1崩れる平穏①
悲鳴が上がり人々は逃げ惑う。辺りの家屋は崩れ所々黒煙を吐き出している。長閑な村を襲うのは醜悪な緑色の小人<ゴブリン>と二足歩行する豚<オーク>だ。単体ならそれほど脅威でないそれこそ新米の冒険者だって倒せてしまうこの2種は数百にも及ぶような大群となってここカルソーの村を蹂躙せんとしていた。
「・・・はあっ、はあっ・・・くそっ」
辺りを悲鳴が響き渡る中悪態付きながら走る青年がいた。お古の革鎧を着こみ腕には年季の入った小盾とショートソードが握られている。中肉中背の茶髪、これといった特徴のない顔立ちの青年だ。名をロック・ウォード。ここカルソー村出身であり17歳の新米冒険者だ。
「・・・!・・・!?」
走る先で喧騒が耳に届きそちらに進路を変えると程なくして現場が目に入った。数匹のゴブリンとオークに挟まれながらも諦めずに奮戦する見知った顔を見つけ声を上げる。
「デニスーーーっ!」
剣を左手に持ちかえると空いた右手で腰へと手を伸ばす。ベルトに挟んでいた投げナイフを3本つかみ取るとこちらへと振り向かんとしていたオークに目掛け投擲した。放った3本のうち2本が胴体と肩に刺さりオークが悲鳴を上げ、その隙を見逃すはずもなくデニスと呼ばれた青年が背後からロングソードを見舞った。短い断末魔を上げ崩れ落ちるオークを飛び越えデニスはロックと並び立つ。
「すまんっ助かった」
「気にすんな、大丈夫か?」
ロックと同じ革鎧を身に着けロングソードを構えるこの青年はデニス・テイラー、ロックの相棒である冒険者だ。
ロックよりも上背があり顔つきも悪くなく金髪である彼は村の女衆から人気がある。
「ゴブリンは俺がやる」
「任せた」
ゴブリン4匹オーク2匹の戦力差をみて即座に判断する。単純にロックのショートソードではオークの厚い脂肪を断ち切るのに向かないからだ。ベルトから新たに4本抜き出すと1本デニスへと渡す。目線だけで頷き受け取ると両者はそれぞれの獲物へと投げ放った。
ゴブリンは地方によっては小鬼とも呼ばれるが、少なくともこのあたりに生息する種はそんな大層な名では呼ばれない。知能は低く体力もない、せいぜい薄汚れた爪や牙での攻撃しかしてこず革鎧を傷つける威力もない。魔物ですらない野犬の方がまだ怖いものだ。野犬に追い回されている現場をロックも見たことがありデニスとともに笑ってしまった。だがそれでもゴブリンは魔物なのだ、爪や牙が皮膚に触れれば傷がつき様々な病気にかかる可能性があり田舎では治せずに亡くなる冒険者はたまにいるのが実情だ。
散会せず固まりあってこちらを睨むゴブリン4匹の中心あたりへと投げられたナイフは顔や体、命中箇所に差はあれど過たず刺さり悲鳴を上げさせる。投げると同時に走り出したロックは刺さらなかったものの動揺を隠せない一匹に向け剣を突き出し深々と刺した。内臓をえぐった確かな感触を感じると即座に引き抜き残る3匹へと襲い掛かった。バックラーを叩きつけながらショートソードを振るい確実に一匹ずつ殺していく。
ロックから受け取ったナイフを構えるデニスだが、その構えは刺さるように狙って放ったロックと違いそこらの石でも投げるかのように雑だった。17にして村の男衆よりも腕力のあるデニスが投げたそれは切っ先はもちろん柄だろうがぶち当たればただではすまない威力がある。突き出たオークの腹に向かって投げられたナイフは運よく刃が深々と刺さり悲鳴を上げさせる。蹲った一匹を戦闘不能にしたと判断したデニスはもう一匹へと襲い掛かる。
オークは上背こそないものの体積が横に広い魔物だ、それ即ちその体重を支える筋肉もまた備えている。
その一撃はまともに当たればデニスとてひとたまりもないのだ、当たればの話だが。振り上げられた腕が豚そっくりの鳴き声とともに振り下ろされるがデニスは軽く横に移動しただけで避けてしまう。デニスが凄いのかというとそうではない、彼とてロックと同じく半年前に冒険者になったばかりのまだ新米である。ではなぜこんなにも簡単に避けれるのかというと単純にとろいのだ。当たらなければ怖くないはどの世界でも通じるのだ。
振り下ろしでがら空きになった頭部に向けて一閃、顔面をたたき割られた一匹は沈み未だ蹲るもう一匹の首も無慈悲に切り裂いた。
とりあえず完結させることを目標としたいです拙い作ですがよろしくお願いします。
ヒロインどうしようかな・・・