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北方海の守護天使  作者: h.hiro
7/33

第5話「旧ドック」

「これでよし。」

恵理香はタブレットで作成した報告書の誤字や脱字を確認すると保存して一息つく。

「ようやく終ったみたいだね。」

そんな恵理香の後ろからタブレットを覗き込んで声を掛けて来たのはロベリヤだった。

「ええ終りましたよロベリヤ、お待たせしました。」

恵理香が前回あった仕事の報告書作成を終えるのを、事務所を訪れていたロベリヤは待っていたのだった。

あの巨大シーサーペント事件以降ロベリヤは牧瀬商会に頻繁に顔を出す様になった、今ではギルド本部に居るよりこちらに居る方が長い。

「それじゃお茶にしよう。」

そう言ってロベリヤは冷蔵庫に向かい扉を開けると箱を出してくる。

「イチゴのショートケーキとモンブランだよ、どっちにする恵理香?」

箱に書いてある店名は近所にあるお菓子専門店、近隣の女性達に絶大な人気のお店だ。

「でももう直ぐ夕食ですが大丈夫ですか?」

時計を見ると18時を過ぎているので恵理香はロベリヤに確認する。

「何言ってるのかな恵理香、これは別腹だよ。」

ロベリヤの女性とってお菓子を食するとはそういう事だと言う見解に恵理香は苦笑する。

まあ恵理香だって人の事を言えないが、食事前だというのに甘い物を食したいという誘惑に駆られているのだから。

むしろこちらに転生する前は甘いものは嫌いではなかった恵理香にしてみれば、堂々と食べられる様になって密かに喜んでいたりするのだが。

「そうですね、じゃお茶入れますね、紅茶でいいですねロベリヤ?」

「ああ頼むよ。」

結局恵理香はお菓子の誘惑に勝てず、ロベリヤと2人でのお茶会が始まる。

「う~ん、美味ね。」

ショートケーキを食べながらロベリヤはうっとりした表情を浮かべる、普段は巷のイケメン男性顔負けの彼女もこの場面では違うようだ。

「くすくす、本当に幸せそうですねロベリヤは?」

「そうだよねこれがあれば今はもう何も要らないよ気分だよ。」

ケーキを食べるだけで幸せになれるのは女性ならではないだろうかと恵理香は思う。

「恵理香は違うのかい?」

「そりゃまあ嬉しいですが。」

恵理香はまだロベリヤみたいには成れていないなと思った。

とはいえ美味しいことは確かで、本当に女性の方へ向かっているなと少々危機感を持つ恵理香だった。

自分で入れた紅茶を飲み、残りに手を付け様とした時、突然事務所の扉が開かれる。

「牧瀬艦長は居るか!?」

突然の来訪者は、ハンターギルド長のレイア・マーべリックだった。

何時もと違う慌てた様子に恵理香とロベリヤはケーキを食べ掛けた状態で固まった。

レイア・マーべリック、彼女を語るのに一番合っている言葉は、冷静沈着だと恵理香は常日頃から思っている。

いやこれは恵理香以外の人間に聞いても同じだろうと言える。

親友のケイ曰く、「レイアちゃんが冷静でなくなるのは、自分が冷静な人間と言われた時だね。」

そんなギルド長が冷静さを欠いている姿は今まで見た事がなかっただけに驚かされた恵理香達だった。

「居たか、直ぐに艦を出してくれないか?急ぐんだ!」

「落ち着いて下さいギルド長、出すにしても事情を教えて下さい。」

私の前に立ち一気に言葉を出してくるギルド長を、恵理香は押し止める。

傍らでロベリヤは興味深そうに見つめている、彼女もこんなレイアを見るのは初めてだったからだ。

「・・・ああ、すまんな。先張り過ぎた様だ。」

何とか冷静さを取り戻してくれた様で恵理香はほっとすると問い掛ける。

「兎に角何があったんですか?」

レイアの話によれば・・・

街に住む子供たち数人が海に出たまま今になっても戻ってこないらしい。

心配になった親達がギルドに相談に訪れ、偶々その場に居たレイアが対応した。

そしてレイアは捜索を約束し、私達の所に依頼に来たと言うことらしい。

「状況は分かりましたが・・・」

思わず考え込んだ恵理香を見てレイアが心配そうな表情を浮かべ尋ねる。

「何か問題が有るのか?」

「今まほろばを動かすことが出来ません。」

「本当か?」

衝撃を受けたレイアが私の恵理香を掴んで詰問してくる。

「まほろばは定期点検中で今ドックの中なんです。」

間の悪い事にまほろばは定期点検の為に昨日からドック入りしているのだった。

その言葉にレイアが唇を噛む。

「他の商会には聞いたんですか?」

後は牧瀬商会以外の商会に頼るしかないと思い恵理香は尋ねてみた。

「ここに来る前に回ってみたんだが・・・ほとんど出払っていてな、後は牧瀬商会が最後の希望だったんだが。」

恵理香の肩から手を外し肩を落とすレイア。

暫し沈黙が事務所内に続く。

「そうなると・・・ケイさんに相談するしかありませんね。」

「ケイにか?・・・そうだなそれしかないか。」

ドック責任者であり優秀な技師であるケイなら何か良い考えを出してくれるかもしれないと恵理香。

「では早速行きましょう、ロベリヤは後を・・・」

「いや行くよ、私が役に立つことがあるかもしれないしね。」

まあ確かにそうかもしれないと恵理香は考えてロベリヤに一緒に来て貰う事にする。

メモを姉宛に書いて置いてから恵理香達は事務所を出る。

「ケイお前に頼みたい事がある!」

ドック事務所に真っ先に入って来たレイアが叫ぶ、後から付いて来た恵理香達は息切れで声が出せない。

「ギルド長?それに恵理香にロベリヤまで?」

突然の来訪に驚いた表情で答えるのは優香だった、事務所には彼女以外の姿は無かった。

「あいつは何処行った?早く出てこないと・・・」

「ギ、ギルド長?」

流石に優香も何時もと違うレイアに目を白黒させてしまっている。

「落ち着いて下さいギルド長、優香が戸惑ってますよ。」

レイアの肩に手を掛けて落ち着かせた恵理香は本当に今日は珍しい光景を見させられている気分だった。

「・・・すまん優香、悪かったな。」

何とか落ち着いてくれたレイアに恵理香はほっと息を付くと優香に問い掛ける。

「それで優香、ケイさんは?」

「えっとケイは朝からラボに入っているから当分出てこないと思うけど。」

「くっこんな時に・・・」

レイアは拳を握り締めて呻く。

ケイはラボに入ると何日も出てこない事は珍しくない、前に1週間も出てこなくて優香がとても苦労させらた事を恵理香は思い出す。

「一体何があったの?」

聞いて来る優香に先程あったレイアの要請について恵理香が説明する。

「なるほど分かったわ、暫らく待って貰えるかな。」

優香はそう言って自分のタブレットを操作し始める。

見守る事数分、優香がこちらを見て聞いて来る。

「使える物があるかも、それでどこへ行くんですか?」

それを聞いて、恵理香は肝心の目的地をレイアから知らされていない事に今になって気付く。

「・・・旧ドックだ。」

旧ドックは港から少し離れた場所にある、かなり年代物の施設だった。

港に近くに新しいドックが出来た為、10年以上前に閉鎖され今は使われていない。

「しかしあそこは立ち入り禁止になっていた筈だと聞いているけど。」

ロベリヤが呟く、古いうえにドック内を知る人間が居ない為、危険と判断され立ち入り禁止区域に指定され誰人も入れない場所だった。

「どうやら探検家気取りで行ったらしい、子供達の間では有名な所らしいからな。」

レイアの言葉に恵理香は子供特有の冒険心で侵入したのだと予想する、そして何て危ない場所に行ってしまったかのかと溜息を付く。

「だとすれば都合が良いかも、皆付いて来て。」

優香はそう言って、壁に掛けられていた鍵束を取ると先頭に立って部屋を出る。。

「一体何が出て来るんだ?」

レイアの問いに、優香は意味深な笑みを浮べ答える。

「きっと役に立つものですギルド長。」

ドック事務所を出た恵理香達は優香の先導でドック内を進む。

どうやら優香は小型船用のドックに一同を連れて行こうとしている事に恵理香は気づく。

そして優香はあるドックの前に着くと持って来た束から鍵を一本取り出して鍵穴に差し込む。

「皆、入って。」

扉を開け入って行く優香に続き、恵理香達もドックに入って行く。

するとドック内が明るくなる、優香が照明を付けた様だった。

「これは・・・」

レイアがそれを見て呟く。

恵理香とロベリヤも同様にそれを見つめる、そこには左右の舷側に魚雷発射管と前後の甲板に機関砲を装備した小型艇があった。

「優香さんもしかしてこの小型艇って?」

恵理香の問いに優香は微笑みながら答える。

「ええ、タイプ11の魚雷艇よ恵理香。」

魚雷艇・・・ゲームでも使用可能なだったけど、その扱い辛さからか人気は無かった物だったと恵理香は記憶している。

確かに攻撃力は有るのだが、耐久値が低うえに航続力に乏しく使い勝手が悪いからだった。

「使えるのかこの魚雷艇は?」

魚雷艇を前にレイアが優香に問い掛ける。

「うん、ケイが色々手を加えているけど、普通に使うには問題無いよ。」

と言う事はこれもまほろば同様にチートに改造されているのだろうと恵理香は察する。

「必用な乗員は?」

「操艇者と火器管制、センサーに機関担当の4名いれば動かせるよ。」

この辺もまほろばと同様に自動化と省力化がされている様で、流石はケイだと恵理香は苦笑する。

「牧瀬艦長、動かせるか?」

「はい、大丈夫ですよ。」

ゲームで使った事があるせいか、恵理香はこっちの世界で扱える事になっていた。

まあ艦長という役柄か、大抵の船は操作可能なスキルを恵理香は持っていたりする。

「火器管制は私がやろう、後2人か。」

「ギルド長、それなら私に機関担当を任せて。」

優香が申し出てくる、恵理香とレイアは顔を見合わせる。

「これでも扱いには慣れているから安心して2人共。」

流石あのケイさんの助手を務めているだけに優香自身もかなり優秀な技師だったから当然かと恵理香とレイア。

とここまでは有り得るとは思っていた恵理香だったが、次の展開までは予想出来なかった。

「それじゃセンサーは私がやるよ。」

ロベリヤがそんな事を言い出すまでは・・・

「ロベリヤが?・・・牧瀬艦長どうなんだ?」

「私には・・・大丈夫ですかロベリヤ?」

レイアに問われた恵理香は戸惑いつつロベリヤに尋ねる。

「一応出来るよ、調査で扱った事があるからね。」

研究者だけにセンサーの扱いも出来るらしいと聞いて恵理香は感心する。

「・・・分かった、ロベリヤ頼めるか?」

「お任せを。」

レイアの問いにロベリヤは優雅にポーズをとって答える。

「よし優香、出港準備はどのくらい掛かる?」

「艇のチェックと補給で1時間、ですが皆が手伝ってくれるなら30分で済ませられるよ。」

優香が胸に手を当てて答える姿に恵理香は頼もしさを感じてほほ笑む。

「頼むぞ優香、牧瀬艦長とロベリヤもな。」

「うん。」

「ああ。」

早速準備に入る恵理香達、燃料の補給と魚雷や弾薬の搭載を済ませ、艇のチェック皆で分担して行う。

「航法システムのチェックはOKです。」

「火器管制は・・・驚いたなここまで自動化されているとは。」

艇外のチェックを優香とロベリヤが行い、恵理香とレイアは操舵室内のチェックを行っていた。

「この辺は流石ケイさんですね、航法と操舵も1人で問題なく扱えます。」

まさに天災いや天才だと今更ながら思う恵理香とレイア・・・日頃の言動を見ているとそうは思えないのだが。

「牧瀬艦長・・・その・・・色々世話を掛けて申し訳なかったな。」

一息ついたところで、畏まった感じでレイアがに恵理香に話しかけてくる。

「今更ですよギルド長、ここまで関わったんですから、私も助けたいという気持ちですし。」

その気持ちに嘘は無い恵理香は微笑みながらそう答える。

「そうか、牧瀬艦長らしいな・・・私もそうだ、出来れば助けたい、そう思っている。」

座席に座り自嘲気味にレイアは話す。

「今日ギルドに慌てて駆け込んで来た親達を見て・・・かっての自分を見ている様だった。」

「それって・・・」

視線を窓の外、ドックの壁に向けながらレイアは話し続ける。

「うちの両親も昔遭難して亡くなった、その時は無力な自分を呪ったものだったよ、そう思ったら居ても立ってもいられなくなったんだ。」

視線を私に戻しレイアは溜息を付く。

「ギルドの長としては誉められた事ではないな、もっと冷静になるべきだったかもしれん。」

「そんな事はありませんよ、ギルド長は自分の出来る事をしようとしたんです、私も出来る事をしないで後悔はしたくはありません。」

レイアは恵理香のそんな言葉を聞くと頷いて答える。

「確かにそうだな、やらないで後悔するよりはましか。」

そう言ってギルド長は何時もの不適な表情に戻る。

「お前と話せて良かったよ、まあ贖罪を聞いてもらう相手としては最適だからな。」

「それって私が天使と呼ばれているからとか言うんじゃないでしょうね。」

答えずに笑っているレイアに恵理香は溜息を付てみせる。

「外の点検終ったよ・・・どうかしたのギルド長?」

「恵理香?」

操舵室に入って来た優香とロベリヤが恵理香達を見て不思議そうな顔をして聞いてくる。

「大したことじゃないさ、牧瀬艦長はその二つ名通り天使だと言う事さ。」

どや顔で言うレイア、2人はきょとんとした後、笑みを浮かべて言ってくる。

「今更ですギルド長、恵理香が天使だと言うのは。」

「そうだね恵理香は天使様で間違いないね。」

2人の言葉に恵理香は頭を抱えてしまった。

「そう言われているだけで・・・分かりましから出発しましょう。」

反応を見て笑っている3人を恥ずかしくてたまらない恵理香は急かすのだった。

数分後、小型船専用ドックから恵理香達が乗った魚雷艇が発進した。

港から旧ドックまでは魚雷艇では40分くらいで着く。

航法ディスプレイで進路を確認しつつ恵理香は魚雷艇を操艇する。

「レーダーの反応、今のところなしだね。」

ロベリヤがセンサー席から報告してくる、今のところ平穏に進んでいる様だと恵理香。

やがて前方に旧ドックが見えてくる、明かりがついておらず暗闇に溶け込んで見える。

「そういえば優香さんは旧ドックに行った事はあるんですか?」

魚雷艇を専用桟橋に向けて航行させながら恵理香が優香に聞く。

「いえ、資料でしか見た事は無いよ、ケイも無いと思うけど。」

機関の様子をディスプレイで確認しつつ優香が答える。

「広すぎてケイですら全貌が全く分からないみたいだし。」

使われなくなって10年以上だっている、何が有るかケイでも把握出来ていないらしいと優香は言って肩を竦める。

「ギルドの人間が何度か内部の調査に行ったらしいがな、そっちもろくな結果が無い。」

火器管制席からレイアが溜息まじりに話に加わってくる。

「お蔭で幽霊屋敷扱いだよ。」

ロベリヤによれば数え切れない程の怪談話が有るらしい。

「そう言えば姉さんが、一度解体の話が出たけれど、費用の問題で頓挫してと言ってましたね。」

前に姉がそういう話をしていた事を思いだして恵理香が皆に説明する。

何処も費用を出したくなかったうえに、解体後の用途もこれといって見つからなかった事が原因らしい。

それで厄介者扱いで幽霊屋敷、施設自身に罪は無いのにと恵理香は溜息を付く。

「そろそろ到着しますね。」

桟橋が見てくる、恵理香は艇の速度を落とし近づけて行く。

破損箇所があるが桟橋はまだ使える様だったが恵理香は慎重に接岸させる。

到着後、レイアが桟橋に上がり、ロープで艇を固定する。

「これでいい、じゃ行ってくる、牧瀬艦長あとを頼むぞ。」

ドック内の捜索はギルド長と優香が担当し恵理香とロベリヤは魚雷艇で待機だ。

「2人とも気をつけて下さいね。」

ドックへ向かう2人に恵理香は声を掛ける、彼女達の事だ問題は無いだろうけど思いつつ。

「ああ、そっちもな。」

「じゃ行って来ますね恵理香。」

ギルド長と優香はそう言って頷くと歩き始める、それを恵理香とロベリヤは黙って見送るのだった。

ふと吹いてきた風に恵理香は身を震わせる。

見送った恵理香とロベリヤは艇に戻る、ギルド長と優香が戻るまで周りの監視をしながら待機しなければならない。

「あれ?」

20分位してロベリヤが複合ディスプレイを見ながら声を上げる。

「どうしましたかロベリヤ?」

「レーダーにちらちらと何かの反応が出てる。」

レーダーを操作しながらロベリヤが伝えて来る。

「位置は?」

「ドックより南西方向だね。」

恵理香の問いにロベリヤが答える。

他の船であればちゃんと反応がある筈で、覗きこんだディスプレイをチェックしながら恵理香は確信もって言う。

「シーサーペントですね、ロベリヤは監視を続けて下さい。」

こちらに近づいてくる様子は今のところない様だが恵理香は油断は出来ないと考え警戒する様ロベリヤに言う。

ギルド長と優香は1時間捜索して見つけられなかった場合一旦戻ってくる手筈になっていた。

恵理香達とロベリヤは緊張しつつ待ち続ける。

そしてあと5分というところで2人は戻ってきた、傍らには3人の子供達を連れて。

どうやら見つけられたみたいだと安堵した恵理香は操舵室のドアを開けて呼びかける。

「2人共急いで下さい・・・お客が来ます。」

その言葉にギルド長と優香は子供達を連れて艇に駆け寄ってくる。

「来たのか?」

ギルド長の言葉に恵理香が頷く、その間に優香は子供達を補助席に座らしてシートベルトを掛ける。

「よしいいぞ。」

ギルド長と優香がそれぞれの座席に付きシートベルト締める。

「機関始動。」

優香がコンソールを操作して機関を始動させる。

「発進します、少々荒っぽくなりますので注意して下さい。」

既に固定ロープは外されている、恵理香は艇を発進させ港から出ると速度を上げる。

「前方に反応、距離20、急速に接近中。」

ロベリヤがディスプレーを見ながら報告する。

不味い事に帰りのコースと重なっている様で、どうやら一戦交えないといけないと恵理香。

「ロベリヤ探照灯点灯、ギルド長魚雷発射用意願います!」

「OK。」

「分かった発射準備に入る。」

恵理香の指示にレイアとロベリヤが復唱する。

「優香、機関全開でお願いします。」

「うん、機関全開。」

甲高い機関音が響き、魚雷艇は加速を始める。

「来ます!」

探照灯に照らされたシーサーペントが見える、その照射で混乱している様だった。

「魚雷発射用意良し、何時でもいけるぞ牧瀬艦長。」

必死に照射から逃れ様とするシーサーペントに魚雷艇が突っ込んで行く。

「今です発射して下さい。」

「魚雷発射する!」

ギルド長が火器コンソールを操作すると、魚雷艇の両舷に設置された発射管から魚雷が放たれる。

それを確認した恵理香は魚雷艇を急旋回させシーサーペントから離脱させてゆく。

照射で目を眩まされたシーサーペントは魚雷艇を追う事が出来ず、まともに魚雷の直撃を受ける。

凄まじい絶叫を上げ、シーサーペントはドックの方へ向かって行った、受けた傷のせいで暴走し始めたのだ。

「あのままだとドックの壁に激突するな。」

後方を写しているディスプレイを見てギルド長が呟く、頑丈なドックの外壁にぶつかればシーサーペントいえどもただでは済まないだろう。

そして恵理香達が見守るなかシーサーペントはドックの外壁に激突すると咆哮を残し海中に沈んで行くのだった。

皆非常に危うい状態を切り抜けられた安堵感に顔を見合わせてほっと息を付く。

「さて追加の客が来ない内に帰るぞ、もう一戦なんて御免だからな。」

レイアの言葉に恵理香は頷くと魚雷艇の進路を中央港に取り旧ドックから離れさせて行くのだった。

港に帰って来た魚雷艇を子供達の親やギルド関係者が待ち受けていた。

接岸し魚雷艇から降りてきた子供達に親達が駆け寄って来て抱きしると涙を流して無事を喜んでいた。

「良かったですねギルド長。」

恵理香の言葉にレイアも微笑んで答える。

「ああ、良かった本当にな。」

これでレイアの抱えてきたものが少しでも軽くなってくれれば良いのだけどと恵理香は願った。

「ロベリヤ、優香、お前達にも感謝する。」

降りてきたロベリヤと優香さんにレイアが頭を下げ礼を言う。

「礼には及びないよギルド長、私も出来る事をしないで後悔したくないから。」

悪戯っぽく笑って言う優香、あの時言った恵理香の言葉を真似て言っているらしい。

「そうだね私も・・・」

「もういいですよロベリヤ・・・これ以上苛めないで下さい。」

同じ事を言いそうなロベリヤを苦笑しながら恵理香が止めるとその場に笑いが広がるのだった。

その後、親達に何回も感謝の言葉を掛けられる恵理香達だった。

「後は・・・帰って姉さんのご機嫌を直さないと。」

きっと仲間外れにされたと言って拗ねているだろうなと恵理香は鬱になる、そうなると機嫌を直してもらうにはかなり手間が掛かるからだ。

「私も行こう、責任はあるからな。」

肩を叩いてレイアが言う、恵理香にとっては正直言ってこの援軍は助かるなと思う。

「私も言ってあげるよ恵理香。」

「もちろん私だよ。」

更に援軍が増える事になり恵理香は更に心強くなるのだった。

この後商会に戻って盛大に拗ねた万理華に機嫌を直してもらうのに恵理香達が1時間以上費やしてしまったのだった。


22:30

旧ドックでの救助活動終了。

行方不明の子供達を全員救助。

帰還の際シーサーペントと遭遇しこれを撃破。

報告者:牧瀬商会所属駆逐艦まほろば艦長牧瀬 恵理香。

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