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北方海の守護天使  作者: h.hiro
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幕間「姉とのお出かけ」

このゲームをしていた時、北方海はその名から寒い場所で海で遊ぶ、いわゆる海水浴なんて無いだろうなと恵理香は勝手に考えていた。

だがこの世界来てから恵理香は知ったのだが、この海域でも短い期間だけど海で遊ぶ事が出来るらしいのだ。

日数でいえば一ヶ月にも満たないし、お世辞にも南の海での様にいかなかったが。

「と言うわけで泳ぎに行くわよ恵理香ちゃん。」

「何が、と言うわけですか姉さん。」

既に起床していた万理華にリビングに入った所で捕まり突然宣言された恵理香は、相変わらず唐突な人だなと溜息を思わずついてしまうのだった。

「だって恵理香ちゃん暫らくお暇なんでしょう?」

「確かにそうですが・・・」

まほろばは定期点検でドック入りした為当分業務が休みになった訳だが、だからと言って突然泳ぎに行こう言れても恵理香は戸惑うだけだった。

「だってお姉ちゃんここ何ヶ月も恵理香ちゃんとお出掛けして無いのよ・・・」

わざとらしい泣き顔で言う万理華に恵理香は溜息を付く、子供ですか姉さんはと思ってしまうのは妹としては仕方ない話だろう。

とはいえここ数ヶ月仕事が忙しく洋上に居る時間が長ったので万理華とゆっくり過ごす時間がなかったのは確かだった。

そう考えれば付き合ってあげても罰は当たらないだろうと恵理香は納得して承諾する。

「分かりました、但し1日だけですよ。姉さんだって商会の仕事あるでしょうし。」

「ありがとう恵理香ちゃん・・・ふふふ嬉しいわ。」

そして翌日の浜辺にて。

「ねえ恵理香ちゃん、これってどういう事?」

「どういう事と言われても・・・私だって分かりませんよ姉さん。」

いかにも不満げな表情を浮かべ万理華が話しかけてくるのだが恵理香だって困惑しており答えようが無かった。

「折角恵理香ちゃんと海に来たというのに、何で二人きりじゃないのよ!!」

そう言って絶叫する万理華、そう今海に来ているのは恵理香と万理華の姉妹だけでは無かった。

「まあ何時もの事だから今更驚く事も無いけど・・・」

「ははは、聞いていたけど本当にそうだったんだね。」

ケイの義理の娘であり優秀な助手でもある優香、そして今はギルドのシーサーペント調査部門で働くロベリヤ。

呆れた表情を浮かべる(優香)と感心した?様子で感想を述べる(ロベリヤ)、この2人が同じ浜辺で待ち構えていたのだ。

もちろん当日商会を休みにし姉妹で海に行く事を万理華は誰にも言っていなかった、もちろん恵理香にも口止めをしていたのは言うまでもない。

「大体貴女達何故ここに来ているのかしら?」

万理華が2人を睨みつけながら詰問すると。

「抜け駆けは駄目でよ商会長様。」

「そうだね私も独り占めは駄目だと思うよお・姉・さ・ま・」

優香とロベリヤからは万理華が抜け駆けするのは許せないと言う言葉と視線が返ってきた。

なお恵理香が万理華と海に行く情報が優香とロベリヤに漏れたのはたまたま乗員の一人がその話を偶然耳にしてしまったからだ。

もちろんその乗員は告げ口する積りは無かったのだが、他の乗員と艦内食堂で話していたのを居合わせた優香とロベリヤが聞いてしまったのだ。

恵理香と泳ぎに行きたいのは優香とロベリヤも同様で、万理華の抜け駆けは許し難くけっしてり占めなどさせてたまるかとこうやって押しかけて来た訳だ。

一方で恵理香は優香とロベリヤが何故来たかという事より水着姿の女性に囲まれているいう状況に喜ぶ気がしなかったからだ。

男であれば最高の状況かも知れないが何しろ自身も女性の水着姿なのだ、見るより見られる方が恥ずかしい恵理香だった。

ところで肝心の恵理香達の水着ぶついてだが。

まず姉である万理華は大胆な黒ビキニで大人の女を演出。

優香はフリルの付いた白ワンピース水着でお嬢様風。

ロベリヤはセパレートのスポーツタイプの水着で活動的。

そして恵理香だが、極普通の青い競泳用水着を着ていた。

ちなみに万理華は自分と同じビキニの白い水着を着せようとしていたが恵理香が断固拒否した。

「そんな大胆なもの着れません。」

ただ地味な競泳用水着でも最初は残念がっていた万理華や今日は初めて見た優香とロベリヤには好評だった。

むしろシンプルなデザイン故恵理香の綺麗な身体のラインが強調されていたからだ。

まあ恵理香にしてみれば嬉しくもない話だったが、むしろスタイルの差を感じて鬱になりそうだと思った。

恵理香は頭を振ってそんな考えを払う、せっかく海に来たのだから楽しまないといけないと思って。

「取り合えず荷物を置いて泳ぎましょうよ姉さん。」

「・・・そうねそうしましょうか。」

「じゃこっちへ、いい場所見つけんだ恵理香。」

「何で貴女がそんな事を・・・」

「恵理香、今日は楽しもうよ。」

「だから貴女達は・・・って私を置いていかないでよ恵理香ちゃん。」

移動するだけで大騒ぎになるのはこのメンバーでは仕方がないかと恵理香は既に諦めの境地だった。

「ところで恵理香、その水着似合ってるね。」

恵理香の水着を誉めてくれるロベリヤに照れつつ恵理香が返す。

「ロベリヤもその水着いいと思いますけど。」

「ふふふ、ありがとう恵理香。」

嬉しそうに言って恵理香の右腕に抱きついてくる、すると当然ロベリヤの豊かな胸部装甲が当たる事になる。

「私の水着はどう恵理香?」

「うん、もちろん可愛いと思いますよ優香。」

優香の雰囲気に合っていると恵理香は思って言う。

「うれしいな、もちろん恵理香の水着も似合っているよ。」

対抗してか恵理香の左腕に抱き付いてくる優香、もちろん彼女のものも当たる事になる。

男だったらこの状況に歓喜したかもしれないが、今は女である恵理香は自分より豊かな皆の胸部装甲に嬉しいより悲しいと思ってしまいショックだった。

「あああ!皆何を・・・もちろん私だって思っているわ、だから・・・」

「正面から抱き付いてきたら怒りますよ姉さん。」

真正面から抱き付こうとする万理華を牽制する恵理香、これ以上恥かしいのは御免だったからだ。

「そんな・・・私だけ駄目なんて酷いわ恵理香ちゃん・・・」

泣き崩れるほどものだろうかと恵理香は溜息を付く。

「というか皆さんそろそろ止めて頂きたいのですが・・・ほらそこの人写真取らないで下さい。」

美人4人で歩いている所為か周りの人の目が多く集まってくるのが恵理香は恥ずかしくてたまらなかった。

数十分後にようやく開放された恵理香だったが、拗ねてしまった万理華のご機嫌取りもしなければならず泳ぐ前から疲れてしまった。

まあその後は恵理香達は泳いだり、優香が作ってきてくれた豪華な弁当を食べたりして大いに楽しんだが。

そして夕暮れ、砂浜で恵理香は1人皆を待っていた。

何故一人かと言えば、一緒に着替えると皆着替えを手伝おうとするからだ。

それでなくても皆のスタイルみて鬱になるのだから恵理香としては長居したくなかったのだ。

ということもあって恵理香は早々と着替えて更衣室を逃げ出したのだ。

「綺麗な夕日ですね・・・」

水平線に沈む行く夕日を見ながら感嘆していた恵理香は、だから気付くのに遅れてしまった。

周りを若い男達に囲まれている事に。

「ねえ、彼女一人なの?」

「だったら遊びに行かない?」

ナンパだろうか?というか自分を誘って何がいいんだろうかと恵理香は思いながら答える。

「申し訳ありませんけど連れを待っているので、お誘いには答えられません。」

こう答えれば下がってくれるかと思った恵理香だったが連中は諦めが悪かった。

「連れって女の子?だったら一緒にどう?」

「それは出来ません、だからこれで・・・」

出来れば穏便に済まそうとする恵理香の思いに反し男性達はだんだん強引になってくる。

「何だよ、折角誘ってるのに・・・お前みたいな女、誘われるだけありがたく思えよな。」

旨くいかなくなると強引に迫ってくる連中に恵理香は呆れてしまう。

「ほらだから・・・連れの子もさあ・・・」

「・・・って痛い!」

腕を掴まれ強引に立ち上がされる恵理香が痛みに声を上げた時だった、腕を掴んでいた男の姿が唐突に消えてしまう。

「えっ・・・」

そして海に上がる水柱と悲鳴・・・

「貴方達、私の大事な妹に何なさっているのかしら?」

あまり聞いた事の無い低い声で男達に問う、姉の万理華。

笑顔を浮かべてはいるが、受ける印象は憤怒だ、恵理香もこんな姉を見るのは始めてだった。

「・・・そうだね恵理香に何をしようとしたのか聞かせて欲しいわ。」

「まったく僕の恵理香に・・・許しがたいね。」

その隣に立ち、万理華と同じ憤怒のオーラを発する優香とロベリヤ。

ちなみにロベリヤの言葉を聞いて恵理香は「何時私は貴女のものになったんでしょうか?」と疑問に思ったが黙っていた、彼女たちのオーラに当てられて。

尋常ならざる万理華達の迫力に男達は動けなくなっていた、人数でも体格でも彼等の方が上の筈なのにだ。

「生きていますよね?」

ぷかぷかと浮いている男を見ながら恵理香はそう呟きながら現実逃避していた。

「な、何をしやが・・・されるんですか?」

あの万理華達の迫力に言葉使いが敬語になっでしまう男達だがそれも仕方がない話だろう。

「恵理香ちゃんに・・」

「「恵理香に・・」」

「「「・・手を出した報いを受けなさい!!」」」

「「「「ひぃぃ!!!」」」」

3人の怨嗟の声と男達の悲鳴が浜辺に響き渡った。

数十分後、浜辺に頭だけ出して埋められている男達。

「ねえ、お母さんあれ何?」

「見ちゃ駄目よ、ほら行くわよ。」

母親と幼い子供が通りがかるが、母親は子供を連れて早々と離れて行く。

他の人達も同様で、男達に近寄ろという者は居なかった。

まあさっきのを見ていればそんな反応も仕方が無いだろうと恵理香は思った。

「恵理香ちゃん大丈夫だった?怖くなかった?」

「無事でよかったよ恵理香。」

「腕を直ぐに消毒しないと、まったく困った連中だよ。」

万理華達は男達を瞬く間に制圧し、掘った穴に埋め立ててしまった後恵理香を囲んで心配してくる。

一連の行為に恵理香はまったく口を出せなかった、いやそんな暇などなかったと言った方がいい。

それは見事な連携プレーだったからだ、恵理香は関心するより呆れの方が大きかったが。

「ええ、大丈夫ですよ、あと消毒薬なんて大げさですから。」

正直言って恵理香にはこう返すしか無かった、他に言うべき言葉をこの時持ってはいなかったから。

「そうじゃ帰りましょう、帰ったら一緒に寝てあげるからね恵理香ちゃん、その前にお風呂に入って。」

「はい帰りましょう・・・恵理香一緒に風呂に入って寝ようね。」

「うん帰ろう、二人共恵理香に迷惑かけちゃ駄目だよ・・・抜け駆けもね。」

そんな恵理香の心情など無視して万理華達は取り合いを始める。

「「「誰と風呂に入って一緒に寝たいの?」」」

「私は誰とも風呂に入ったり一緒に寝るつもりはありません!!」

「そ、そんな酷い。」

「ショックだよ。」

「そうよ。」

浜辺に恵理香の叫びと万理華達の嘆きが響きその日は終ったのだった。

「ほんと疲れました。」

休暇だったのに恵理香はまったく休んだ気がしなかったのだった。

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