすべくロックは身構える。右手には投げナイフを掴み左手はポーチから赤色の球を取り出す。突っ込んでくるオークジェネラルに投げナイフを放つが浅くしか刺さらず突進を止めるまで至らない。4人の中で残ったロックが大した脅威ではないと判断したのかスピードを緩めるどころか加速して跳ね飛ばさんと驀進してくる。
ロックは自身の投げたナイフが然したる痛打を与えられなかった事実に少なからず落胆を覚えていたが、すぐに気を取り直す。つまり勇者のもたらした力は外付けの力ではなく本人に眠っているであろう潜在能力を引き出すタイプだ。ならば納得するしかない、自分の能力が伸び悩んでいたことは前から分かっていた。つまりいつも通りだ。倒すのは3人の役目であり自分は時間稼ぎに徹するのだ。数Mまで近づいてきているオークジェネラルの鼻先に向けて赤色の球を放るとロックは横っ飛びにダイブしこれから起きる悲惨な出来事から物理的に逃げるのだった。
オークジェネラルは怒っていた。目の前の雑魚がいかなる手段を講じようともこの体を傷つけられるはずはないのだ。先ほど殺した大層な剣の使い手も、その隣にいた魔術師の男も自分に碌な傷もつけられず叩き殺してやった。あの御方の命があと少しで叶うというのに思わぬ邪魔が入ったことに苛立ちが抑えきれなかった。オークジェネラルは目前に投げられた赤色の球を煩わしいとばかりに薙ぎ払う、盛大に後悔することも知らずに。
「っ!?」
腕に当たった瞬間球が爆ぜ中から赤色の粉末が撒き散らされる。また目くらましかと構わずに勢いそのままに突っ切るが既にロックはいない。たたらを踏み哀れな獲物の姿を探そうとするも自身に生じた異変を感じた。赤い粉末を浴びた個所が痛みを訴えている。今まで感じたことのない痛みにたまらず地面を転げまわりのたうち回った。
大音量の絶叫を上げ全身を搔きむしるオークジェネラルの姿に顔を顰めていると3人が戻ってきた。それぞれの手にはロックが指示した獲物が握られている。デニスは半分に折れてしまったガルの大剣を、レーネはボルドの長杖を。ゴートの獲物は大きな戦槌であり、神が振るったとされる槌を模したレプリカだった。教会入ってすぐに飾られているのをロックは思い出しゴートに取ってこさせたのだ。
「まさかとは思ったが効いたんだな激辛球」
「うっわ、痛そー」
「効くかどうか賭けだったんだけどな。御覧の有様だ」
ロックが投げた赤い球は通称激辛球、商人や行商人、自分の知る限りのツテを使って仕入れてもらった様々な物品のなかでとりわけ辛みの強いものを乾燥、すり潰し粉末状にしたものが内容物であり以前誤って誤爆したときは阿鼻叫喚になったいろんな意味で奥の手である。ちなみに器は卵の殻だが迂闊に割ることのないように蝋でコーティングしている。
「さて色々言いたいことはあるが魔物相手じゃ無駄だな。レーネ、ゴート、俺の順で止めを刺そう。ロックは警戒を頼む」
半ばから折れたとはいえ元が大剣であるがゆえに未だ実用に足る長さを残す元大剣を構えるデニスと戦槌を構えるゴート。レーネは杖を構え詠唱を始め、ロックは全体を見渡せるように数歩下がる。詠唱が進むにつれレーネから魔力が立ち昇る、蹲り悶絶していたオークジェネラルだったが本能で危機を察知したのだろう。掻きむしったことで全身を血だらけにしながらもレーネに襲い掛かろうとするがロックの放つ投げナイフがぼろぼろになった肌に文字通り突き刺すような刺激となって襲い掛かり一瞬動きが止まる。そしてその一瞬が明暗を分けた。
「ファイアボルトオオオォッ!!!」
増幅された魔術が頭上に小さな太陽を生み出し放たれる。硬直していたオークジェネラルは避ける間もなく直撃、再度絶叫を上げさせる。
「ふんっ!!」
背後に移動していたゴートは音が鳴るほどに柄を握りしめると振りかぶって膝裏を打ち据える。片膝をつかされ無理やりに態勢を崩された哀れな獲物は最後の一撃を受ける道しか残されていない。
「終わりだぁっ!!!」
剣を上段に構えたデニスは地面を蹴って跳躍、袈裟懸けに振り下ろすと斜めに一閃、深々と切り裂いた。オークジェネラルは夥しい血を流しながら崩れ落ちる。確かな手ごたえを感じ取ったデニスは高々と剣を掲げ勝鬨を上げる。
「俺たちの勝ちだあああぁっ!!!」
デニスの勝鬨に村民が呼応し歓声が上がるはずなのだが誰の声も聞こえない。
「?」
怪訝に思った4人の耳に届いたのはあまりにも場違いな拍手だった。
何かがおかしい・・・拭えない違和感に4人は恐る恐る教会の方を見やり・・・・・・絶句した。
残らず倒れている村人達のなかに一人だけ男が立ち拍手していたのだ。
戦闘描写が苦手過ぎる・・・ランク4とか書いたくせに雑魚っぽくなってしまった
チュートリアル特有の楽勝イベント戦闘みたいなもんだと思ってください